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読んだ本を語る〜『幸せ最高ありがとうマジで!』〜
実は[劇団、本谷有希子]の舞台は観たことがない。
ダンスや殺陣があるような派手な舞台が好きなので、好みから外れてしまっていたのですよね。
なので本谷さんの作品というと、演劇雑誌に載っていたコラムで親知らずを1日で四本抜いたって話を読んだくらいでした。それもいまだに覚えてるくらいインパクトのある話だったけど。
ただ、とにかくタイトルにパンチがあって気になるなあと思ってて、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』は映画になった時に観ました。
ぶっ飛んだ姉を演じるサトエリがはまり役で、佐津川愛美さん演じる地味な妹の「お姉ちゃんは最高に面白いよ」というセリフがすごく印象に残る映画で、これで佐津川愛美さんが気になる女優さんになった。
余談ですが佐津川さんは映画『悪夢のエレベーター』も良かったですね。
で、『幸せ最高ありがとうマジで!』もタイトルを見てからずっと気にはなっていて、でも舞台で見たらなんとも言えない気持ちになりそう…という予感もあって、今回戯曲で読むことにした。
とある町の新聞販売所にやってきた、謎の女。
女は嬉々として、その一家の“不幸”を抉り出していく。
目的は復讐か?否。
女は、縁もゆかりもない見ず知らずの人間だったのだ。
悪魔的なエネルギーで一家を追い詰める女。真の目的は一体何か?
“不幸の理不尽”をブラック&シニカルに描いた、気鋭のパルコ劇場デビュー作!
第53回岸田國士戯曲賞受賞。
元々火種を抱える静かな地獄みたいな一家のもとに、油を撒いて炭にするような話(後半文字通り油を撒くけど)。
謎の女・明里はとにかくエネルギッシュで、本人のセリフにあるように「明るい人格障害」でとにかく無差別に引っ掻き回すけど、原因なく人格が破綻していることに不幸を感じていたりもする。
後書を読むと、永作さんに当て書きだったらしく永作さん本人に「わたしにはこの人の要素が一個もないよ」と言われたらしいが、表紙の永作さんの目力を見てあーピッタリだな、と思った。
別に永作さんが人格破綻者っぽいというわけではなく、可愛い見た目でありながらどこか凄みもがあって、「普通の人」の役よりもっと違う要素が入った役が見たいなって。
(そういえば永作さんは『腑抜けども〜』の映画にも出てましたね)
それにしても創作の中でみるぶっ飛んだキャラって、どうしてこう魅力的に見えてしまうんだろか。
明里だって、リアルに遭遇することがあれば「二度と関わらんといてくれますか」となること間違いなしなのに、どこかで自分はここまでぶっ飛べないと分かっているからなのか。
別にぶっ飛びたいとは思ってないんだけど、生きていれば何かと煩わしい。
そんな煩わしさの中、「あーこんな時後先も考えることなく言いたいことを言えたらなあ」と思うことくらいはある。そんなとき、
「そうそう、思ったことはまず腹の中に溜めずに全部口にしていくのよ。脳に通す前に、見たままを喋る。これが明るい人格障害への第一歩よ」
と言い切る明里のような人が羨ましくなるのかもしれない。
摩擦でゴリゴリ削られるのは性に合わないので、結局ぶっ飛ばなくていいかなってなるんだけども。
それでも時々せめて心の中でくらいは、ラスト明里が天に向かって叫ぶセリフを叫ばせてほしい。