84 観察して理性を育む大切さ
理性が大事であることをさらに説明します。たとえば、仏教では五戒を守ることは善い行いとされます。しかし「いわれるからやらないようにしよう」「悪行為だからやめます」というだけではダメなのです。そこに理解(如理作意)がなくてはいけないのです。たとえば、なぜ嘘はよくないのか。そして、嘘をつかない生き方をすると、どんな結果になるのか。不幸になるのか、幸福になるのか。嘘をつかないようにするとき、どのような不都合が起こるのか、それがどのようにして乗り越えられるべきか、などなどにも気をつけなくてはいけないのです。「嘘をつかない」という実験をしながらどのよう に心が変わって成長するのかと、発見する必要があります。つまり、いくら善行為をしても、そのことで理性が生まれなければ意味が ないのです。心の底から「ああ、本当に嘘をつくのは、自分が不幸になる悪行為なのだ」「嘘をつかないというのは、自分が幸福になる善行為なのだ」としっかり理解できればありがたいのです。理性が生まれてくると戒を守ることも、善を行なうことも、無理な行為ではなく自然な行為に変わってしまうのです。理解を伴わない、如理作意のない形式的な善行為だけでは無智を叩けません。
『一瞬で心を磨くブッダの教え』第2章 仏教の教えを理解する《修行》アルボムッレ・スマナサーラ サンガ出版【バカの理由 役立つ初期仏教法話12 (サンガ新書045) p165】
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