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57 個人とは大海の一滴の水

 個人とは、大海の一滴の水だとしましょう。

 この一滴の水が、自分は他の水と違った個人であると主観を作っているのです。この主観がある限り、大海は乗り越えられないほどの巨大な存在に見えるし、海のさまざまな変化につれて困ったり怯えたりもします。

 それでこの一滴の水が何かの方法で、「自分は別な個としての存在ではなく、大海の一滴の水にすぎない」と理解する。それで個という意識を捨てて、大海になりきる。その時点から、悩みも恐怖感もなくなるし、あえて「自分がいる」という苦しさも楽しみも消えて、安定した気分になるのです。

 苦しみも楽しみもないといえば否定的に感じますが、個だと錯覚していた一滴の水が大海と同一であると発見することは、ネガティブな状況ではありません。内と外の境目が、なくなっているのです。

『一瞬で心を磨くブッダの教え』第1章 私たちの悩みを解決する《自我》アルボムッレ・スマナサーラ サンガ出版【ブッダの実践心理学 第七巻 p113】

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