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ポプラ社版『黄金三角』これって矛盾じゃない? じゃ、創元推理文庫版『金三角』で確認しよう。 (1878文字)

 以前、『黄金三角』(ルブラン原作 南洋一郎文 ポプラ文庫)について投稿しました。

 子供のころ読んだときは気付かなかったのですが、最近読み直してみて、「なんかおかしい。」と思った箇所を見つけたのでそのことを書いてみます。
 そのため、この『黄金三角』の中心的な謎についても触れることになりますので、この作品を未読の方は本投稿を読むのは中断してください。


 

 この『黄金三角』は、この「黄金三角」がどこにあるのかというのが中心的な謎になります。
 まず、「黄金三角」の「黄金」というのは、砂の中に隠された千八百個の金貨(三億フラン)のことです。
 次に「三角」というのは、「千八百個の金貨ぶくろが砂の下に三角形につみあげてあるのです。つまり((黄金三角))です。その三角形のてっぺんは、すこし砂の上につきでていました。・・・」(314ページ10行目から12行目)というルパンの発言があることと、「ぼくはね、エサレ・ベイがコラリーさんを金貨ぶくろといっしょにかくしたにちがいないと思ったのだ。 かれもいっていた。コラリーは金貨とともにあるとね。だから、金貨をさがせば、コラリーさんも発見できると思ったのだ。・・・」(317ページ5行目〜8行目)とあること、さらに「それに、かれはコラリーは穴の中におしこめてある。二、三時間は生きているが、それいじょうたったら窒息して死ぬといったことはきみも聞いているだろう。」(317ページ 9行目10行目)と言っていることから、犯人であるエサレ・ベイはコラリー(エサレ・ベイの妻)を砂の中に三角錐の形状に積み上げて埋めてある金貨ぶくろの中の空間部分に入れたんだ思いました。

 ところが、このちょっと前のシーンで犯人のエサレ・ベイは、既にコラリーを救い出しているルパンに追い詰められて「なにを・・・コラリーはすくっても、金貨ぶくろはまだ・・・」と言います。

 ルパンがコラリーを救い出すためには、「黄金三角」を発見していなければなりませんから、「黄金三角」にコラリーを隠したエサレ・ベイがこの理屈が分からないわけがありません。

 この論理的矛盾は、作者のモーリス・ルブランのせいなのか、それとも文の南洋一郎さんのせいなのか今のところ分かりません。
 南洋一郎さんは、ルパンシリーズについて単に翻訳するだけでなく内容を書き直したり付け足したりしているようですから、南さんの独創の過程で矛盾をおかしたのかもしれません。

 今度、別の出版社の『黄金三角』(題名は『金三角』となっています。)を買って読み比べようと考えています。


 ここまで投稿の下書きを書いてきて、いよいよ別の出版社の『金三角』を読み比べたいという気持ちが強くなりました。
 で、その別の出版社(株式会社東京創元社になります。)の『金三角』を探したのですが絶版ということでした。そこで、アマゾンで中古の本を注文して必要箇所を読んでみました。

 (シメオン老人(既に正体はエサレス・ベイだとばれています。『黄金三角』ではエサレ・ベイと表記されていました。)とドン・ルイス(正体はアルセーヌ・リュパン(創元推理文庫ではルパンをこう表記しています。)。『黄金三角』ではドン・ルイ・プレンナと表記されいました。)とが対峙している場面で)ドン・ルイスはシメオン老人にコラリーが生きていることを示したとき、シメオン老人は「金(きん)・・・金貨の袋・・・」とうめきます。シメオン老人は、金貨の袋の行方が気になっているようです。
 すると、ドン・ルイスは、(金貨の)書くし場所など自分にとってそんなものは存在しない。コラリーは金貨袋のあいだに埋められていたんだから、そこから論理的な結論がひきだせるだろう。と言います。
 つまり、コラリーを見つけたならば、その前に既に金貨袋は見つけられているのだと言っているわけです。(この部分は、347ページを引用及び意訳。)
 さらに、「金三角」について「金三角というのは、金貨の袋を三角に積み上げてあるということなのです。」(362ページ)といい。
 また、その形は「三角のピラミッド」(364ページ)と言っています。

 ピラミッドなら四角錐の形になります。私は三角錐と書きましたが、ここは私の誤りですね。
 ただシメオン老人が、コラリーが発見されたとしても金貨袋はまだ発見されていない可能性があるかのような発言をしているのは論理的な矛盾があるという指摘は正しかったと言っていいと思います。
 

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#金三角 #東京創元社

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