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『シンウルトラマン』の世界

はじめに

 『ウルトラマン』って、なにか不思議なテレビドラマでした。
 まず、ウルトラというのは、オリンピック体操で有名になった「ウルトラC」からとっているということは子供心にも想像が付きました。
 また、マンも男性の英雄を示す言葉としてアメリカのテレビドラマ『スーパーマン』により刷り込まれていましたから、すんなり受け入れることができました。ここまではスムーズでした。
 ただ、身体が巨大であることには驚きました。それまでの怪獣映画では、巨大なのは怪獣だけで、人類の味方は自衛隊や軍しかいなくて、彼らは当然ながら怪獣よりかなり小さかったのです。まさに意表をつかれました。
 そして、その造形。物凄く絵に描きやすかったので、ノートといわず画用紙といわず、とにかくウルトラマンの絵を描きました。このとき、両手を交差させる描写に常に苦戦しました。そもそも子供には手という複雑なものを描く能力が不足しているのです。

 ヒーローの絵を描くというと、アニメ『エイトマン』がありました。エイトマンは顔は、ほぼ人間、身体の造形は複雑、そして走っている姿が常態でしたから、体が風をまいているような動きのある描写をしなければなりませんでした。
 また、同じくアニメ『鉄人28号』がありました。こっちの方は、全身ロボット然としていますが、鉄人は空を飛びます。飛行姿勢を描くのはバランスを取りにくく苦労しました。
 ウルトラマンの真似して描きやすいデザイン、それに銀(明るい灰色にしか見えませんでしたが)に赤(というか朱色)の色合いは、クレヨン画によく馴染みました。

 ところで、『シンウルトラマン』です。
 こちらの方は、「ウルトラマン」の科学特捜隊が存在しない世界なので、ウルトラマンが登場するまで、人間が怪獣と戦っていました。
 そして、「なぜか怪獣は日本にだけ現れる。」ので、攻撃の主体は自衛隊です。しかし、さすがにそれだけでは困ることがあるので、怪獣対応の専従班が組織されています。
 他は、「ウルトラマン」の世界観と共通する設定で、政府は宇宙人の策謀にいいように騙されるし、コンピュータも一瞬でデータの改変や削除が行われてしまうし、いいところがありません。

 しかし、そうであっても、人類が消滅してしまう危機に対しシンウルトラマンは命と引き換えにゼットンに挑もうとします。
 シンウルトラマンは、彼の命を心配する地球人に言います。「問題ない。君達の命が最優先だ。」
 この事務的というか無機質な言葉は、「論理と優先順位以外に気にかけることなどなにもない。」と言わんばかりです。
 この辺は、シンウルトラマンより以前から地球に来ていて、地球の文化に精通した外星人メフィラスとは異なります。

 映画『シンウルトラマン』は、かなり実社会に影響を及ぼしているように思います。
 空調システムのテレビCMで、シンウルトラマン役の俳優と、メフィラス役の俳優が、『シンウルトラマン』を観ていないと理解しづらい会話を交わしているとき、そう思いました。
 『シンウルトラマン』が映画の枠を超えたのなら、「ウルトラマン」ファンとしてうれしいことです。

以上

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