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「ウエストランド」の漫才を語る
はじめに
岡山県出身の漫才コンビ「ウエストランド」の漫才『あるなしクイズ ゲームショウにはあるけどファッションショーにはない』(YOUTUBE動画のサムネイルより)について語ってみます。
1 ウエスウトランドを推すようになった契機(きっかけ)
3年くらい前にウエストランドのYOUTUBE動画「ぶちラジ」を何となく視聴していると、この動画が1000回近く続いていることを知り「動画の出来不出来はともかく、1000回も続けていることには価値がある。」と思い、それから継続して視聴しています。
この動画を観ていると、日本エレキテル連合とかパーパーのあいなぷうとかトンツカタンとか、他のお笑い芸人さんのことがよく話題に上るのでそちらの方の動画も検索して視聴するなど、だんだんYOUTUBE動画の視聴傾向がお笑い寄りになっていきました。
そうしているうちに、「いぐちんランド」事件を知り(この文章の品位維持のため、「いぐちんランド」事件の内容に立ち入れません。「いぐちんランド」の詳細を知りたい方はネットで検索してください。)、井口さんが謝罪のために爆笑問題のラジオに飛び入りで出演した動画を聴きました。
もう芸人を引退するしかないとうなだれる井口さん。そんなもの失敗のうちになんか入らない。何言ってんだ「バカじゃないか」としょげる井口さんをきつく慰める爆笑問題。一方松村邦洋さんは、「あれ、この人井口さんのお兄さんだっけ?」と思わせるほど本気で慰めるていました。
これだけの芸人達が本気で慰めるなんて、井口さんは、よほど可愛がられているんだなぁ、と感じました。
「売れる芸人には、どことなく可愛げがある。いぐチンランド事件は井口さんの可愛げを表面化させた。」と思いました。
とにかく、以来ずっとウエストランドを推しています。
2 漫才の内容
この漫才の正式名称は分かりませんが、動画のサムネ(サムネイル(thumneil)の略称。親指(thum)の爪(nail)の様に小さい見本画像という意味。)には「あるなしクイズ ゲームショウにはあるけどファッションショーにはない」と書いてありました。「ショウ」と「ショー」のように表記にゆらぎがありますが、これは大目に見ましょう。
この漫才は、M1グランプリ2022でウエストランドが優勝した漫才と同じパターンで作られています。基本構造を変えずにいろいろ変化を付けられるところがミルクボーイのM1優勝ネタと同じ一種の発明です。
さて、今回の漫才を順に書いていきます。以下ネタバレになるので、初見は漫才で見たいという方はここで中断してください。
(1) 漫才の流れの説明
例によって、クイズの形式を説明します。「赤ちゃん、お城、お茶」の共通点を説明して、井口さんは河本さんの出題を待ちます。
(2)第1問 ゲームショウにあってファッションショーにないもの
井口さんの答は、意味。ゲームショウには意味があるけど、ファッションショーには意味がない。なぜなら、ファッションショーでモデルが着ている、半裸か古代オリンピックのような衣装など需要がないから。井口さんは「パーカーが一番いいんだから。」と実用性の高い衣装にしろと主張します。もちろん不正解。
(3)第2問 TikTok(ティックトック)にあってYOUTUBEにないもの
急にエロい動画が出てくるので避けられない、一度観てしまうと次もエロい動画が出てくるので観てしまう。と井口さんは、嬉しそうに苦情を言います。そして、コントコンビのお笑い芸人ラバーガールがTikTokで大人気なので、これも頻繁に観ちゃうという感想。これも不正解。
(4)第3問 漫才師にあって物まね芸人にないもの
物まね芸人には羞恥心がない。楽屋でマジの物まね芸を見せてくる。漫才師にそんな奴はいない。また、我々に新ネタを見せて「どう?」って聞くけど、「似ていない。」なんて答えられない。マジで怒るから。と内輪の話に触れつつ、物まね芸人寄りの芸風のウクレレ漫談芸人のパーマ大佐の話に移っていきます。
やれ、宣材(「せんざい」。宣伝材料の略称。)写真がウザイだの、すぐ離婚するだの(パーマ大佐は、井口さんの物まねで売れている芸人アイドル鳥越さんと付き合っています。)、言いますが、結局パーマ大佐を宣伝しています。
これも不正解。
(5)第4問 メジャーにあってインディーズにないもの
ここが、この漫才の山場になります。
井口さんの答えは、「言い訳」。メジャーで活躍するバンドは、言い訳しないけど、インディーズ(既存の大手レコード会社の力を借りずに、小規模の会社あるいはアーティスト本人が自ら作品(商品)を制作し発表される音楽や、その会社やレーベルのこと。なお、レーベルとはレコード会社の組織の一つで、アーティストが所属してCDを作る部門のことです。)にいるバンドは言い訳するから。
言い訳の例と、井口さんのコメントは次のとおり、
(1)「俺達は変わりたくないんで。(メジャーには行きません。)」
井口:変われ! そろそろ。素直になれよ!・・・私見:単なる負け惜しみだろ。変化に順応することで生き残れるんだろ。ってことですね。
(2)「自分の信念を貫きたいんでメジャーには行きません。」
井口:メジャーに行ったぐらいで変わるんだったら、そんなの信念でもなんでもない!・・・私見:信念は、環境を選ばないだろ。本当の信念は、メジャーに行っても貫きつづけることができるだろ。って意味ですね。
(3)まだまだやりたいことがあるんで(メジャーには行きません。)」
井口:やりたいことなんかどうでもいいだろ! もう30歳すぎてるんだろ。格好悪いな。・・・私見:夢を追ってばかりいないで、現実を見ろよってことですね。
3 感想というか総括
まず、第3問の漫才師と物まね芸人の件(くだり)で、井口さんがパーマ大佐の話題を引っ張り出してきて、パーマ大佐の知名度が上がるようにしていることが心に残りました。パーマ大佐は、一昨年くらいに『森の熊さん』の替え歌のネタについて訳者から著作権侵害を主張されたことがあり、少し有名になりましたが(その後円満解決)。その後は、あまり話題になっていませんでした。しかし、パーマ大佐は、楽器演奏もウクレレ以外にピアノなどもできるし、作曲もできる(お付き合いしているというアイドル鳥越さんの歌もパーマ大佐が作っています。)という実力があります。井口さんは、そういう実力があるのに恵まれていない芸人に肩入れするところがあります。そういうところは、事務所の先輩である爆笑問題の太田光さんと似ています。
しかし、白眉(「はくび」。同類の中で最も傑出している人や物。)は、第4問のメジャーとインディーズの件(くだり)です。
井口さんは、主張します。「この世の中何が正解なのか分からないだろ。正解なんか誰にも分からないから、みんな一生懸命やっているんだ。正解が分かっていたらその通りにやるよ。どの道を選んでも正解するかどうかは、自分次第だろうが。
(オレも)散々言われたよ。でも、(信じることを)突き通したらM1で優勝できましたよ。(ここで、大きな拍手が起きました。)
そういうもんだから。
(ラジオ番組)「爆笑問題カーボーイ」のリスナー(から言われたこと)の真逆を全部やったら、優勝できた。」
恐らく多くの人がこの言葉に胸を打たれたのでしょう、会場のざわめきに間が空きました。
そこで、河本さんが「もう正解でいいです。」と言い、あるなしクイズの件(くだり)は終わり、漫才自体も終了していきます。
クイズの正解を越えた正解ってことでいいと思いました。
私は、演芸にしろ、芝居にしろ、映画にしろ、小説にしろ、あんまり感動なんかしませんが、この漫才には感動しました。
特に、井口さんが言うからなんでしょうね。
ウエストランドは、デビューからすぐ『笑っていいとも』のレギュラーになるなど、散発的ながらも活躍してきたのに、あまり褒められることがありませんでした。それでもクサることなく『ぶちラジ』を1000回近く続け(『ぶちラジ』はノーギャラです。)、2022年のM1優勝後の超多忙な中も漫才のネタを作り続けてきました。
ウエストランドが出演するテレビ番組はだいたいチェックしていますが、井口さんの喋りはその品質が落ちることがありませんでした。その状態で、この高品質のネタ。しかも、自分の置かれている環境を踏まえた感動ネタ。
この仕事の質と量には頭が下がります。
私が観たYOUTUBE動画のコメントには、「感動した」という内容のものが多かったので、「お笑い観て感動ってなんだよ!」と思いましたが、私も感動しました。お笑いを観たのに。
以上