ベルリンの片隅で、スケートリングで初滑りぎゃー
引き出しを開いたら履くパンツがなかった。
山盛りの洗濯物が今週の混沌を象徴している。
普段なら子供達は週末父親の家に行く。
その間、私は一言も喋らず、家に引きこもり自分時間を楽しむ。
週末になったら、あれをやろう、これをやろう、と思いを巡らせていた。
が、昨日、父親は突然一人でお友達の家に遊びに行ってしまった。
なんてこった。
私は子供達と何をすればいいのだ。
この問題を放っておくと、皆でうちに閉じ込められてしまう。
そして地獄絵図だ。私はギャーギャー怒鳴っているに違いない。
どこか行くところを見つけておかなければならない。
風船のように飛んでいく今までの反省の紐を、今回は掴んだ。
リサーチだ。
グローピウスバオ美術館ではBAUBAUという子供達が遊べる展示をやっている。が、こんな意識高い系のイベントは、もちろん完売。オンラインではチケットが取れなかった。
色々と子供向けの舞台もあるが、チケットは安くないのでリスクが高い。「えー、行きたくなーい」と言う子供達を連れて行くことはできるが、終わった後に「あんまりだった」とか言われてたくない。Amazonみたいに、行った人の評価がわかればチケットも買いやすいのになあ。
座って芸術を楽しむよりも、体を動かす方がよかろう。それで思いついたのが、アイススケートだ。ググってみたら、ちょうど明日からリングが解放されているではないか。
うちから遠くない、湖に面した場所にある。スケートリングは小さいが、わざわざこんな所まで来るのは地元民だけだろう。そもそも私はへっぴり腰で、壁に掴まっていないと安心できない人なので、十分な大きさだ。
使用料と靴のレンタル代を払って、スケート靴を履くまで長かった。家を出てバスに乗るまで息子達、トラ雄とクマ吉に散々キレまくっていた。
どうして準備をしないんだ。どうしていつまでも遊んでいるんだ。どうして目を離すと喧嘩をしてるんだ。そして、どうして私はこんなにキレているんだ。
近所なのに遠かった。
トラ雄は意気揚々と「先に行ってるね」と言って、リングに乗り込んで行った。しかしクマ吉は時間がかかる。借りた靴が小さすぎて、靴を変えなければならず、リングに立っていられなくて、補助を借りに行かなければならなかった。受け付けで「ペンギンを貸してください」と言ったら、「ペンギンはもうないけどシロクマはあるよ」と言われてちょっと可笑しかった。
スイスイ滑るトラ雄はほとんど見えない。クマ吉は進まないシロクマに怒って、初っ端から「もうここに二度と来ない!」と文句を言い出した。
流石にまだ帰りたくないので、たしなめるしかない。「大丈夫だよー」「さっきよりできてるよー」氷の上を滑る私の機嫌も良くなっているらしい。フォローができる。
少しずつ少しずつ進めるようになって、クマ吉はだんだんコツを掴んだ。もうシロクマを掴んで、一人でジャリジャリ進んでいる。
休憩して、持参したおにぎりを食べて、また滑ろうとしたところで、私は自分の携帯が震えたのに気づいた。後30分で授業が始まる。
ぎゃー!忘れていた!
もはや趣味の領域ではあるが、私は週に一回だけ個人レッスンで日本語を教えている。そしてそれはいつも土曜にある。昨日私は自分の予定表を見たはずなのに、目が見えていなかったらしい。
慌てて時間変更のお願いをしたら、すぐ返信が来た。
「先生、大丈夫です!」
よ、よかった。ありがとう!
いい人しか、私の生徒になれないや。
何だか今日はうまくやれていないけど、スケート滑ったから、いいってことにしたい。とは言いつつも、家に帰った後もギャーギャー言っていた。何かの病気なのか私は。
私にずっと氷の上を滑っていてもらいたい。そしたら、ずっとご機嫌だろうよ。
顔を上げるとトラ雄とクマ吉が立っていた。二人は目が爛々で、なぜか真っ裸だった。私の部屋に舞い込んできて「お尻お尻ちんちん、ちんちん」とか歌いながら、歌い踊り回った。
なんの意味もなく、ただ楽しいだけという。
あは、あはは
これを見て、口元が弛まない人はいないだろう。
なんだろう。考えてるようなつもりで、考えていない自分が、嘘っぽく思える。全く考えてない、これこそ生き物の本質!
ありがとう。
晩御飯を作る元気出たわ。
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