オフシーズンのマヨルカ島、子なし旅、うまい飯。
「たまには、お子達なしでゆっくりしたら」
と言ってくれたのは大人になってからできた友達でした。これって私には奇跡に近いこと。彼女はスペインのマヨルカ島に住んでいる。
遊びにおいでよなんて、貴方は天使ですか?
子供を預かってくれと父親に伺いを立てるのはモヤモヤしたけれど、結局は全て問題なく進み、ちゃんと飛行機に乗れた。ベルリンは冷たい雨。しかし2時間45分飛んだら青い空が広がっていた。
お値段は往復91.93 EURで約1万4千600円。アイルランドの格安航空会社、ライアンエアーの航空券は安いけれど、手荷物の大きさは縦40cmまでとけっこう小さい。帰りに大きさチェックに引っかかった人、きっと追加料金払わされたんだろうな。
オフシーズンにもかかわらず飛行機は満席だった。友人は州都のパルマに住んでいるのだけど、趣ある住宅街はとても静かだった。というのも実はお金もち地区だから、多くが別荘として使われているそうだ。
私は普段お金持ちと全く交流がないので、友人が教えてくれるエピソードは新鮮だった。彼女と旦那さんはコロナの中、たまたま別荘の物件をアパートとして借りられたが、お金持ちが不動産を買い占めるので地元の人が借りられるアパートが少ないんだそうだ。同じ敷地の物件は4億で売りに出されているんだと。有名人が山の中の見晴らしのいいところに別荘を持っていたり、海岸沿いにプライベートビーチを確保しているんだそう。
空港は思ったよりも大きくて、いろんな人たちがバカンスにやって来ていた。マヨルカはニューヨークとの直行便もあるぐらい空路は充実しているらしい。だからハリウッドスターもやってくる。それで地元の新聞には、この店に有名人がやってきた!という記事が載るんだそうだ。
温かいとは言っても2月。さすがに泳ぐ気温ではなかったが、それでも気合を入れて泳いでいる人を1人2人見かけた。せっかくマヨルカに来たんだもんね。
初日は近くの砂浜を散歩して街ブラ。次の日はバスに30分ほど乗って山間の村バイデモサを訪ね、3日目は港町ソイェールを歩いたりしてのんびり過ごした。
子供達よ、お母さんだけ美味しい思いしてごめんね。
と最初の方は思ったけど、子供がいたらこんなにゆっくり過ごせなかっただろうから、これはこれでよかったんだとだんだん思えた。
驚いたことに、友人の家にはバターがなかった。
「パンはオリーブオイルとトマト塗ったりして食べるから。」
当たり前じゃないかと思われるかもしれないが、ドイツと随分味付けが違う。塩味のお魚の味が薄いんじゃないか?と思ってしまった私は、知らず知らずドイツの濃い味付けと油っぽい食生活に慣れしまっていたのだと気付かされた。反省だ。
いや美味しいのです、トルティーヤも生ハムも。粉砂糖がかかった甘いパン、そして海の幸。中でもイカ墨のパエリアは絶品でした。ヨーロッパの中でもこんなに食文化が違うんだなあと、久しぶりの旅行だったから新鮮だった。
スーパーでは魚介類が豊富に売っていて、晩ご飯は魚やタコを焼いて食べた。とってもヘルシー。ベルリンでも昔に比べてスーパーで魚が買えるようになって、サーモンはよく売られているけれど、種類は少ないのです。
友人は私を地元人が行くカフェやレストランに連れて行ってくれた。初日に行ったレストランはオフシーズンにもかかわらずお客さんでいっぱい。でもほとんど待たずに座れてラッキーだった。水とワインを頼んだら、なんとペットボトル1本とワインボトル1本出てきた。ボトルで頼んだわけではないのにである。前菜と主菜とデザートまでついて全部コミコミで13ユーロという破格の値段だった。どうなってんだ。地元民のためのレストランなのだが観光客も来てしまうと、友人は少々苦い顔をしていた。
私はこの町の主要な人物たちに一通り会った。ジョーカーと呼ばれるピエロの大道芸人。ツケでカフェを渡り歩き大声で何かをわめいているおばさん。おしゃれな夜のバーレストランでお客にカセットテープを選ばせ音楽をかける謎のアーティスト。どことなく古きよきベルリンを思い出させる。
友人はカフェのおじさんと家族のように仲良くなっていて、心から笑っている笑顔が素敵だった。ここに引っ越してよかったね、と私は何度も友人に言った。ちなみに彼女は以前ベルリンに住んでいたのだ。
いつもカタロニア語ができないと嘆いていたので、彼女がこんなにスペイン語が話せるとは知らなかった。私は全部お任せで、彼女が店員さんとつつがなく楽しそうにコミュニケーションをする姿を後ろから眺めていた。かっこよかった。
スペイン語とカタロニア地方のカタロニア語は結構違うらしくて、彼女は自分のできなさ加減を嘆いていたけれど、自身のスペックを過少評価し過ぎだよ。ほんと。
スペインのおおらかさに癒され、私も少しはおおらかになっているかと思ったら、そんなことはなかった。ベルリンに帰ったらすっかりいつもの通りで、つまらないことで喧嘩する子供たちにブチ切れだ。うるさいうるさいと耳を抑える私である。
休暇は成長する場所ではないのだった。
日常を忘れる場所だった。
今度は巨大人形「ギガンテス」が練り歩くお祭りを見に来るよ。
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