「トラペジウム」の魅了
今回はかなり短めです。
「トラペジウム」、皆さん見ましたか。
相も変わらず原作やネタバレ等は一切なく(映画の予告は見た)本編を見ました。
皆さんはどういう感想を持ちましたか。
私は見てから数日たつのですが、見て一時間してから、あの映画良かったなぁと思い、そして今もあの映画良かったなぁと思っています。
よく、ミステリ作品はその読後感がいいと言われます。物語も読み終わった、そのオチに合点がいき、すっきりする。
この作品は、そちら側の作品ではないと思います。だから見終わったときにすごく清々しいとかスッキリしたとか、そういうのはありません。
でも、「トラペジウム」には、それにしかない余韻とその寂寥感がある、と私は思います。
それは、多くの現実を生きている、夢を諦めた、憧れにたどり着かなかった人々の希望の物語だからです。
でも、この物語は「夢が叶わなかった話」なのです。
入口からして明らかに破綻をきたす設定のもと組まれていくその話を私たちはシニカルに見る。しかしそれが現実となったとき、見ている私たちとまるで同じ次元に存在するように思えた瞬間、
私たちはそこに自分を見いだす。
だから、話が終わって、時間がたてばたつほど、見た経験や記憶は、自分自身の経験や知識と混同され、
あたかも自分の記憶の中に、かつて夢を追って、そして今があるような印象を植え付ける。
私たちはその実際には経験していない憧憬を、本質的に求めていた姿を、作品を通して自分を見てしまうことによって、自分を一つ憧れの形に見てしまえる。
それが、時間がたつにつれ、「トラペジウム」を見てよかったと思える、その心の動きである。
横山さんはこういう作品に本当にうってつけだと思いました。歌ものも当然、やはり劇伴が良すぎる。そしてけろりらさん筆頭の作画班は、この作品でしか作れない味を作っている。clover worksの本質はこれなんだ、と理解が深まりました。
早くまたアニプレックス主導の映画作品が楽しみです。