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凛と咲く季節のミールス(南インド料理 葉菜)

こんにちは
茹だるように暑かった夏もようやく去り、過ごしやすくなってきました。季節の変わり目ですね。秋刀魚やキノコなど秋の食材が美味しくなってきた今日この頃。そういう季節の恵みを食べると「四季がある国に生まれて良かった」なんてしみじみ思います。料理で四季を感じるのって良いですよねー。どんな料理で四季を感じるのかって、それはズバリ、葉菜ミールスです!!

ミールスとは南インドで食べられている定食のような菜食料理で、サンバルという豆と野菜のスープやポリヤルという炒め物など色々なおかずがあり、それをご飯と混ぜながら食べる料理です。

今回はインド料理なのに、日本の四季の野菜を堪能できるお店を紹介します!

のどかな郊外に佇む南インドの定食屋

葉菜があるのは千葉県の勝田台。船橋と成田の間くらいにある街です。京成線沿線にあり、東京からは1時間以上かかります。
因みに私が行ってた高校がこの駅から徒歩5分くらいのところにあります

葉菜はそんな勝田台の飲み屋が立ち並ぶような路地裏にあります。

丁寧で美味しい料理を出してくれそうな気配があります

年季の入った木の扉を開けると、暖色の間接照明と、木の一枚板のテーブル。音楽も相待って、何だか時を忘れそうな雰囲気です。

夜はアラカルトを頼みながらお酒を愉しみ、〆にミールスなんてのもいいですね。

基本的にはシェフが厨房にいて、奥さんがホールをしています。アルバイトの方も何人かいらしていて、メニューの説明や食べ方も親切に教えてくれます。初めて南インド料理を食べる人にもおすすめのお店です。

メニューは主にミールスです。サンバル、ラッサム、ポリヤル、チャトニなどのアイテムに加え、メインの料理をベジかノンベジから選んでいくものです。ベジもノンベジも食べたい!という方向けのスペシャルミールスもあります!

また、ドーサやビリヤニなどが食べられる日があったり、ペッパーフライやパコラなどの一品料理がある時もあります。事前にシェフ吉田さんのSNSを確認してみると良いと思います。

また後述しますが、今月いっぱいまで、シェフ吉田さんの恩師である南インド料理人アンディさんが厨房に立たれてミールスを作っています!最後の来日かも…ということなのでインド料理フリークは必食です!!

南インド料理で季節を感じる

葉菜は季節の野菜がふんだんに使われいますが、多くは吉田さんの所有している畑で作られているもの。自家製野菜の料理で季節を感じる!食べ手にとってこんなに嬉しいことはありません。

ここからは、葉菜で食べた料理を季節ごとにまとめていきます!

寒い冬は人恋しくなります…そんな日にも一品ずつ丁寧につくられている葉菜の料理が染み渡るのです。お店のインテリア特に温かな間接照明が心地良いです。

サンバルはキリッとした味付けのなかに野菜の旨みがたっぷり。スーパーフードと言われるドラムスティックも入ってます。固い表皮は残して中のトロッとした部分のみをたべます。香ばしいマスタードシードが食欲を増進させます。ラッサムはタマリンドの風味にニンニクがしっかり効いてるもので大変好みです。ダールはシンプルながら豆の滋味を感じます。

紫キャベツのポリヤルとかチャトニは優しい味。一皿の中で、足し引きが絶妙で、混ぜた時にめちゃくちゃ美味しくなるようになってさか自家製野菜がとにかく美味しいです。紅一点である?ビーツのパチャディは全体を包みつつ、香りと酸味で切り込んでいくような料理です。

マトンサローナ

この日は葉菜の14周年の「マトン祭り」の特別料理。サローナとはサラッとしたトマトベースのスープに、マトンや野菜の旨みが染みてる料理。
マトンの旨味が染みた滋味深いスープにカルダモンやクローブの甘い香りと青唐の鮮烈な辛さのフックが絶妙でした。身体の芯から暖かくなるシチューです。

マトンも野菜もたっぷり。身体ほっこり。


2024年3月14日のベジミールス

春の訪れは感じつつ、まだまだ肌寒い3月のミールス。この日のメインはワッタルコロンブ。ワッタルとは南インドのタミル州で食べられてきた干し野菜。現地ではインゲンとかオクラみたいな野菜を使うことが多いけど、葉菜では切り干し大根と椎茸!これは一本取られた。葉菜流Japaneseワッタルコロンブは、葉菜では切り干し大根と椎茸でした。一本取られました…!

自家製ワッタルコランブ

自家製ワッタルコランブはドンコ出汁と大根の甘みがめっちゃ染みてる…こんなにインド的なのに和のうまさを感じたのは初めて。目から鱗でした!
冬の乾燥した空気でカラッと乾いた大根。それがドンコの旨みやスパイスをズズッと吸って噛むたびにジュワッと広がります。

食感もめちゃくちゃ良いです。分厚い椎茸、ポリポリした歯応えの大根、ベジ料理ですが、お肉なんて要らない美味しさとボリューム感です。


サンバルは大根とピーマン。巷ではドロっとしたサンバルが多いですが、葉菜は真逆。透明感がありサラッとしています。塩もかなり抑えたミニマルな味。淡い味わいで春にぴったりレンズ豆の微かで繊細な美味さがしっかり楽しめます。
そしてサグ(青菜炒め)、海苔(たぶん。ダルにヒジキが入ってたりする店だし)が和えられていて、海の風味とほんのり。海苔も春が旬ですよね〜。

これは1週間後に訪れた時のもの。この時はノンベジミールスを食べました。

2024年3月21日のノンベジミールス


サンバルはかなり減塩していて豆の味とカレーリーフの香りとマスタードシードの仄かな苦味。それに対してラッサム葉しっかり塩味と酸味があってエッジが効いています。クートゥはポタージュみたいにマイルド。アイテムがそれぞれの役割を全うしているから混ぜるほど調和が生まれる、素晴らしい構築美…

みてるだけで綺麗。

サグはアカカラシナを使ってそうです。日本だとサグはほうれん草であることが多いけど、厳密にはからし菜(ほうれん草はパラク)。香りと旨味が濃い。油との相性が抜群。隣のゆずのピックルは自家製!柑橘の風味で一瞬和食を食べてるような感覚に陥ります。

牛タンのカレー

牛タンに旬はないかもしれないですが…絶品

メインは牛タンのカレー。初めて食べるけど、想像を絶する美味さ。トマト?の旨味とチリのシャープな辛さな、クローブの甘い香りは牛肉の味と相性が良いですね。タンシチューみたいな洋食のエッセンスもある。タンはプリプリで柔らかくて味が濃い。こういうメニューは、日本人のインド料理屋ならではですよね。

ふきのとうのパコラ

2024年3月14日のアラカルト

春といえばやっぱり山菜!!山菜といえば天ぷら!!
パコラとはペサン粉というひよこ豆の粉を使ったインドの天ぷら。ベサン粉特有の豆の香ばしさと甘みがふきの爽やかな香りや苦味を引き立てる。ザクザクじゃなくてパコラ特有のサクッモフッとした食感も山菜によく合ってます。フェンネルのような爽やかな香りもします。
また、トマトの旨味と甘みたっぷりのチャトニを絡めるとばっけ味噌(蕗味噌)みたいなニュアンスも出てきます。これはものすごく良いものですね…キュンとしますよ。

夏(初夏)

2023年6月10日のミールス

梅雨のじめっとした気候の中ではやる気が起きず、雑念ばかりが積もってしまいます。しかし、キリッと洗練された葉菜のミールスを食べると頭が冴える気がします。
無駄な塩分や油分や辛さは一切なし。洗礼された一手間で旬の食材を活かしきったミールス。カッコいい。サンバルは具材は茄子のみ。スパイスの仄かな風味が旬の茄子のトロッとした甘みを引き出しています。クートゥ(豆の煮込み)はヒジキ入り。ヒジキの磯の旨味とメティ?のちょっとした苦味がまろみのある豆の味の中で良いアクセントになってます。

バカリポロ

そら豆は大好物なんです

この日はオプションでライスをバカリポロに変更できました。バカリポロとは空豆と生ディルの炊き込みご飯です。朝取れの空豆の青くふくよかな香りとバスマティの甘い香りはとても心地良いです。アクセントにディル(スモークサーモンとかによくのってるやつですね)
昔ペルシャ料理屋で食べたバカリポロはもっとディルディルしていた(それも好きなんだけど)が、こっちはかなり上品で、風味を食べる料理でした。

初夏のマサラ

もう一つの日替わり、メロンのパチャディも食べたかったのですが、売り切れでした😭

メインのカレーは初夏のマサラ。カブやスナップエンドウなどが入ったトマトベースのカレー。カブは葉っぱまで入ってる。カブの葉がハーブスパイスの役割を果たしていて、すごく個性的なカレーになってる。丸々太ったスナップエンドウも食べ応えある。後味にトマトのフルーティーな香り。トマトの青臭さや水っぽさを引いて、トマト感を出すのってかなり難しいのですが、この一皿は見事でした。また、スナップエンドウなど、初夏らしい食材がたくさんあるのも嬉しいですね。

食欲の秋!!果物が実り、魚にも脂がのってくる時期ですね。自然の恵が綺麗な美味しさになって並べられています。この日のサンバルはピーマンと冬瓜のカレー。引き算を突き詰めた香りと塩味にピーマンの苦味が合います。

また、ニンニクと酸味のエッジが効いたラッサム、餡のように滑らかな舌触りと品のいい甘みを感じるクートゥなど、どれも穏やかなのですが個性的。だから食べていて全然飽きないのです。葉菜では大体ご飯をお代わりするのですが、食後にもたれたり、苦しくなったことは一度もありません。

桃のパチャディ

パチャディとは、ヨーグルトやココナッツにスパイスを入れて煮込んだものです。
ベジは桃のパチャディ(ヨーグルトとココナッツベースの料理)。桃の瑞々しい甘みとココナッツのモッタリ感は、桃とブラータチーズの取り合わせにも近いかも?そこにマスタードオイルのツンとくる香りに、ホールスパイスの奥行きのある苦味があとからやって来て、味と香りのグラデーションが見事です。

カレー(これをカレーと言っていいのかというのは置いといて)にフルーツを入れるなんて…ましてやご飯のおかずにするなんて…と思っている方も、ぜひ食べてみてほしいです!ちなみにこの料理に触発されて、私も梨でインド料理をつくりました!レシピも公開しているので、ぜひご覧ください。

ツキアゲコランブ

南インド風にいうなら、ミーン・コフタでしょうか?

ノンベジはツキアゲコロンブ。自家製のさつま揚げ(ツキアゲ)は、手作りならではのふわふわ且つ弾力がある絶妙な塩梅。白身魚の味が噛み締めるたびに濃くなる。トマトの酸味が効いたスープにも出汁感があります!
その出汁が効いたコランブのスープは本当に絶品で、魚介の旨味やシャープな酸味が綺麗に絡み合い、そこにマスタードシードやフェンネルの爽やかだがクセのある風味がアクセントになってます。これは割烹なんかで出してもいいんじゃないでしょうか?

そして、今年の秋…

葉菜の吉田シェフの恩師であるアンディさんが厨房で腕を振るっています!このチャンスを逃すまいと私も足をはこびました。

アンディミールス

2024年9月14日 アンディミールス

こちらがアンディミールス!
普段の葉菜よりも塩の輪郭が僅かにキリッとしてたけど、葉菜の魅力であるギリギリまで引き算にして野菜の持つ風味をスパイスで立たせるというシグネチャーを存分に感じられた。これが葉菜の源流なのかと知れてファンとしては非常に胸アツでした。

カボチャも秋に食べたいのよね

特に美味しかったのが、カボチャのカーラン。
カボチャの甘みがグレイビーに溶け込んでてめちゃくちゃ美味い。サラッとしていて、澄んでいるのに、濃厚な味。

油を吸った茄子。トロッとした秋茄子うめぇ


茄子のポリヤルも絶品でした。ねっとりした茄子がスパイスオイルやヒングの香りを吸っていて官能的な美味さ。ご飯が進む〜!その後ろのスンダル(ひよこ豆とココナッツ炒め)も香ばしくてバッチリきまってました。すごく美味しかったです。シンプルな料理ほどその人の個性や凄さを感じられます。

キノコと栗のプラオ

ワダやチキン65も追加!
キノコの香りもスパイスだね

プラオは吉田シェフ担当。舞茸や椎茸などのキノコに刻んだ栗がたっぷり。秋が詰まった炊き込みご飯!そしてやはり想像以上の味わいでした。きのこの風味と滋味。味というより淡い香りが薄いレイヤーのように重ねあって表現された料理です。秋の情緒が感じられる一皿。美!

アンディさんの料理が食べられるのは10月27日まで!!
なんとその日は全20種類も料理が出るそうです。皆んな、勝田台に集まれ!!

終わりに

いかがでしたか。葉菜の料理は徹底的にシンプルで引き算の料理。だから品数が多くてもまとまるし、食材の風味まで伝わってくるのです。立ち姿が美しいというか凛としてるんですよね。

メディアでは、一口目からフルスロットで濃厚!ガツンとくる!ような料理がフォーカスされがちです。そういうのも勿論良いんですが、ゆっくり丁寧に味わって、その食材や料理方から季節を感じて、「もうそんな時期かぁ」なんて一息つくのも良い時間ですよ。都心からちょっと遠いのもまた良いんですよね。






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