「老いてさまよう~認知症の人はいま(毎日新聞特別報道グループ 編著)」を読んで

今回は「老いてさまよう~認知症の人はいま(毎日新聞特別報道グループ 編著)」の感想になります。この書籍では、地域または介護施設における認知症患者の現状の問題が取り上げられており、介護制度など、”社会から見た認知症”について学ぶことができました(2000年~2010年代前後と若干古めの記録ではありますが)。

読み始めてまず衝撃的だったのが、「介護を受ける側に選択肢がなく、介護事業者の都合に振り回されるケースがある」というもの。例えば、介護報酬が減らないようにと、本人の希望を聞くことなく勝手にケアプランが立てられることがあるとのこと。
また、最近は「住み慣れた地域で自分らしく暮らす」という病院→在宅移行のブームが強まっていますが、こちらにも課題は多く、身寄りのない独居高齢者が行き場を失い、行政の取り組みにも限界がある現状を垣間見ることができます。またへき地をはじめとした、交通網の発達していない地方になると、より介護職の負担が大きくなり、在宅移行にはまだまだ課題が山積していることも分かります。

一方、認知症利用者を預かる施設も玉石混交であり、中には職員の都合で暴れる利用者を隔離したり、過度な拘束を行う施設も存在します。しかし認知症患者の「暴れる」「徘徊」といった行動はBPSD(周辺症状)と呼ばれるものであり、関わる者や環境によって改善もするし、逆に悪化することもあります。ただ施設や介護職員が増えればよいという訳でもなく、認知症の症状・対応に関する教育の徹底がまずは求められるのではないかと思います。また認知症が進行すると、自分の意思を適切に伝えることが難しくなる方も多くいます。しかし、コミュニケーションができないからと言って、決してその方の人権を軽んじてよい訳ではありません。現実はなかなか難しいのかも知れませんが、1人でも多くの認知症患者の人権が尊重されることを望みます。

もう1つ衝撃を受けたのが、徘徊などで行方不明となってしまった認知症患者・身元が分からないままの認知症患者が少なくないという現状。この問題については、警察も連携しながら全力で対応にあたっていますが、個人情報開示についての同意が困難な認知症患者について、どこまで情報公開を行ってよいのかといった問題もあり、一筋縄ではいかないようです。残された家族も、「もっとちゃんと見守っておけば…」などといった後悔の念に駆られ、認知症当事者のためにも、介護にあたる家族のためにも、早急に解決しなければならない問題であると痛感しました。行政と医療との連携も今後より重要になってくるものと思います。

以上のように、本書を通じて”社会から見た認知症”の現状について学ぶことができました。認知症を幅広い視点で捉えると、決して病院や施設の中だけで対応が完結するものではなく、地域社会や家族とも連携しながら対応していく必要があると感じました。誰もが「住み慣れた地域で自分らしく暮らす」を実現するために、将来看護師を志す者としてできることを頑張りたいと思います。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!