貧困ビジネスね、まあどうだろね。
先週、先々週とスケジュールがタイトになっていたところに急遽記事を書く仕事が入ってきてしまい、こちらに書くことができなかった。載った冊子は来週とその翌々週くらいに出るはずなのでまたご紹介したい。
さっき、Xで「障害年金の絡みで、社労士からの脅しがすごい嫌だ」という精神科医の書き込みを見た。社労士に脅されるなんて、弱みでも握られているのだろうか。
タイムリーだし、我々にとって避けて通れない部分なので、ちょっと書きたいと思う。
我々以外にも専門職はいる
そもそも障害年金に関係する専門職は我々以外にもいくつかある。医師もそうだし、医療機関に勤めるソーシャルワーカーもそうだし、相談支援の相談員もそうだし、日本年金機構の窓口もそうだ。でも多くの場合、せいぜいそのくらいだろうか。
ワーカーさんだって、自治体委託の障害者就労支援センターの相談員さんだって障害年金の相談には乗ってくれる。書類の書き方を教えてくれたりする。別に医師が無報酬で代行してあげたって良いのだ。
この中で障害年金の手続を代理代行して請求者から報酬を取るのは、我々、社会保険労務士だけである。上記の方々に相談しながら進めれば費用は掛からない。それでもなぜ我々に依頼する人がいるのか。
我々が弱者をだましてお金を取っているからだろうか。
手間の問題
障害年金の手続きでは、前医の受診があったり、年金保険料の納付状況がわからなかったりするので、結局のところ、誰かが医療機関をあたったり、年金事務所や役所へ行くなど、実際に動かなければならない。
ワーカーさんも相談員さんもなかなか全員の年金記録を一緒に取りに行ったり、前医に一緒に電話したり、というのは難しい。相談員という職はそんなに暇ではない。医師だって同じだろう。
これは無償だからこそ生じる問題である。障害年金の請求を手伝うことは、他の職種にとって業務の中心だったり本質だったりするわけではないのだ。そうしたとき、自身が動いて解決できればそれでよいのだが、動けない人は誰かに頼むしかない。
難度の問題
医師の大きな勘違いとしてしばしば見受けられるのは、障害年金が障害の程度だけで支給可否を判断している、という認識である。そうすると、自然に冒頭のような結論に達しがちだと思われる。
障害年金は初診日の問題をまず解決しないと、絶対に支給されない。
前記のような相談職がいるのにも関わらず、我々の仕事があるのは、やはり一時の相談では手に余る場合があるからである。別に能力の優劣の話ではなく役回りの違いである。我々は、相談員さんほどの量を常に手元で抱えているわけではない。たとえば再審査請求を上記のような方々の量こなすのは無理だ。
ウチの依頼者は医師、看護師、PSW、自治体相談員、労働局や市役所勤務の公務員、士業と大体一通りいる。いずれも自分で手続きしようと思えばできたはずである。
中には、医師の方の家族の請求で、審査請求までやってだめだったので、という再審査請求からの依頼の方もいた。他の社労士に断られたらしいが、資料を見てウチは可能性ありと判断して再審査請求のみ受任。処分取消となった。
ほら、ちゃんと難度の問題もあるでしょ。
ウチが毎月支援機関で相談に乗っているのは、相談員さんに呼ばれるから行っている。それ以外にない。日当も交通費も出ないが、頼ってもらうのは嬉しいので行っている。支援機関の案件は比較的エグいものが多いので、個人的にはいつやめても大丈夫だ。
報酬の問題
報酬の問題は、言っていることはちょっとわかる。
これはウチでも何度か考えたこともあるし、たとえば開業するときには値付けをするわけだから、そこで誰もが一度は考えているだろう。
これについては思うところがあるので、また場を改めて書きたい。
まとめ
診察室に入っただけでいきなりブチ切れる医師とか、Xでも書いたような無暗に苦情を申し立てる医師もどうかと思う。
よく「診断書下書きしてくる社労士がいる」と書き込みもあるけれど、あれ「下書き書いてもってこい、それがお前の仕事だろ」っていう医師が結構いるからだと思う。
ウチは出方を見ないとどんな地雷を踏むかわからないので、そういうアプローチはしないし、障害の程度は医師に任せたい。というか、それが障害年金の本筋だろう。もし認定に足りてない記載(基準に対する記載漏れ等)があれば、不要な不支給を避けるためにもその評価は書いてもらいたい。そしてその判断や指摘は我々の仕事だと思う。
一方で、意見書を依頼すると「我々の患者様のためにご尽力いただきありがとうございます」というようなお返事を下さる医師もいる。一緒にカルテ探して「あった!あった!」と喜んだ医師、PSWの方もいた。医師のご主人が亡くなられて廃業してからも、もしものときのために、と40年前のカルテを保存してくださっていた奥さまもいた。
つまり、素晴らしい医師もいるだろうし、そうでない医師もいるだろう。社労士とて同じだろう、ということだ。
自分で御せるのは自分自身だけなので、素晴らしいとまではいかなくても、あんまり後ろ指さされない社労士ではありたいと思っている。