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誰も満足していない 5

▪️誰も満足していない 5
【この物語はフィクションです】

布井は、グリルを出た後和食のレストランに向かった。

グリルから ロビーをぐるっと廻って 地階といっても
坂地に建っているホテルなので、地下の日本料理店のガラス戸の向こう側は日本風の庭園になっている。

まあ、彼にとってはごく普通の行動であった。
今回は一泊だった為、朝食を食べるチャンスは1回しか無い。
その1回のチャンスに洋食と和食の両方のレストランがどうなっているのかをチェックしようと、最初から考えていたのだ。

京都で お客さんとか、取引先の方とか、もしくは 家族でとか朝食をご一緒するような場合、
このメンバーならあそこの店、
予約するなら あそこの店なら あそこのテーブルをという具合いに下見も 兼ねていた。

その為、洋食の方は軽くしておいた。

和食の入口には誰もアテンドしていなかった。

和食の店に近づき、受付があるのでしばらく待った。
3、4分たったけれど誰も 受付には現れないのだ。

布井は、こういう瞬間によく遭遇する。
要は、隙だらけということなのだが…

5分待った。
布井はいつもこういう場面では、ちゃんと測っている。

感覚で 早い、遅いでは いけないと決めているので
しっかり、時計で そこに何分について
そして 何分待っているのかは 確認するようにしている。


受付の前から 緩やかなスロープを上がり、右手のホールに入った。
そこで 待っていると3分ぐらいして、
ようやく配膳をしているウェイトレスが気が付いて
「ひとりなんですが、朝食をいただきたいんですが・・・」
「こちらへどうぞ。」
3、4人用の丸テーブルに案内される。


席について
あたりを眺めていると
ホールと受付のデスクとの間にある、事務所のホール側のドアが開いて
バックから担当者がヌォ~って感じで出てきた。

決してシャキンと、出てきたのでは無い、ヌォ~って、
牛が牛小屋から出てくるような感じで出てきたのだ。

朝ご飯には少し遅めな午前10時近かったので、
ホールの係は一人だけで、その事務所から出て来た彼女は
マネージャー アシスタントのようだった。


ホールを担当するウェイトレスの彼女がメニューを持って来てくれたので
「取りあえず、お茶をもらえないかな・・・」と頼んだら、
しばらくしてお茶が来た。


忙しいのは ホールを眺めていれば よくわかるけれど
3、4人用丸のテーブルでお茶が差し出された位置は
左となりの人の席の前で直径120cmほどのテーブルといえども
その位置の茶碗と手元に引き寄せるためには
立って手前にもってくるほどの位置だった。

せっかく、持って来てくれたお茶なのに
わざわざ、となりの席の人の正面に
お茶を届けていくのか、私は 理解に苦しんだ。
なぜ、もう一歩 斜め前に 足をすすめればいいのに。
それには わずか 計1秒の所要時間なのになあ〜。


料理が膳にのって来た。
今度は 私の前ではあるけれど、テーブルの中央に近い位置、
膳の手前から私の席のテーブルのへりまで
23~24cmほどあるところに置いていったのだ。

なぜ、あと20cm こちら寄りに 置いていけないのか?
はなはだ、疑問が残った。

他のテーブルでも同様のサービスが行われていた。
皆さん、自分でお膳を引き寄せて、
それでやっと食事が出来るわけである。


そう言えば、マネージャーかと思われる彼女は
何事も無かったかのようにこちらに挨拶にも来ない。


こういう場面では、先ずはしっかりと非礼を詫びるべきだと思うのだが、
それをしなかった。

問題を避けてオペレーションをやりたいのであれば、
最初から問題が起きないように留意してオペレーションをやるべきで、
入口にアテンドがいないなんてことは、1秒たりともあってはならないはずだ。


そうだ、友人の笹川がこんなことも言っていた。
笹川がフェヤーモント・ホテルでキャプテンになったばかりの頃の話だ。
ある朝、もう朝食も落ち着いた時間にオーナーが駐車場に入ってくるのが見えた。
そしてベンツから降りてきたのだった。

オーナーには特別なジュースを絞って出す必要があるのだが、
それを他のスタッフに説明しているよりも
自分がやった方が早いと思った笹川は、オーナーがダイニングに現れるまでに、
早業でジュースを絞ってしまい、入口に戻ろうと考えた。
しかし、オーナーの登場の方が若干早く、タッチアウトとなった。

「シャシャガワ!!」と大声で呼ばれ、
「お前は何があっても、ここを離れてはイカン!」
と、もう本気も本気、頭から湯気を出して怒られたそうである。
そのくらいに入口にアテンドは重要なのである。

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ササピー
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