2024新作落語台本募集 結果
新作落語台本募集の結果が発表されました。結果は落選。上位15名にも選ばれなかったので根本的に変える必要があると感じました。
以下、応募した台本を掲載します。
タイトル『初初もうで』
神社の境内で、参拝に来た人が神主に話しかけるというのが話の方の幕開けでございます。
客 「あのう」
神主「はい?」
客 「この神社のお偉いさんですか?」
神主「いえ、私は神主ですが」
客 「そうでしたか。すいませんが私に初もうでのやり方を教えていただけないでしょうか?」
神主「えっ?」
客 「私、今までお参りをしたことがなくて。これが初初(はつはつ)もうでなんです」
神主「初初もうで?」
客 「なのでやり方を教えてください」
神主「いいですよ。ところであちらの鳥居から入られたと思うんですが、礼はされましたか?」
客 「え?」
神主「できれば神様に向かって一礼していただいた方が良いかと」
客 「してませんでした!神様すいません!(頭を下げる)アーメン」
神主「それだと別の神様になってしまいます。ではお参りの前にこちらの手水を」
客 「飲み干せと」
神主「いえ、手を清めてください」
客 「(土下座する)申し訳ありません!」
神主「えっ?」
客 「間違いだらけですいません!もうで慣れてないもので!」
神主「頭を上げてください。少しずつ覚えていただければ結構ですから。落ち着いてください」
客 「(急に落ち着く)分かりましたお参りするところまで導いてください」
神主「切り替え早いですね。ではこちらへ」
客 「この箱はなんですか?」
神主「賽銭箱です。まずこちらにお賽銭を入れます」
客 「カードでよろしいですか?」
神主「よろしくないです。細かいお金でお願いします」
客 「五百円玉でもいいですか?」
神主「それは少し縁起が良くないですね」
客 「えっどうして?」
神主「一番高い硬貨ですから、これ以上は効果がないということです」
客 「プッ!アハハ!アーハハハハ!・・・(真顔で)どういう意味?」
神主「今の爆笑はなんだったんですか?」
客 「お賽銭を入れたらどうすればいいんですか?」
神主「次は二礼二拍手一礼をします。2回お辞儀して、2回手を叩き、お祈りをしてもう1回お辞儀をします。ではどうぞ」
客 「(高速で二礼二拍手一礼する)ペコペコッパンパンッペコリッおわりっ!」
神主「勢いがあって大変けっこうですがもう少しゆっくりでいいですよ」
客 「願い事もしましたし次行きましょう」
神主「あの短時間でよくできましたね」
客 「これは何ですか?」
神主「おみくじです」
客 「あぁあの、一生の運勢を占うという」
神主「そこまでじゃないです。一年の運勢を占いますので」
客 「やってみます(くじを引く)大凶だ!しかも恋愛運悪い。あーあ」
神主「どうされました?」
客 「実は私、人生で初めて恋をしまして」
神主「えっそうなんですか?」
客 「この初初もうでで初初恋を実らせたい!そう思って来たんです」
神主「そこは初恋でいいのでは?」
客 「でもダメかぁ」
神主「そう肩を落とさないでください。運勢が悪ければくくってしまえばいいんです」
客 「首を?」
神主「おみくじです早まらないでください。何でしたらあちらで絵馬を書いてはどうですか?」
客 「絵馬?」
神主「願い事を木の札に書くと願いが叶うんです」
客 「そんな救済措置があるんですね!では行きましょう」
神主「しかし恋とは素敵ですね」
客 「はい。私は食って寝て食って寝て老いて死ぬだけの人生だと思っていたんですが。ある日サボテンを買いに行ったとき、対応してくれた店員さんに一目ぼれして。以来あの方に会うために毎日サボテンを買いに行ってるんです」
神主「毎日とはすごい」
客 「もう部屋中サボテンであふれ返ってしまいまして。砂漠のオアシスもかくやという状態で。今日も3つ買い足しました」
神主「会うためだけにそこまでしますか」
客 「それぐらい素敵な方なんです。私に生き写しで」
神主「生き写し?その方でしたら」
客 「ご存知なんですか?」
神主「えぇ。少し前にこちらにいらしてました。お顔が、特徴的だったのでよく覚えています」
客 「ここに来てた?何をしてたんですか?」
神主「確かこちらで絵馬を書いていました」
客 「この絵馬ですか?」
神主「はい。1つしかありませんからあの方が書いたものでしょうね」
客 「なんて書いたんだろう気になるな。でも勝手に読んだら神様に滅せられる!」
神主「そんな神罰下らないから大丈夫ですよ」
客 「じゃあ読んでみます。私のことが書いてあったらどうしよう。(絵馬を見る)気持ち悪い男に付きまとわれて困っています。(泣きそうな声)どうかあのストーカー野郎をどうにかしてください」
神主「あぁ・・・」
客 「・・・そう書いてあったらどうしよう!」
神主「あっまだ読んでなかったんですね。きっと大丈夫ですよそこまで書いてませんよ、多分」
客 「よ、読んでみます。(絵馬を読む)私には好きな人がいます。でも恥ずかしくて声をかけることができません。神様、毎日サボテンを買いに来るあの人に告白する勇気をください」
神主「毎日サボテン、ってことは」
客 「長文失礼しました。初初もうでで、もうで慣れてないもので。(読み終える)これって」
神主「両想いですよ!どこかあなたに似た空気も感じますし」
客 「勇気が出ましたありがとうございます!(神主に向かって高速で二礼二拍手一礼する)ペコペコッパンパンッペコリッ!」
神主「二礼二拍手一礼しないでください。私は神様じゃないんで」
客 「(走り去る)よしっ告白だー!」
神主「行っちゃった・・・告白上手くいくだろうな。今日クリスマスだし」