急に寒くなってきた10月の平日、19時。いつものように帰宅すると、玄関前に百足がいた。 少し驚いたが、まあいいや、と思う。僕は疲れていた。 誰が見ているわけでもないがちょっと大袈裟にため息をつき、スライド式の玄関を開けて室内に入ろうとしたら、あろうことか百足もモゾモゾ入ろうとしてきた。 これは流石に看過できぬ。僕の家に入っていいのはかわいい女の子だけだ。 自分の体が室内に入ると同時に、思い切り扉を閉めた。ガシャン、と大きな音が鳴り、水を打ったような静寂。床を注意深く見渡したが
僕が住んでいる福島県の大熊町は、震災前、梨が有名だったとのこと。 言われてみれば、国道沿いに「選果場」の案内板があった気はする。 しかしながら、正直、梨と言われてもピンとこない。もちろん、梨は食べたことがある。味も想像できる。でも、普段よく食べるフルーツではない。僕にとってのリンゴやみかん、バナナとはまた別の、マイナーフルーツである。だから、美味しい梨というものがイマイチ想像できぬ。どんな味だったのだろう？興味がある。 でも、その梨は（現状、少なくともこの町では）もう食べ
きらっ、と急に目の前が照らされて、僕はビクッとした。 街灯がほとんどない、真っ暗な町を1人で歩いていると、こういうことがよくある。 灯りの正体は車だった。僕は歩道をとぼとぼと歩きながら、なんかちょっと緊張しつつ歩く。何事もなく、車（パッと見た感じ、恐らくあれはタント）は僕を追い越していった。 ロッコクー国道6号線の「中央台」交差点から、少し西へ。福島県の大熊町に、4月から僕は住んでいる。 福島県大熊町。福島第一原発がある町だ。僕は関東から、この場所へ移住してきた。 職場など
