認知言語学から見る日英の違い〜日本人と英語母語話者はこうも見方が違う〜
皆さんこんにちは。今日は、おすすめのYouTube動画から紹介したいと思います。その名もKevin’s English Roomというチャンネルです。知っている方も多いのではないでしょうか。ネイティブのケビンさんが、実際にネイティブ間で使われる英語表現を紹介してくださり、それに対して2名の日本人の方が適切な解説やコメントをしてくださる、そんな有意義な動画となっています。ぜひ、ご覧ください😎
何より彼らのトーク力というか、仲間間の絆というか、いや全てが見ていて癒されるのですが、時々ショッキングな発見もあります。だって、今まで何気なく使っていた英語表現が実はマイナスの効果があったとか、OMGですよ。🫢
しかし、日本語にも日本語らしい表現があるのです。例えば、「本は●●で買ったよ〜」という自然な日本語も、日本語学習者からしたら、
「What?本『を』でしょ?あなた間違ってるよ!え?間違ってない?目的語、『は』で表すの、not mistake? Why Japanese Peopleeeeee!!🤦♂️」
てなりますよね。そりゃ、英語らしい英語というのに対して我々が混乱することもあるでしょう。
では、どうやってその英語らしさに近づくのかー。英語表現にたくさん触れるのがベストでしょうが、日本のように英語に触れる機会がもっぱら授業内や自主学習内に限定されがちな環境ではなかなか難しいところです。(公用語ならともかく)
八方塞がり?いいえ。認知言語学が一つの光として、この問題に明かりを灯すでしょう。今回は5つの日英の『ものの見方』の違いを紹介します。
① 日本語:自動詞文 vs 英語:他動詞文
まずは、以下の日英比較を見て、どんな違いがあるかを考えてみてください。ヒントは見出しそのものです笑
日本語:この紋所が目に入らぬか。ここにおわす御方をどなたと心得る。
英語:Listen to me. Can’t you see this inro or seal case? Who do you think the person standing beside me is?
(日本昔話 Old Stories of Japan 『水戸黄門』)
日本語は、紋所について「目に入らぬか」と言っていますね。自動詞が使われています。すなわち、「見る主体」ではなく、光景が目に入ってくるという「状況の変化」に注目しています。「何が起こった」、「何がどうなった」、といったことに注目する結果、自動詞文になる傾向にあるのです。
一方、英語はseeという他動詞を使っています。「見る主体」に注目するからなんですね。このように、英語は「誰が(何が)何をした」という人の行為に着目する傾向にあるので、他動詞文が使われやすくなります。
※自動詞文もありますが、全体の傾向としては他動詞文が多い。
② 日本語:あるなし vs 英語:have
これは、見出し通りですね。例文を見てみましょう。
🙎♂️「今日デートしよう?」に対して:
日本語:熱があるのよ〜。
英語:I have a fever.
先程、①で日本語は状況に注目し、英語は人に注目すると述べましたが、②も同じ考え方です。日本語は状況の中から一部分を見る傾向があるため、状況内に対象が「ある」か「ない」かに言及するのに対し、英語は、誰が持っているのか全体的に見る傾向にあるので、他動詞のhaveが使われます。
③ 日本語:動詞志向 vs 英語:モノ志向
さっそく、例文を見てみましょう。
日本語:手首が折れてる。
英語:Oh, dear, it’s a broken wrist.
(『ハリーポッターと賢者の石』)
日本語は「折れてる」というように動詞が使われているのに対し、英語はそれをa broken wristという名詞で表しています。日本語は基本的に状況の中から物事を見るので、状況の変化はそのまま躍動感を持って動詞で表されています。対して、英語は人に着目し、かつ、状況の外から物事を見る傾向にあるので、結果、人が着目するモノに焦点が当たるのです。これはちょっと複雑な見方かもしれないですね。
④ 日本語:過程志向 vs 英語:結果志向
日本語:列車が来たよ。
英語:There's a train coming.
日本語は、出来事の過程に着目する一方、英語は過程ではなく結果や状態に着目する傾向にあります。したがって、日本語では列車がやって来ている過程に着目した表現になるのに対し、英語では結果状態をbe動詞で表すのです。
⑤ 日本語:動詞志向 vs 英語:前置詞志向
日本語:彼は丘を降り、橋を渡って、野原を通ってそのチャペルへ行った
英語:He walked down the hill across the bridge and through the pasture to the chapel.
(松本曜 1997:134)
日本語は、状況の中から時間の流れを経験するかのような動的な表現をするのに対し、英語は外から静止画を捉えるような静的な見方をする傾向にあります。よって、日本語が動詞で表す一方で、英語では前置詞で表されることが多くあります。
まとめ
まとめとして、日本語は状況の中から物事を描写する傾向にあるのに対して、英語は状況の外から鳥瞰図的に物事を描写する傾向にあり、それが日本語らしさ英語らしさにつながるのです。認知言語学のこの見方が、英語らしさに近づくヒントになれば幸いです。
参考
※学部生のころの資料を参考にさせていただきました。
松本曜(1997)「空間移動の言語表現とその拡張」『日英語比較選書 空間と移動の表現』研究者.
Old stories of Japan 日本昔ばなし 『水戸の黄門さま』
http://kudos910.web.fc2.com/oldstory/mistook,on2.pdf
Harry Potter and the Philosopher’s Stone(2001), [Video] United States.