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PEANUTS
私のいる学校では「悩み」というものがいつも生徒たちの一番近くにある。
「安心できない」「不安」「心配」。。。これらが空気のように彼ら彼女らを取り巻いている。
私の勤務する高等学院の連携している通信制高校は 単位制の学校である。もちろん全日制とは違ったメリット・デメリットがある。毎日同じ時間に登校し、学校の時間割に添って生活する全日制と違って 通信制は月に10回ほどのスクーリングとレポート、そして年に数回の定期考査で単位を取っていく。病気や登校しにくい人でも、自分のペースに合わせて高校卒業に向けて単位を取っていくことができる。
生徒たちの多くは、さまざまな理由で全日制ではなく、わざわざ通信制を選んで来た子たち。
そこに大きな理由がある。
私は国語の先生なので いつもこの授業の時にみんなが何かを感じるのがよく分かる。
それは 現代文の「安心について」という教材。(東京書籍 新編現代文B)
有名なアニメ スヌーピーの登場人物ペパーミントパティとチャーリーブラウンの会話から この物語は始まる。
「安心って何だと思う チャック?」
「安心ねえ?」
「安心ってのは車の後ろの座席で眠ることさ!」
「君は小さなこどもで お母さんやお父さんと一緒にどこかへ遠出したとする。辺りはもう夜だ。君たちは車でうちに帰るところさ。そのとき、君は後ろの座席で眠れる。」
「君はなんにも心配しなくていい。お母さんとお父さんは前の座席にいる。そして心配ごとは全部引き受けてくれる。なにもかも面倒見てくれる」
「ほんとにすてきね!」
「でもこれはいつまでも続かないよ!突然君は大人になる、そしてもう二度とこういうぐあいにはいかなくなるのさ!」
「突然それは終わりになる、君はもう二度と後ろの席で眠れなくなる!もう決して眠れないのさ!」
「もうできないの?」
「絶対にできないよ!」
急に不安にかられたペパーミントパティは言う。
「私の手をしっかり握って チャック!!」
安心というのは車の後ろの席で眠ること。しかも、それは長くは続かない。人間は大人になる。そして前の席に行かなければならない。
これは避けることのできない運命なのであり、後ろの席で眠ることは もう決して「絶対」に「できない」のである。
未来がまだはっきり見えてこないころ 子どもたちはいろいろな不安にかられる。
私の受ける生徒からの相談も ほとんどが「次の場所」への不安。「新しい環境への不安」である。
未来は誰にも想像できない。
けれど、障害を抱える本人やご家族にとって 高校卒業したその先は全く未知の世界になる。
「今すぐあれもこれもやらなければ」と焦ってしまい、気持ちが疲弊して、まず何から相談していいのかも分からなくなってしまう。
一番良いのは学生の間に人とつながりを持っておくこと。そして、普段から自身の特性について 性格 配慮など必要なことを細かく記録しておくこと。自分のできること 苦手なことを人に伝えれるようにしておくだけで十分だと思う。
旅行という目的を持って旅に出たとする。その瞬間から 旅は始まっているのであり 行きたかった目指していた場所に着けなかったとしても 旅という目的は達成したことになる。
すべての子どもたちに言いたいのは 今 ここにいる瞬間も みんなは目的を果たしているのだから 何も心配しなくていいよって。
私にとっての安心とは 10代後半のものとは全く違って「大切な人たちが元気でそばにいる」というものになった。
これから大人になる今の高校生とは 安心や不安は全く別のカタチになった。安心は年齢や境遇や時代によっても変化するもののようだ。
けれど一度通った10代のころの不安は分かる。
誰もが かつてはみんな子どもだったのだから。だから、その不安をみんなで共有したい。特別な事情があっても、それに共感して寄り添い合いみんなで知恵を絞って今を安心したい。そんな場所をこれからも作っていくことが私の旅の目的地でもある。