キワドイひとたち
今回の東京オリンピックで一番興味をそそられたのは、男子の高飛び込みだった。
台の上からプールへ飛び降りてからの、たった2秒弱間に、ひねりや回転、入水時のしぶきの上がり具合で技の美しさを競うスポーツである。
飛び込み台で構えのポーズをすると、選手の顔や姿がアップになる。
カメラに映し出された選手は誰も判を押したように、ビキニの水着、シックスパックのお腹、タトゥー、肌色のテーピング、そして、時には白い包帯を巻いている人もいた。
特にタトゥーをしている人が多く、審査員まで腕に入れているのを見てハッとした。
「あの人たち、せっかく日本に来ても、温泉やスーパー銭湯に入れないのね(元々コロナ規制で入れなかっただろうけど)」などと考えてしまった。
たまにタトゥーがない選手が登場した際には、「あら、この選手には珍しく彫りものがないわ」なんて思っていると、構えポーズで手を広げた途端、腕の内側や、真っ逆さまに落ちて行く脚に立派なアートが描かれているのが見えた。
勿論、日本のエースで、まだ中学3年生の玉井陸斗選手や、ウクライナの13歳のセレダ美少年選手にはタトゥーが無い(ことにホッとした)。
それにしても、一体誰が高飛び込みの競技を考えたのだろう?
V6の岡田准一君が「東京タワー」という映画で、不倫相手の夫に高飛び込み台から落とされるシーンを思い出したが、自ら飛び込むには、あまりにも台が高すぎる。
高飛び込み台から下のプールまで10メートルもあるのだが、それはビルの3階から飛び降りるようなもの。
時速で50キロにもなるなら、入水時のダメージも相当のものだろう。
だから、身体中にテーピングや手首に痛々しい包帯があっても納得だ。
そんな危険な条件が揃った競技で、解説者は「飛び込み」「入水」と、度々口にする。
これらの言葉を聞くと、パシールは、どうしても違うモノを想像してしまう。
あの飛び込む瞬間に選手の脳内には、「次はこうして、その次はこうして、最後はキレイにフィニッシュ!」みたいな映像が流れているのだろう。
だが、もしも事故を伴うような飛び込み方をしてしまった場合、その脳内映像は、いつもと同じモノなのだろうか?
昔、シブがき隊のやっくん(薬丸裕英)が、番組の収録中に大ケガをしたことがあった。
彼は5メートルの高さから、コンクリートの地面にバイクごと落っこちたのだ。
やっくんは、その時のことを、「今までの人生が走馬灯のようにザ~っと流れてきました。でも、時間から言えば、たったの数秒だったらしいんです。」というようなことを言っていたと思う。
であれば、いつもの飛び込みが、手元足元が狂った危ない飛び込み方になった場合、選手は違うビジョンを見ることもあるのではなかろうか?
加えて、飛び込みの魔力に取り憑かれ、フツーの人間には到達できないヤバい領域に踏み込んでいる人たちには、ほかにも厄介な事件が起きるらしい。
入水時の衝撃で水着が脱げてしまうことがあるというのだ。
それこそ放送事故を招く、ギリギリの競技である。
高飛び込みのアスリートは、高さや大けがや死の恐怖を克服し、芸術性を極限まで追求するキワドイひとたちという結論に至った。
🌟本日はmarbleさんの写真を使わせていただきました🐶💜
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