君の名は。
『君の名は。』を観てきた。
『秒速5センチメートル』が好きだったのと、アニメーションが綺麗で可愛いらしく、RADが音楽担当で関わってるから興味はあった。わざわざ映画館まで観に行かなくてもなーって感じだったけど、なんかめちゃめちゃヒットしてるっていう。それならこの目で確かめてやるよ的なミーハー心で観に行ってきた。(そんな人多いだろうな。)
男女が入れ替わってお互いの生活を過ごすっていう定番もののプロットから、2時間もどう展開してくんだろって思ってたけど、構成や展開は見事で、寧ろその導入部の方が三十路過ぎたオッサンには退屈だったほど。
詳しい展開は書かないけど、てか、展開の速さと要素の色んながありとあらゆる詰め込まれてて、冷静に頭で分析させる間もないほどにめまぐるしく物語は進んで、普通ならここで泣け!みたいな解り易いピークがあるもんだけど(この話ならきっとあそこの場面なんだろうけど)、どこがピークでもおかしくないくらい、一定の緊張感がずっと保たれてる、ずっとピークが続いてる感じだった。ずっと心が満たされてるようで、水の溜まり切った水槽を持ったまま、駆け足で主人公と一緒に駆けてるような。中の水がたぷんたぷんてなるから、ずっとこぼさないよう大事に抱きかかえてるイメージ。(途中思わずこぼれる場面もあったけど。)
でもこの手の類のアニメ映画って、結構一般層越えてオタク路線というか。ジブリやテレビアニメの劇場版とか、あと引き合いに出すなら細田守作品とか、いわゆる親と観ても安心のファミリーものじゃなく、この作品は、涼宮ハルヒの消失とかあと具体名思い出さんけど(そんなに詳しくないので)コアなアニメファンに向けられたジャンルに近い気がする。ネタバレになるけど、タイムリープとか彗星接近とか後々伏線を回収していく展開とか。そもそも新海監督作品てそんなにメジャー感なかったけど、今回制作委員会付いたからか、ドメジャーになってて新鮮だった。でも口噛み酒とかさらっとやってたけど、フェミリー向けではないよね。ヒロインの乳揉むはパンツ見えるだは、バケモノの子にはなかった(笑)。
あと何と言ってもRADWIMPSが作品とがっぷり四つで音楽担当してたのが大きいな。映画作品にしては珍しくオープニングテーマがあるし、これ以上ない場面で主題歌がインサートしてくる。サントラ聴いても映画内と同じ尺で主題歌も収められてるから少々驚いた。よく映画がよかったから帰りにサントラ買って帰ろうかなとか思うけど、音ばっかりのやつとか中々聴かないよってなるから結局買わない。でも今回未発表の新曲が4曲も入ってて、全編本人たちが担当してたら、そりゃファンなら嬉しいよなあ。サントラってかRADの8thアルバムていう扱いだし。アルバム聴いてると映画の冒頭から場面が一気に流れ込んでくる。こうした試みも大成功だと思う。
物語の余韻としては、高校から大学、社会人になる前提辺りって、結構皆無茶やった思い出があるだろうし、色んなことに一生懸命でガムシャラだったけど、大人になった今となればそんな無茶なんて二度とできない。保守的にならざるを得なくて、そのすべてなんていちいち覚えてない。その頃が少々羨ましくもある。でも覚えてなくても、両手からキラキラ零れ落ちそうなくらい、なんだか輝かしいものだったのは憶えてる。そんなことを思い起こさせる話なのかなって思った。
あの頃は、仕事にしても、彼女にしても、運命の出逢いがどこかに待っていて、目に映るもの全てがキラキラ輝いて見えるような、そんな出逢いがこの先きっと待ってるんだって、どこかで探しながら生きていた。大人になってしまえばそんな奇跡は滅多に起きなくって、寧ろ決められた運命を探すより、目の前に起きた出来事が運命だと受け入れながら生きていく方が賢いことに気付いてく。勿論人それぞれの生き方なのだろうけど、出会うべくして出会うもの以外とは出会わないし、仕事も自分に合う合わない、やりたいやりたくないとかいう前に、そこで働いてる偶然が既に必然だったと言い聞かせてる。仮に運命の人、なんてものがいたとして、その人と幸せに結ばれるとも限らないし。それが運命だったと認めるしかないのかしら、なんて思いながら。
“運命だとか未来とかって 言葉がどれだけ手を
伸ばそうと届かない 場所で僕ら恋をする”
今回いい場面で流れる、個人的にここの歌詞とメロディーが良質すぎて頭から離れないスパークル(movie ver.)だけど、最初から(movie ver.)て付いてるとこがニクイ。じゃあ別バージョンがあるの!?って心理に掻き立てられるじゃん。(来月発売のニューアルバムにちゃっかり(original ver.)収録されてた。)
観終わった後はまあ普通。いい作品だったけど、こんなにヒットするもんかな~。学生が好きそう。自分が大学生ならドストライクだったろうけどなあって感想だった。けど数日たっても余韻が消えない。そしてああだこうだとネットで人の感想が気になったり、考察してる人のサイト覗いたり、「彗星 糸守」で検索したり( ̄□ ̄;)、観た人と語りたくなる映画だなって思った。
このご時世口コミ評価がその人気を一気に加速させる。口コミなしにはヒットは有り得ない。それが元々の作品の良質さと、新海監督特有の映像美と相まって、更にRAD人気も後押しして、このヒットに繋がってんのかなあって思った。個人的には音楽と作品がガチで向き合って、お互いの相乗効果を引き出す真摯な姿勢に最も感動した。いつの時代だって、本気じゃなきゃ伝わんないもの。
(2016.10.25記事より一部加筆修正し転載)
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