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石畳のはなし

~コバンザメのシチリア滞在記~

チェントロ(centro)という街の中心エリアに住んでいる。
多くの古い建物が外観はそのまま、居住部分をリノベーションして店舗や住宅、ホテルとしてそのまま使われているので、街を歩くと歴史の風が吹き抜ける。

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メインの車道は舗装されているが、歩道部分は石畳がそのまま残されているところも多いのがこのエリアである。石畳を歩くと靴の底からも歴史の重みが伝わってくるなあと、感慨深く思ったのは最初だけ。とにかく歩きにくいのだ。

多くの人に踏まれた石畳は、長い年月を経て表面が磨かれている。もとはごつごつした岩だったかもしれないが、黒光りしているところもある。そんなところは雨が降った後はとても滑りやすい。片足が滑ってバランスを崩したら、ふんばろうと思った反対の足も滑ってしまったという話も聞いた。
石畳の上では早歩きをしないのが得策である。

ところで石畳の石ひとつひとつは大きさも形も微妙に違う。電線や水道管が地面に埋まっているこの国では、工事のときどのように石をはがすのだろう。そう思っていた矢先にちょうど水道管工事に出くわした。

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重い石のブロックをひとつひとつをはがしていくのは大変そうだ。

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なるほど、石のひとつひとつに番号をふっておくのか!とてもシンプルで分かりやすい、昔ながらのやり方だ。手書きの文字と白く枠で囲われた石畳を見ると、シチリアの熱い男たちが地面と大真面目に向き合っている様子が思い浮かばれて、思わず一人笑いをしてしまった。


そしてまた石はもとどおり埋められ、その上を人が歩いて研磨させていく。
工事直後は少し浮いているように見えた石畳も、数日すると何事もなかったように街にとけこんでいた。




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