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サボテンの実はほんのり甘くて痛い
~コバンザメのシチリア滞在記~
初めてシチリアの地に降り立ったのは8月末だった。
空港に降り立ち市街地に向かう途中、街路樹のようにあちこちウチワサボテンが植えられている(あるいは勝手に生えている?)のに驚いた。しかもどのサボテンも、緑色の大きなしゃもじのような形の縁の部分に、カラフルな実がぽこぽことたくさんついている。
その実がまさに夏から初秋が旬、食べられると聞いてさっそく買ってみた。
縦に割ってみると、柔らかい果肉に小さい種がたくさん埋まっている。この一粒一粒が相当固いのだ。数粒のブドウの種ですら苦手とする人は多いが、こんなたくさんの種入りの実をどうやって食べるのか。
現地の友人に聞くと、実をスプーンですくってやわやわと噛み、種ごと飲み込むのだそうである。恐る恐るすくって口に入れると、これがなかなかさわやかで優しい甘み。
実の色ごとに味も異なる。黄色っぽいのは涼やかで、赤いのは南国フルーツのような濃い甘さ。オレンジはその中間くらい。たくさんの種を一度に飲み込むのは少々度胸がいるが、それでもまた次のひとすくいに向かいたいと思う美味しさである。「初めてのシチリアの味だね」と食後すぐはご満悦だった。
が、なんだか指先がちくちくする。痛いようなかゆいような、ちょっと毛虫に触った時にも似た痛さ。ふいに友人のつけ足した言葉を思い出した。
「外側には細かい棘があるから気をつけてね」
そうだ、すっかり忘れて、素手でがっちり押さえて包丁を入れてしまった。ビニール手袋を使ったり、ナイフとフォークで皮をむいてしまうのが良いらしい。激痛ではないが、翌日になってもしばらく痛がゆい感じが続き、何度も手を洗って棘を洗い流したのだった(自己流)。
もう一点注意すること。実はこの棘、実をのせていたお皿にもひっそりおちているのである。後日食器洗い中に、皿の上に落ちていた棘に再び攻撃された。
ウチワサボテンの実を食べてみたい方、実の扱いにはご注意を。