須賀川特撮アーカイブセンターに行ったら特撮人生更新した話。
こんばんは。
たまには普通の記事も書くっつったろ!
さて、今日は福島県須賀川市にある「須賀川特撮アーカイブセンター」に行った時のお話を、僕と特撮との関係性も混ぜ込みながらご紹介したいと思います。
写真もたくさん載せてますので、よかったらお付き合いください。
序論:ウルトラマンとの出会い
(アーカイブセンターについてだけ読みたい方は飛ばしてしまっても大丈夫です)
普段から僕の言動をよく見てくれている方ならお分かりの通り、僕は特撮が大好きです。
ただし、その嗜好はいわゆる「仮面ライダー」「スーパー戦隊」に限ったものでした。
ところがひょんなことから僕は昨年末以来少しずつ「ウルトラマン」シリーズを見始めています。
直接的な変身ヒーローを愛してきた僕からすると、融合とも召喚ともつかない(みたいな)その変身システムはなんとも釈然とせず、歴史も長いから、どこから手をつけていいかもわからずずっと横目に見流すだけの何年間を送ってきました。
が、巷で「ウルトラマンZが面白い」と話題に。
当時の現行作品だった「Z」に、そういうことならと僕も食いつき、結果夢中になってしまった僕。
クセのある、しかし真っ直ぐで明朗なキャラクターと、新参者でも古くから愛されているウルトラマンや怪獣の個性にすぐコミットしやすいシナリオに、するするとウルトラの沼へ引き込まれ、気づけば僕は「タイガ」「ジード」「オーブ」「X」などなどどんどん過去作を漁って行きました。
そしてふと振り向いた時、僕の故郷・福島が、そのウルトラマンを世に放った円谷英二の故郷でもあるということに、改めて気づいたのでした。
僕は特撮のほんの一角しか知らなかった
須賀川市内の怪獣のオブジェも見たことがあるし、市役所やサービスエリアにいるウルトラマンたちにも会ったことがあったけど、自分がウルトラマンを見てこなかったばかりに「ライダーだったらもっとよかったのにな」みたいな無粋なことばっかり考えて、なんか居るな〜程度で流していました。
上にあげたような新しめのウルトラマン、いわゆるニュージェネレーションシリーズばかり見てきただけでも、初期のウルトラ6兄弟や平成初期のウルトラマン(そして怪獣)のことはよく知れる仕組みになっていて、そうしたオブジェにもだいぶ心の距離が近づいて行きました。
そんな中目にしたのが、須賀川特撮アーカイブセンターの存在でした。
それもそのはず、2020年11月にできたばかりなんですね。
かつて特撮撮影の現場で実際に使用されたミニチュアやフィギュアを全国から集めて保管・展示する施設で、その数はなんと1,000点以上。立ち上げには『エヴァ』などで有名な庵野秀明監督が特撮保存への強い熱意をもって筆頭となって携わったのだとか。まさしくオタクたちの宿願たる特撮補完計画。
その熱をまずもって感じさせるのは、この外観。
う〜ん、この芳ばしいマティスフォント。
もとは岩瀬の市民施設だったようで。
中は二階構造になっていて、一階は特撮業界の立役者たちが直書きしたサイン、出版社からの特撮書籍の蔵書、センター設立までの歩みをまとめた資料映像、飛行機ミニチュアと背景絵…
サインの中には東映特撮の元締めと名高い白倉伸一郎Pの名前も。これは個人的にちょっとウワアってなりました。
シン・ウルトラマンの出迎え。第一印象は「ほっせえ」。
(公開延期に伴ってセンターにいられる時期も長引いたんですって。)
そして奥の方へ進むと、全国から集まったミニチュアの保管庫。
円谷監督の実質の遺作と言われる『日本海大海戦』で使われたという、どうやって運んできたのかも不思議なくらい大きな戦艦には、(写真では見てとれないですが)実際の戦闘すら思わせる錆や土埃が見られました。
東京タワーをはじめとする建物セットも精巧でリアルな人の存在を思わせるものでした。たくさんぶち壊されてきたことだろう…。
そして実際に人が空を飛ぶ演出を撮るのがまだ難しかった時代に飛ばされていたフィギュアや、ウルトラマンのご尊顔。
模型とは違うけど、撮影の模様を写したパネルや、『ウルトラマン』の科学特捜隊の基地断面図も展示されてました。ただの展示施設にとどまらない、愛ある空間だと感じました。
「特撮が好き」と豪語してきながら、世の中に多くある特撮のうち、手っ取り早くてビッグコンテンツでポップカラーな「ライダーと戦隊」で今まで満足し(散々言ってるけどライダーと戦隊も大好きだし素晴らしいんですよ)、それ以外の特撮には目も暮れてこなかった、ある種のファッションオタクだったということにここにきて気付かされ、
そして今までに感じたことのなかった興奮と感動に襲われたのでした。
そしてそれが、特撮好きな自分の故郷に建っている。
イタリアンが好きでも、その発祥の地を故郷だと豪語することは、僕らではどう頑張ってもできないのに、すごいことだと思いませんか。
ちなみに二階には実際に使用されたフィルムカメラや機材、「いだてん~東京オリムピック噺~」(NHK/2019)で使われたミニチュアセット、特撮監督・三池敏夫監修のミニチュアセットがドーンと鎮座。
俯瞰して眺めるのも、細部に目を凝らすのも楽しい。館内はほぼ全域においてスマホ撮影がOKなので、フレームに収めると特撮世界が切り取れる。カメラマン的な楽しみ方もできるときたわけです。
映像室もあり、『巨神兵東京に現わる』が上映されていました(時間の都合が合わず視聴はできませんでした)。
「文化」と呼ぶのは、なんだか不思議だけど
ことほど左様に、須賀川特撮アーカイブセンター、特撮ファン垂涎の聖地でした。
僕みたいな余白のある人間でも、本当の特撮の緻密さ、血の滲む歴史の歩みを目の当たりにし、心に新しい火を灯してくれる、まさに「特撮人生更新」させてくれる場所でした。
そして、現に行き場を無くしつつあるこうした資料の展示場所が保持され、その迫力やエネルギーをそのままに、いつでも鑑賞することができること自体、素晴らしい取り組みだなと思いました。
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館内では、資料や映像でも、「特撮文化」という言葉が頻出していました。
生まれた時からCG技術で変身する等身大ヒーローばかりに囲まれていた僕としては、センターに保存されているような特撮黎明期の映像を実際に目の当たりにしたことはほとんどありません。自分で書いていてもはっとする事実ですが。
きっと今の特撮(ひいてはマーベルやDCをはじめとした海外のもう本物としか思えない超高精細CG)に目の慣れてしまった僕らには、そうした古き良き特撮映像を楽しむ目は、人によってはもしかするともうないのかもしれません。
そんな「過去の遺産」としての悲しいニュアンスが、ことによると「文化」という言い表し方には乗ってしまいかねないなという印象もあります。心の距離が不必要に開いてしまう、隔たりが生まれてしまう、というか。
それでも、このセンターで目の当たりにした資料に圧倒され、心を奪われたことは事実で。
あそこにあったありとあらゆるミニチュアが、大量生産ラインでも3Dプリンティングでもなく人の手で作られたということ、それがさらに映像になって大立ち回りを繰り広げていたことを考えると余計に。
そしてこうした「特撮文化」は、思った以上に最新作にも地続きで受け継がれているイズムでもあるように思います。
「文化」という言葉でパッケージしてしまうことへの違和感の正体はここにもあったのかもしれません。
「ウルトラマンZ」を見ていて、こんなにミニチュアにこだわったカット割やカメラ位置、描写を詰め込んでいるなんてと、それまでライダーや戦隊ではほとんど見たことのなかったまさに文字通りの「特撮」に触れたインパクトはかなり大きなものがありました(戦隊も巨大戦がありますが、元が等身大ヒーローであるということもあってか、やはり比較してしまうと明らかに異なる部分はあります)。
あれらのルーツはここにあるんだ、というのも、センターで肌で感じられたことの一つで。
だから、そのルーツとしてもああいった特撮資料の保存活動ってやっぱ大事なことなんだな、と再認識することもできました。
自分自身にそうしたことへの関心やコミットがなかったせいか、恥ずかしながら保全・保護活動のたぐいに対してはなんにしてもその意味を実感できたことがあまりなく、そういった意味でもすごく貴重な学びになりました。こう書くとお堅い感じにどうしてもなってしまいますが。
とはいえ具体的に何か大仰な支援ができるわけではもちろんないですが、
センターを訪れて僕の特撮観がガラリと変わったこと、特撮愛や、特撮への畏敬の念が沸々と沸きたったこと、
でもってこれからも僕が特撮への関心とその枠組みをどんどん拡げ、より深く特撮を愛し続けていくだろうなあという確信をくれたような気はしています。
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ウルトラマンにちゃんとコミットできた今、改めて須賀川が面白くなってきました。
次はどこへ行こうかな。
皆さんもよかったらぜひ!
市民ではないがあえて言おう!
須賀川へおいでよ!!