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「自己肯定感」という言葉にモヤッと感を感じる理由

ここ数年、「自己肯定感が高まれば…」という前置きで語られることが増えている気がします。「○○がうまくいかないのは自己肯定感が低いから」「継続力の裏にあるのは自己肯定感」等、万能薬のように語られていることもある気がします。

2020年から日本の文部科学省が「自己肯定感を高める教育」を推進しています。また、アメリカでは「自己肯定感の向上を目指すプログラム」が多くの学校で導入されています。
確かに自己肯定感が高い状況の時というのは様々な効能があります。

精神的な安定感: 自分に自信を持つことで、ストレスや不安に対する耐性が高まり、精神的に安定しやすくなります。
②対人関係の向上: 自己肯定感が高い人は他者との関係を築くのが上手で、コミュニケーションが円滑になります。
③目標達成能力の向上: 自分の能力を信じることで、目標に向かって積極的に取り組み、達成しやすくなります。
④健康的なライフスタイル: 高い自己肯定感は、健康的な選択を促し、自己ケアの意識が高まるため、健康的なライフスタイルを維持しやすくなります。
⑤幸福感の向上:自己肯定感が高い人は、日常生活においてより多くの喜びや満足感を感じることができ、全体的な幸福感が向上します。

…が、しかし。
「自己肯定感ってそんな万能なの?」とか、「なんかうさん臭くない?」とか思ったりしません?

自己肯定感アカデミーの認定教室講師のくせに、「”自己肯定感”という言葉にモヤッと感を感じる」なんて書いてしまう自分もヤバい人のような気もしますが、自分の中で「自己肯定感」という言葉のアレルギーを攻略した考え方をお伝えします。


「自分を信じる」自信

「やればできる」という強い想いを持ち、「やり遂げられる自分」をイメージしてとにかくチャレンジ・・・・成功したスポーツマンのような空気感を感じません?

なりたい自分を宣言することで自信を持ち、自己肯定感が育まれるといいます。ただ、勘違いしてはいけないのは「宣言すれば叶う」のではなく、「宣言したうえで必要な努力を重ね、まわりへの感謝を忘れないからこそ叶う」んです。

ただ「わたしにはできる」「こんな未来が見えている」ではご利益のない系の新興宗教の教祖と変わらないですからね💦

ここが私のモヤッとポイントだったので、自己肯定感が高い状態というのは自分を信じる力があり、宣言したことを現実化する力を持った状態。でも、ただ「できるできる」と言っているだけで何も行動しないのは自我肯定感が高い状態と考えることにしました。

自己肯定感と自我肯定感の違い

「自我肯定感」というのはわたしの造語ですが、そもそも「自己」と「自我」にはこんな違いがあります。

  • 自己: 自分自身全体を指し、身体、心、感情、経験などを含む総合的な存在を意味します。自己は、自分がどのような人であるか、どのように世界と関わっているかという全体的な概念です。

  • 自我: 自我は、自己の中でも特に「自分自身」を意識する部分を指します。これは、自分の考え、感情、行動を認識し、他者との違いを理解する主体的な意識のことです。心理学では、自我は自己認識や自己評価に関わる重要な役割を果たします。

ニュアンスの違い、伝わりますか?
このニュアンスの違いが私のモヤッとをクリアにしてくれました。

どんな状況の自分でも、ありのままの自分を俯瞰して捉えている状態、そしてそれがマイナススタートだったとしても「こうなる」と思い描いたことに向けて積み重ね続けていけることが自己肯定感の高い状態。

自分の「こうなりたい」や「こうありたい」という気持ちだけを意識して、自分の現在の立ち位置や状況を棚上げしてただただ口だけの人。うまくいかない時にはとにかく言い訳ばっかして、何ならまわりのせいにして自分の責任をとれないようないい加減なのは自我肯定感が高い状態。

結局、いいことも悪いこともひっくるめて受け入れて、そのうえで進んでいこうという力なんだよなと感じませんか?

「ご自愛」ではなく「互慈愛」

自分の事も、まわりのことも見たうえで、お互いの得意なところを活かして、苦手なところは助けてもらえるような関係がお互いの自己肯定感を高める場所だよな…と考えた時に「互慈愛」という言葉が生まれました。

…こんな事ばっかり書いていると造語クリエイターみたいになっちゃいますが、自分でしっくりくる言葉がみつからなくて。

季節のあいさつや、けがや病気の相手に「ご自愛ください」って使いますよね?
自愛(じあい): 自分自身に対する愛情や思いやりのこと。自己に対して優しく接し、自分を大切にし、自己の価値を認めることを意味します。自愛は、自己ケアや自己尊重の一環として重要であり、心身の健康を維持するために欠かせない要素です。

これを自分の事のように相手も思いやれたら素敵じゃない?と思ったのが互自愛だったんですがここで「慈愛」を思い出したんですよね。
慈愛(じあい): 他者に対する深い愛情や思いやり。これは、他人の幸福や福祉を心から願う態度であり、他者の痛みや困難に対して共感し、支援しようとする気持ちを含みます。慈愛は、無私の愛とも言われることがあり、見返りを求めない純粋な愛情を表します。

自分の事も他人のことも、区別することなくお互いの幸せのために。
「互慈愛って素敵じゃん♬」…と気に入ってよく使う言葉になりました。

自己肯定感の波乗りを楽しめるのは互慈愛スキルの高い人

さて、なんで互慈愛の話になったかというと。
わたしの腹落ちした「自己肯定感とは」という定義に「互慈愛思考」は必須だからです。

自己肯定感の第一人者、中島輝氏が率いる「自己肯定感アカデミー」では「一喜一憂しなさんな」という言葉とともに自己肯定感は一定ではないということを伝えています。

体調が悪かったり、なんだかついてないなと感じることが続いた時は、誰だってちょっとネガティブな気持ちになります。逆に、色んな事がうまくいっている時や、ラッキーなことが続くとポジティブな気持ちになります。そういう気持ちの波や体調の波をうまく乗りこなしながら、ネガティブに引っ張られた時に少しでも早くメンタルをフラットに戻すこと、ポジティブな気持ちの時に調子に乗りすぎることなくフラットに戻せることが自己肯定感の波乗りを楽しむことに必要です。

ネガティブに引っ張られるということは物事のマイナス面を見れていることなので、そのマイナス面をどのようにカバーするかという備えを準備するための時間でもあります。でも、いつまでもネガティブに陥っていると何かをする気力もなくし、自身もなくし、結果何かをするのが怖くなります。

逆にポジティブに引っ張られている時は、物事のプラス面を見ているという事なので、色んなことにチャレンジする活力にあふれています。でも、マイナス面を見れていないこともあるので、大きな落とし穴にハマってしまったり、誰かに騙されたりすることも出てきます。

イイコトばかりではなく、悪いこともちゃんと視野に入れる。
自分の事ばかりではなく、まわりの関わる人の幸せもたいせつにする。
そういう「どちらも」大切にしようとできることが重要だと感じます。

古代ギリシャ時代から言われている「中庸」

古代ギリシャの哲学者アリストテレスが「中庸の徳」として提唱した概念、中庸(ちゅうよう)。過度や不足を避けて、適度でバランスの取れた状態や行動を指し、極端な行動や感情の中間を選ぶことが美徳とされています。

これ、先ほどまで書いていたことと似ていませんか?

どんな時も両極端を見ながら自分はすぐにフラットに戻ってこれる力。
最近の言葉だとレジリエンス力と表現されることもあります。

2000年以上前から言われているのに、まだ似たようなこと言ってる人間てどうなのよとも思いますが、それだけ奥が深く、明確な線引きができない分野なんだろうなと感じます。

「善か悪」「白か黒」みたいなことなら何も考えなくても答えを出せますが、「あいまい」「ケースバイケース」なことだからこそ、難しいのかなと思います。

でも、「善か悪」「白か黒」というような考えなくてもいいような判断は、今後AIが瞬時にしていくようになります。様々なことに存在するグラデーションの中から「これ」を選び取っていくことがこれからの人間への課題だと考えます。

自己肯定感は世界を救うのか?

みんなが正しく自己肯定感についての概念を身につけて、中庸力をもって日々取り組み、互慈愛スキルを高めていければ、間違いなく平和になります。
…それで平和にならないなら、ほかにどんな方法があるんだか教えてほしい。

でも、見分けが難しい自我肯定感に走る人が増えたり、情報過多の時代に乗っかって「これしないとマズい」みたいにたった一つの正解をみんなで追い求めているうちは救われない気がします。

少しずつではありますが、多様性を受け入れようという流れの中で「これだけが正解」なんてもの、あるわけないですよね?
もちろん、普遍的に変わらないもの(毎日の積み重ねが未来を創るということなど)もありますが、枝葉のスキルに関しては正解はないと断言できる時代が来ていると思います。

自分の人生に責任を持てるのは自分だけです。
言い方を変えれば、親でも家族でも最愛のパートナーでもあなたの代わりにはなれません。
あなたがあなたらしく生き抜き、人生を終える時に「この人生も悪くなかったじゃん」とニヤリとしながら旅立てるように。

「自己肯定感なんて胡散臭い」とか思わずに自分にプラスに生かせる部分だけでも取り入れて楽しく生きる人が増えるといいなと思っています。

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