無常観>価値観
フィルム・ノワールの一幕……
"通りすがりの車の
硝子に 自身を映し
取り戻せない若さを
悔いる ヒロイン"
これが
彼女位の年齢に
近付いている私が
身につまされる情景だから
尚の事
距離も 境遇も
全て超えてしまいたいと
ストーリーに
自己投影するのは 当然で
BGMのクール・ジャズに
涙腺を緩めてしまうのも
また 当然で
結局 自分の立場に
酔っているだけだろうかと
屡々 判らなくなってくる
日に日に失ってゆく 価値観
そして 若さ
「あとは 只 老いてゆくだけ……」
ヒロインの
終景での モノローグ
押し寄せてくるに任せる
熱いもの
日に日に増してゆく 無常観
そして 老い
泣けるだけ まだ
増しなのだろうか
ヒロインに
感情移入しているうちは
仕方無い事
そう言い聞かせながら
霞んだスクリーンを眺める
乾いた金管の音色は……
心地好さと 苦痛との
紙一重……