好きなものを通じて
幼少期から慣れない人とのコミュニケーションが苦手で、大勢の人が集まる場ではいつもひっそりと話の輪の外側とも内側とも言えないところにいるタイプだった。
大人も子どもも集まる場で、子どもたちはゲーム部屋で和気あいあいとしている中、その流れに乗れないどころか後から入る勇気もなくて、ひとり大人たちのテーブルにちょこんと座り、特に話に参加することもなく大人たちの話をなんとなく聞いているような子どもだった。(大人たちの話を聞いているのはわりと楽しかった。自分に話を振られる心配もないし)
一言でいえば “人見知り” というものなのだろう。
幼児が見慣れぬ人に対して自分を出せないあの様子と同じで、慣れればちゃんと会話できるのに、特に初めての場には弱かった。
例えば大学の入学オリエンテーションでペンを忘れたことに気づいても隣の人に「あの、ペン貸してもらえませんか」と声をかけるのには最大限の勇気が必要だった。
二十歳を過ぎても根本は変わらず、新しい美容院に行こうと決意したはいいが店前で15分は右往左往してなかなか店に入れない。意を決して入っても自分の要望を満足に伝えられず、やっぱり新しい美容院に行くのはやめようと決意する始末。今はもう幼馴染の店以外に行く気は無い。
そんな臆病な自分が、今、想像もしていなかった未来にいる。
Twitter(未だにXとは呼びたくない我儘を許してほしい)で趣味を通じて仲良くなった友人(フォロワー)と、福岡のPayPayドームでのライブに行ったのが昨日の話。
福岡で一泊して、翌朝新幹線に乗って、今は新横浜駅に向かっている。
これまたTwitterで趣味を通じて仲良くなった友人(フォロワー)と、横浜のぴあアリーナでのライブに行くためだ。
今の時代の、現場(イベント)に行くタイプでSNSをしているオタクは、現場でフォロワーに会うのが日常になっていると思う。
顔を合わせなければ人見知りを発揮しない私がSNS上でコミュニケーションをとれるのは自然な流れである。が、まさか「〇〇も今日いる?えーじゃあ会おうよ!」とか、「大阪公演一緒に行かへん…?」「行こう!」とか、そういう流れに乗っていけるようになるとは思いもしなかった。
まさか自発的にフォロワーに会おうと持ちかけるなんて。
初対面の人と出会って数分でお互いの好きを語り合っているなんて。
フォロワーと度々会ううちに、仕事帰りにご飯を食べたり、海外旅行に行く計画を立てたり、一緒に富士山に登ったり。現場が無くても会いたいと思える友人が大人になってからできるなんて。
思いもしなかった。
いい人たちに出会えて良かったと本当に思っているし、それは私の中で「好き」が生まれなければ存在しない出会いだった。
好きなものを通じてなら、
人見知りなんて関係なくいられるんだなと思った。
好きなものを通じてなら、
誰とだって話ができる。
好きなもののためなら、
どこまでだっていける。
好きなものがあれば、
人は無敵になれる。
好きなものを通じて、
世界は無限に広がっていく。
かもしれない。
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