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みずうみ、そこここ
幼・小・中・高の14年間を同じ学舎で過ごした、幼なじみの杏奈ちゃんが「こないだ久々に油絵を描いた」と言って一枚の絵を見せてくれました。それがこちら↓
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「湖のほとりの霧を描いた」
そう言われたとき、本当にびっくりした。
茨木のり子じゃんか、と思った。
今年4月に初めて書いた交換日記で、詩人・茨木のり子の「みずうみ」を紹介しました。
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『茨木のり子詩集 谷川俊太郎選』(岩波書店、初版2014年)より
日記からも引きますね。
中学にあがって初っ端の校長放送で、茨木のり子さんの詩「みずうみ」が紹介されました。
(中略)
そのときから、心にみずうみをもち、みずうみの水を絶やさないよう心がけることが、私の行動指針になりました。
そのために、ひとやものを「ためつすがめつ」して、考えたことを表現するために、あーだこーだと言葉を探すようになりました。
私はこの詩が大好きなもんですから「湖とそこに漂う霧の絵」と言われて、ちょっと興奮したし、嬉しかった。
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当然といえば当然ですが、あの校長放送を、杏奈ちゃんも聞いていたわけで。
10年前の校長放送など覚えている人はいないだろうと、どこかで思っていたから、彼女も私と同様に「みずうみ」を心に持ちつづけ「みずうみ」が原風景のひとつを成したとわかって嬉しかった。
経験を共有していることのあたたかさにじんわりしました。
みずうみといえば…
先日『茨木のり子詩集』の目次をなんとなくみていて、パッと目に入ったのが
「聴く力」
ちょうど数時間前にさわさんをほらせてもらったばかりだったので(→前回の交換日記参照…あ、先週書き忘れた!!本当にごめんなさい今気づきました)、まさにタイムリー。お、なんだなんだ聴く力ほしいぞい と思いながら、198ページをさがしにページをめくりました。
めくっている間、なんとなく、ある予感めいたものが走っていました。
(……はい出た、198ページ。一行目は…)
「ひとのこころの湖水」
ほらやっぱり。予感が的中したことに自分でもびっくりしました。なんとなく湖が出てくる気がしたんです。そしたらまさかの一発目にきたよ。心臓がでんぐり返しするほどびっくりした。
この人ほんと湖すきだな、と思いました。
ひとのこころの湖水
その深浅に
立ちどまり耳澄ます
ということがない
風の音に驚いたり
鳥の声に惚けたり
ひとり耳そばだてる
そんなしぐさからも遠ざかるばかり
小鳥の会話がわかったせいで
古い樹木の難儀を救い
きれいな娘の病気まで直した民話
「聴耳頭巾」をもっていた うからやから
その末裔(すえ)は我がことのみに無我夢中
舌ばかりほの赤くくるくると空転し
どう言いくるめようか
どう圧倒してやろうか
だが
どうして言葉たり得よう
他のものを じっと
受けとめる力がなければ
みずうみのほとり。いろんな人のみずうみのほとりに立って、じっと立たせてもらえるだけでいい。そういう人生を送りたいわあ…としみじみ思っちゃいました。
みずうみ尽くしの10月でした。しあわせ。
今週の質問:世界の理(ルール)をひとつ変えられるとしたら、何を変える?
一生分の時間に加えて、一年分の時間をエクストラチャージできる。
こういうのどうですかね。
一年を細切れに使ってもいいし、どんと一気に使ってもいい。
ただし、死ぬ間際に使ってはいけないことにします。
断末魔で寿命を伸ばそうとしてはいけないんです。死は誰にとっても不意に訪れるもので、抗えない。これは絶対。
だから、使い惜しみをして結局、消費しきれず終わる人もいるかもしれませんね。
そしたら天国で、
「俺、2ヶ月と10日のこして死んじゃったよ〜」
とか言いながら頭をポリポリかくおじさんとか出てきそうですね。
原稿の締切が刻一刻と迫ってどうにもならねえとき、半日くらい使っちゃってください。
絶対遅刻しちゃいけない待ち合わせに遅れそうなとき、30分くらい使っちゃってください。
そんな感じで少しずつ、時間貯金が目減りしていくイメージです。
ただこれやると、試験の時とか困りますね。時間かけ放題になると、人によってかける時間に差が出そうだから、ちょっと不公平だし、よろしくないかも。