【合格のために超重要】面接の語りの脚本へのコメント・リライティング・トーキングポイントの重要性を知ろう!

教員採用試験の面接質問への回答を、誰かに添削してもらうということが、しばしば行われています。

特に悪い方法というわけではありませんが、「添削」というのが、ちょっと修正を入れるとか、赤ペンでコメントを書き込むとか、別の表現を一つ二つ提案するくらいであれば、その面接の回答は、劇的には向上しません。

もともとの回答の文章がほぼ完璧なものであれば、ちょこっと修正を入れるというのでも完璧になりますが、もともとの回答の文章が根本的に改善しなければならないものであった場合には、いわゆる「添削」程度では、合格レベルの回答にはなりません。

それでは、ある受験者が、ある面接質問への回答を考えたとして、その回答にどのようにアプローチしていけばいいのでしょうか?

優れた面接の指導者であれば、受験者の回答に対しては、

1.コメント

2.リライティング

3.トーキングポイント

を提供すべきです。

具体例で説明してみましょう。

次のような面接質問がなされたとします。

面接質問:

主体的な学びとは、どのようなものだと考えますか?

これに受験者が次のような回答例の原稿(脚本)を準備したとします。あえて,不十分な回答例にしています。

受験者の不十分な回答例:

主体的な学びとは、生徒が自分で考えながら学びを進めていくことだと思います。これは、生徒が自ら学習のプロセスに関わり、ただ先生の話を聞くだけでなく、自分の力で課題を解決しようとする姿勢が求められる学び方です。例えば、課題に取り組むときに、先生からの指示を待つのではなく、生徒自身が疑問を持ち、それを解決しようとする姿勢が主体的な学びの一部だと思います。また、学校の授業だけでなく、自分の興味や関心をもとに、自分で学ぶ内容を深めたり、資料を調べたりすることも大切です。こうした学びが主体的な学びの基本的な部分であり、そうした姿勢を持って取り組むことが大切だと思います。

この不十分な回答例にコメントをしてみましょう。

コメント

この回答が不十分で高く評価されにくいと考えられる理由は以下の通りです。

1. 抽象的で一般的な説明に終始している

この回答は「生徒が自分で考える」、「自ら疑問を持つ」、「興味や関心をもとに学ぶ」といった抽象的な表現にとどまっており、主体的な学びをどう具体的に育むかが明確に示されていません。

そのため、面接官には具体性が欠け、理解が深まっていない印象を与える可能性があります。

2. 教師の役割や具体的な指導方法が示されていない

「主体的な学び」を支える教師の役割についての言及がほとんどありません。

単に「生徒が自ら学ぶこと」とするだけでなく、教師がどのようにサポートするか、どのように環境を整えるかについて触れることで、より深い理解と意欲が伝わりますが、この回答にはそれが欠けています。

3. 言葉の繰り返しと冗長さ

文中で「自分で考え」、「自ら学習」、「自分の力で課題を解決」など、似た表現が繰り返されていますが、それぞれの違いや具体的な意義が示されていません。

同じような言い回しが多く、内容が広がりにくいため、説明に深みが感じられない可能性があります。

4. 目標設定や振り返りの重要性に触れていない

主体的な学びでは、学習プロセスの中で生徒が目標設定を行い、学びの振り返りを通して自分の成長を確認することが重要です。

この回答ではそれらの要素が含まれておらず、主体的な学びの「進め方」や「プロセス」が伝わりづらくなっています。

5. 学びの深化や成長につながる要素が不足

主体的な学びの効果として期待される「深い学び」や「理解の深化」「自己評価」などの成長要素が説明されていません。

生徒の主体性がどのように発展し、次の学びにどう生かされるのかが示されていないため、学びの成果がぼんやりしてしまいます。

以上のような理由で、この回答は具体性と深みが欠けており、面接官には生徒の主体性や教師の関わり方についての理解が浅く映る可能性があります。

では、どのようにリライティング(書き換え)をしたらよいのでしょうか?

スピーチライター的に、書き換えてみましょう。

リライティング:

主体的な学びとは、生徒が自ら学習課題に関心を持ち、目標設定から実行、振り返りまでを積極的に行う学びの姿勢を指します。これは、自分の成長を意識し、課題に対して主体的に取り組むことで、深い学びや理解を生み出します。例えば、社会科の授業で地域問題を取り上げる場合、生徒自身が問題意識を持って課題を設定し、自ら資料を調べたり、地域の人と話し合ったりする経験を通して解決策を模索します。また、活動を振り返ることで自己評価力が高まり、学びへの意欲が一層深まると考えます。教師としては、生徒が安心して探究し、自信を持って発表できるような学びの環境を整えるとともに、適切なタイミングで助言やフィードバックを行い、生徒が自らの学びを主体的に深めていけるよう支援していきたいと考えています。

かなり改善されていることがわかります。

でも、このリライティングされた脚本だけを語っても、面接官から、例えば、

☆「生徒が自ら学習課題に関心を持ち」とは、どういうことですか?

☆「目標設定から実行、振り返りまでを積極的に行う学びの姿勢」とはどういうことですか?

☆「深い学びや理解」とはどういうことですか?

☆「自己評価力が高まり」とはどういうことですか?

☆「学びの環境を整える」とはどういうことですか?

☆「適切なタイミングで助言やフィードバックを行い」とはどういうことですか?

☆「生徒が自らの学びを主体的に深めていける」とはどういうことですか?

といった追加質問がされるかもしれません。

脚本を暗記して、語るだけでは、面接官は納得しません。

ですから、上述のリライティングされた脚本を記憶する際には、並行して、以下のトーキングポイントも一緒に頭に入れておく必要があります。

トーキングポイントとは、話したことの背景や、さらなる詳細な説明に備えるための材料・引き出しのことです。

トーキングポイント:

☆ 生徒が自ら学習課題に関心を持ち

生徒が自分で「もっと知りたい」「学びたい」と思う気持ちを持つことを意味します。これは、学ぶ内容に対して生徒が興味を抱き、学習に積極的に取り組む姿勢を指しています。

☆ 目標設定から実行、振り返りまでを積極的に行う学びの姿勢

学習の初めに「何を目指すか」を自分で決め、計画に沿って学びを進め、最後に「どのくらい達成できたか」を確認するという一連の流れを自分で行うことです。生徒が主体的に目標に向かって行動し、その結果を見直して成長につなげようとする姿勢を表しています。

☆ 深い学びや理解

表面的な知識にとどまらず、内容を本当に理解し、関連する他の知識や現実の問題とつなげて考えられるようになることです。学びが「わかった」で終わらず、「どうしてそうなるのか」や「どんな場面に使えるか」まで考えを深めることです。

☆ 自己評価力が高まり

自分の学びや行動について「どこが良かったか」、「もっと工夫できる点はどこか」を振り返り、次に生かす力が育つことです。自分で考えて学びを改善していく力とも言えます。

☆ 学びの環境を整える

生徒が安心して学べるように、教室の雰囲気や授業の流れ、教材の準備などを整え、生徒が自分の意見を出しやすくしたり、考えやすくしたりする工夫をすることです。

☆ 適切なタイミングで助言やフィードバックを行い

生徒が学びに迷ったり悩んだりしている時に、教師が必要なアドバイスや学びの進め方についてのコメントを伝えることです。タイミングが適切であることで、生徒が理解を深めやすくなります。

☆ 生徒が自らの学びを主体的に深めていける

生徒が教師に頼り過ぎず、自分で調べたり考えたりする力を身につけ、学びを進めることができるようになることです。生徒が自分で成長していく力を持ち、自ら学習を続けられるようになることを意味します。

上記のように、受験者の面接の質問に対する回答が面接指導者に示されたときには、面接指導者は、その回答の原稿に感想を言ったり、赤ペンを入れたり、ちょこっと代案的なものを語るだけでダメだということです。

優れた面接指導者は、受験者の面接の質問に対する回答が示されたときには、

1.コメント
2.リライティング
3.トーキングポイント

をセットで伝授する必要があります。

スピーチライターなら、当然の仕事です。

これからの面接指導は、スピーチライティング的な方向性で、考えていくべきです。

それが合格への最大の秘訣になります。


河野正夫
レトリカ教採学院


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?