願書系文書の書き方(その4)(2023年4月4日号)スピーチライティングとゴーストライティングは全く違う!
【願書系文書の書き方教室】の4日目です。
今日は,
スピーチライティングとゴーストライティングは全く違う!
について,アドバイスします。
本日の3つのポイントは,以下の通りです。
(1)スピーチライティング(SW)は,代書でも代案でもありません。
SWは,本人取材を極めて,本人の言葉で書きます。
まず,日本人がほとんど理解していないことがあります。
それは,スピーチライティングは,代書でも代案でもないということです。
そもそも,スピーチライティングは,ゴーストライティングのような代書ではありません。
ましてや,スピーチライターは,「カンペ」をつくる人ではありません。
スピーチライティングが極めて発達している,アメリカや西欧では,スピーチライターは,政治家や財界人の側近であり,高官に準ずる地位を有しています。
スピーチライターは,スピーチをする本人の想いや政策,経験・経歴などを熟知し,本人の心を代弁する文章を書きます。
スピーチライターは,決して,「これを読んでください。」と,代書や代案を提示する役目を果たしません。
スピーチライターは,本人が伝えたいことを,レトリック理論・コミュニケーション理論などを駆使しながら,最も効果的に聴衆に伝わるように,語りを構築します。
スピーチライターは,本人の想いと言葉を,上手く効果的な文章にまとめるだけです。
そのため,スピーチライターは,スピーチをする本人の取材を徹底して,行います。
本人の理想,想い,信条,哲学,経歴,経験,性格,言葉遣いなどを徹底的に研究した上で,本人の言葉として,スピーチを書きます。
出来上がったスピーチは,どこから読んでも,どこから聞いても,その本人の言葉,その本人の想いにしか,読めませんし,聞こえません。
欧米では,政治家や財界人には,スピーチライターが付いているのは当然であり,米国大統領などは,チーフスピーチライターは,閣僚級の扱いを受けるくらいですが,スピーチライターが書いたスピーチは,どこから見ても,その大統領の言葉にしか見えません。
スピーチライターは,自分の思いや,自分の美学や,自分の心情などを,スピーチにはしません。
あくまでも,スピーチをする本人の想いや信条,経験や経歴を基にして,スピーチを書きます。
出来上がったスピーチは,本人そのものでなければならないのです。
日本のゴーストライターは,適当な代案をつくるだけです。
誰でも,こういう場面では,こう言っておけばいいというような,ありきたりの平板な代案をつくるだけなのが,日本のゴーストライターです。
ですから,日本の政治家のスピーチには,情熱も想いも感じられません。
官僚の作文だなと感じてしまうのは,結局は,ゴーストライター並みの,愚かなライティングしかしていないからです。
(2)スピーチライター(SW)の言葉は,本人よりも,本人らしい言葉で書きます。
SWの仕事は,本人の想いを本人らしい言葉で表現することです。
既に述べたように,スピーチライターの言葉は,本人よりも,本人らしい言葉です。
一例をご紹介しましょう。
河野は,十数年前,ある政治家のスピーチライターをしていました。
ある時,その政治家が,数十分のスピーチをする機会があり,河野が,そのスピーチを書きました。
そのスピーチは大成功でしたが,その後で,その政治家のご家族や親族の方々が,
「本当に,XX(政治家の名前)らしいスピーチで,素晴らしかった。」,
「やはり,自分の言葉で話すと,感動するよね。」,
「XXは,昔から,話し方が変わっていないよね。」,
などと感想を漏らしていました。
偶然,そのご家族や親族の方々は,そのスピーチは,スピーチライターが書いたものとは,ご存じなかったようでしたが,上記のような感想が当然のように出るのが,スピーチライターの仕事です。
スピーチライターは,自分の美学を,言葉で表現しません。
あくまでも,スピーチをする本人の評価を劇的に高めるために,言葉で表現します。
日本の教員採用試験の面接の指導者が,さも,偉そうに,面接の語りの代案を提示しているのを見ると,スピーチライターではないな,たかがゴーストライターレベルの代書屋だなと感じてしまいます。
そもそも,スピーチライターになるには,レトリックやコミュニケーションを大学院レベルで,専門に研究する必要があります。
また,日本語レベルだけではなく,少なくとも,英語レベルで,徹底的に学んでいる必要があります。
レトリックやコミュニケーションの研究のほとんどといっていい分量は,英語で書かれています。
米国大統領のスピーチライターのほとんどは,コミュニケーション,レトリック,ディベートなどの,専門学位を持っています。
元校長や元教員が,面接の代案を偉そうに提示しているのを見ると,そのレベルの低さに唖然とすることがあります。
無学の者が独りよがりで,ゴーストライターになっても,面接での合格は勝ち取れません。
スピーチライターは,プロフェッショナルであり,レトリックやコミュニケーションを研究していない人,日本語に留まらず,英語やラテン語での修辞学を勉強していない人には,まず,手の届かない仕事です。
欧米では,当然のことが,日本では,極めてあいまいで,元校長や元教員が,面接指導にしゃしゃり出てくる,素人加減が,なんとも虚しいものだと感じてしまいます。
(3)ゴーストライティングは正解の押し付けです。単なる代案です。
SWには正解はなく,本人の想いと人間性を印象的に表現します。
スピーチライティングの訓練を受けていない,または,レトリック論やコミュニケーション論を学んでいない指導者は,ゴーストライターとして,正解としての代案を押し付けます。
つまりは,こういう面接質問を聞かれたら,こういう風に答えなさいという風に,そのゴーストライターが考えた代案を,誰にでも押し付けます。
ゴーストライターは,一人一人に最適なスピーチを提案しませんし,提案できません。
ゴーストライターは,所詮は,独りよがりの指導者であり,こういう質問には,こういう答えをという,ありきたりで平凡な答えを,みんなに提案します。
これが,日本の政治家の典型的なスピーチであり,官僚が書いた作文です。
とりあえず,言い逃れをする,とりあえず,回答しておく,とりあえず,何か言っておくというレベルです。
そこには,聞き手や聴衆の感動も共感も感銘もありません。
とりあえず,質問には,それなりに答えたというだけです。
ゴーストライターレベルの指導者が提供できるのは,所詮は,代案レベルです。
スピーチライターは,スピーチを書くときには,スピーチをする人,本人を徹底的に研究し,考察します。
面接の語りや,教採での自己アピールや志望動機であれば,その人の学歴・職歴・経歴・バックグランド・年齢・性別・ルックス・雰囲気・プロフィールなどを徹底的に考察・考慮した上で,その人が最も輝き,その人が確実に高評価・合格を手にすることができるような文章を作ります。
しかも,その文章は,その本人の想いや言葉を表現するものであり,その人らしさ,その人でなければ語れないものになっています。
それが,スピーチライターの仕事であり,スピーチライターの能力です。
河野が本気で,スピーチライティングをすると,ほぼ100%,スピーチをする本人は,感動して,涙ぐみます。
「これが言いたかったことです!」
「こういうことを話したいです!」
「自分の人生が見えてきました!」
などと言ってくれます。
というか,そう言ってもらえないのであれば,スピーチライターの資格はありません。
重要なことがあります。
それは,ある受験者に最適な語りは,他の受験者には効果がないかもしれないということです。
世の中には,万人に最適な語りやスピーチというものはありません。
あくまでも,その本人に最適な語りやスピーチがあるということです。
従って,面接対策本や面接講座で,普通の指導者に学んだ語りには,面接官を感動させる力は,まずありません。
語りは,語る本人に個別最適なものにする必要があります。
例えば,オバマ大統領の感動的なスピーチを,トランプ大統領が読んでも,誰も感動しないでしょう。
面接の語りを,受験者ごとに,個別最適に書けるのか,それが,スピーチライターの力量を示すものとなります。
日本には,多くのスピーチライターは存在しません。
せいぜい,官僚が政治家の答弁を代筆するくらいです。
財界には,若干のスピーチライターがいるようですが,あまり,ぱっとしません。
マスコミ系のコンサルタント会社には,優秀な人はいるようですが,報酬があまりにも高くて,庶民には,ちょっと手が出せないでしょう。
自画自賛になってしまいますが,アメリカ・オランダで,スピーチライティングを学んだスピーチライティングのプロフェッショナルの指導者を,ちょこちょこっと格安で利用できるというのは,河野だけかもしれません。
せっかくのグッドチャンスなので,スピーチライティングの手法で,最高の願書系文書を書きたい人は,是非,河野にご相談ください!
河野正夫
レトリカ教採学院