複数の選択肢を比較する際にはメリット・デメリット表を使わない
プロジェクトメンバに課題への対応策の比較表の作成を依頼したところ、下図のような各案のメリットデメリットを記載した表が返ってきました。それっぽいのですが、何か足りない気がしないでしょうか。彼の比較表をレビューする中で比較表をどのように作るべきか、依頼をするときはどのように依頼すべきかが整理できたので、書きます。
メリット・デメリット表を見ても意思決定ができない
比較表は複数の選択肢から特定の選択肢を選び出すための判断・意思決定の材料です。メリット・デメリットが書かれた表(以下、メリデメ表)を見てわかることは、「どの案もメリットもあればデメリットもあるんだね」であり、結局どれを選べばよいのか判断ができません。
また、メリデメ表には作成者の主観が入る場合があります。例えば仕事を比較する際に「完全リモートワーク」であることは、「場所に縛られない」というメリットとも「対面でのコミュニケーションが取りづらい」というデメリットとも捉えることができます。このような客観的に良し悪しを判断することが難しい性質を作成者の主観によってメリット・デメリットという箱に分類することは、意思決定者にとっては意味がないです。
比較表は選択肢の比較を軸(価値観)の比較に変換する道具
上記の表に客観的な軸(価値観)を追加することで、意思決定の材料になります。例として、よく使われる対応期間、追加コスト、効果という軸を追加してみます。
軸を追加したことで、評価が定量的でない部分、そもそも評価がされていない部分があることがわかります。評価を定量的に行い、空のマスを埋めてみます。
これで軸(価値観)の選択をすることで、どの選択肢を選べばよいかを判断できる状態になりました。
・対応期間を最優先にする場合は案Aがよいが、半年以内に恒久対応が必要
・期間とコストがかかってでも確実な対応を行いたい場合は案Bがよい
・追加コストがかけられない場合は案Cがよいが、半年以内に恒久対応が必要
このように、複数の選択肢を比較する際には、軸(価値観)を決め、その軸に基づいて各選択肢を評価することで、意思決定者が個別の選択肢ではなく、どの軸(価値観)を優先するかを選ぶことでどの選択肢を選べばよいかがわかる状態にしましょう。
さらに、意思決定者が優先するであろう軸が予想できる場合や、何らかの根拠を持って作成者が軸に対して優先度をつけられる場合、どの選択肢を選ぶべきかを提案します。スライドを作る場合はメッセージラインとしてその提案を書くことが多いです。例えば、2週間後のプレスリリースまでに必ず課題を解決しなければならない場合は「2週間後のプレスリリースまでに課題解決するために案Aで暫定対応を行い、その後恒久対応を検討する。」という感じです。
※上記の例のように、情報を整理する前のデータ整理のために一時的にメリデメ表を作成し、そこから必要な軸を洗い出すというアプローチをとることは珍しくありません。
比較表作成の依頼方法
上記を踏まえて、比較表の作成を依頼するときには、下記のようにすると手戻りがなく、効率的にアウトプットを得られそうです。
1. 考えられる案と各案に関する事実を列挙して頂く(この時点では一時的にメリデメ表を作っても構わない)
2. 軸を検討する(ミーティング実施)
3. 比較表を作成し意思決定者に伝える提案を検討して頂く
4. レビューを行い資料をブラッシュアップして頂く(ミーティング実施)
最も重要な軸の検討はレビュー者も一緒に考えるのがよさそうです。もし可能であれば意思決定者に事前に決めていただくのもよいと思います。
比較表の作成方法についてより丁寧に解説している方がいらっしゃいました。
メリデメ表の使いどころを考える ある一つのモノの性質のメリットとデメリットの両方を記載することでその性質を説明する
とは言えメリデメ表は書籍などでもよく見かける代表的な比較方法です。このメリデメ表が適したシチュエーションも考えてみます。
「都会からの地方移住」について説明する場合を考えてみます。この場合、例えば「地方はより自然が豊か」であることは、人によって「ストレスが軽減できる、四季を感じられる」というメリットとも「虫や害獣が多く危険」というデメリットとも捉えることができます。このような場合に、その特定の性質をメリットかデメリットのどちらか一方に分類するのではなく、両面から見た評価を記載することで、客観的にその性質を説明することができます。下記に例を挙げます。
この表は意思決定を促すというよりは、これを見た人が都会からの地方移住を考える際に、「自分にとってはメリットの方が大きく見える」「全体的にデメリットが多く見えるが仕事の観点で非常に魅力的だ」といった大雑把な判断に役立ちそうです。仮に地方移住を本格的に考え始めたとして、じゃあどこに移住するか?という意思決定には、やはり軸を定めて比較表を作るのがよいでしょう。
他にもメリデメ表の使いどころがあれば教えていただければと思います。
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