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音楽をもっと紐解くための14の要素

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音楽はたくさんの要素の組み合わせでできています。レビューを書く場合、その要素を頭に置いてを聴くと、早く・深く作品を理解しやすいです。また、文章の整理も楽になります。

この記事では、以下の3点を書いていきます。

・音楽作品にどんな要素があるのか
・それぞれの要素をどう聴けばいいのか
・どういう言葉で表現ですればいいのか

理論がわからないひとでも感覚的に捉えられるように説明していきます。

※あくまでレビューを書くために使う道具としての内容で、学術的な記述ではありません。正確な意味や用法は専門書を参照してください。


1.テクスチャー(音の質感)

全体的な音の「感じ」を差します。

厚い/薄い、優しい/厳しいなどを感覚でつかんでいきます。

テクスチャーはいちばん初めにぼんやりとつかめる要素でもあり、作品の印象を決める重要な要素でもあります。

テクスチャーは、いくつもの音楽要素が結びついて形作られます。どの音楽要素がどのように働き影響しあっているのかを考えることが、テクスチャーの解明≒曲全体の雰囲気の解明につながります。

レビューでテクスチャーといっても読者には伝わりにくいので、私は音の像や音像としています。オーディオ用語に音像がありますが、それとはべつです。

2. メロディ

音の高い低いの時間的な変化です。

単純に「美しい」などの感想に加えて、どれだけ高さに変化があるか、どれだけ時間で変化するか、などに着目します。

音の高さがどんどん変わるようなメロディは「ハイテンション」や「焦り」といった表現としてとらえられますし、変化が少ないものは「平坦」や「鈍重」というような受けとりかたができます。

3. 音の響き(コード)

音同士がどう相互に影響して響いているかに着目します。

ピアノやギターが「ドミソ」などの音を同時に鳴らしたとき、単音では得られなかった独特の響きが生まれます。その響きの感じを、やわらかい/とげとげしい、楽しい/悲しい、などでつかんでいきます。

響きを生みだす単音の組みあわせをコードとよびます。コードはすでに深く研究されていて、どのコードがどういう雰囲気なのか、どのコードからどのコードにいくと音楽的に違和感がないのかなどが音楽理論として確立しています。そうした知識は手助けになるでしょう。

しかしもちろん、コードが当てはまらない打楽器なども音の響きには関係します。鳴っているすべての音に耳をかたむけて、それぞれがどう関係してどのような響きをつくっているかを考えます。

4. ラウドネス

ラウドネスは感覚的な音の大きさをいいます。

(音楽では音圧ということもありますが、一般的な音圧は単位をパスカルとする物理量です。本記事ではこれと区別するためにラウドネスとします)

ラウドネスには音量(音圧の強さ、デシベル)や音の高さ(周波数)が関係します。

作品中でラウドネスがどの部分でどのように変化しているか、どの程度の幅をもっているかを考えます。

ラウドネスの大小変化は躍動感につながります。また、ラウドネスの変化と感情表現が強く結びついてれば「豊かな感情表現」などとすることができます。メタルなどの激しい音楽で、曲中のラウドネスがつねに高いレベルで維持されていれば「音の壁でこちらを圧殺しようとしてくる」などの表現が可能です。

5. 音の高さ

作品全体や各楽器の音の高い低いを差します。

音の高さがどういう印象につながっているかを考えます。一般的に音が高いと鋭い、低いと鈍い印象になります。

周波数から来る物理的な音の高さ(ピッチ)ではなく、聴感上の高い低い(シャープネス)を重視します。「同じキーの曲を男性が歌うよりも女性が歌うほうが低く聴こえる」「不要な低域を削ることで逆に低音感が増す」というような例があるからです。

6. 音色/音質

音の質感です。

各楽器(ピアノやギターはもちろん、電子音を発する装置や空き缶まで、作品中で音を出すためにつかわれているものすべてを「楽器」とします)の音に対して、粗い/クリア、心地よい/耳障り、赤い/青いなどをあてはめていきます。また、個々の音色の統一感なども考えます。

ラウドネスやシャープネスと強く関係しており、それによって説明できる部分は多いです。とはいえ曲全体からすれば細かい部分なので、音色は音色としてみたほうが音像の解明には近く、読者にも優しいでしょう。

7. リズム

ラウドネスの変化によって生まれます。

どの部分でどの楽器がリズムを担っているかをとらえながら、単純/複雑、明確/曖昧などの感覚をつかんでいきます。

「リズムがジャンルを生む」といわれるくらい重要な要素です。ドラマー用の練習動画をみたり、DTM用サンプル音源を聴いて、基本的なリズムパターンとジャンルの結び付きを覚えておくと、語りかたに幅が出るのでおすすめです。


8. 速度感

曲の速さです。

BPM(1分あたりの拍の数)といわれる数値が高いほど、基本的には速いです。ただし、リズムによってはBPMが低くても速く感じる場合もあります。数値から曲を解明するやり方もあれば、あなたが感じる速さを中心に曲を紐解く方法もあります。

速い/遅い、一定/変化といった観点で考えます。

9. フレーズ・構成・展開

作品中のひとまとまりがフレーズです。どこをどう区切ってまとまりとするかは自由です。ここでは、フレーズがどう組みあわされているかを構成とし、曲が進んでいってフレーズや小さな構成が変化していくことを展開とします。フレーズからフレーズへの推移を強調したいときは展開ということばを使うかんじです。

J-PopであればAメロとBメロとサビというフレーズが順番に展開していく構成が一般的です。たとえば、AメロとBメロが静かでサビでいっきに騒がしくなるような構成は「たまったエネルギーを爆発させる」「躁鬱」などの印象でとらえられます。最初はふつうの4つ打ちだったのがじょじょにリズムが複雑になっていくような場合「精神が壊れていく」「肉体性を否定していく」展開などと表現できます。

10. 音のつながり(アーティキュレーション)

音と音のつながりがどうなっているのかを考えます。

「ドレミ」というひとつのフレーズがあったとき、ドとレの強弱の差やドからレに移るときのなめらかさ、それが曲中で一定かどうかなどに注目します。

なめらかに音がつながっている場合は優雅さを感じるでしょうし、はっきりと区切りがあれば無機的な印象になるかもしれません。同じフレーズでも曲の前半と後半でアーティキュレーションに変化があれば、そこからなにかしらの感情の変化などを読みとることができます。

11. 音の長さ(デュレーション)

音の長さを聴きます。長い音が多い場合うねり/壁/のろまなど、短い音が多い場合はリズミカル/点/性急などの印象を受けるでしょう。

12. 音の位置(定位)

ひとつひとつの楽器が空間の音が上下前後左右どこに配置されているかを考えます。

人間が認識する音の空間位置を定位といいます。定位は左右の音量差や残響音の有無などで形づくられます。

音が大きくて輪郭がはっきりしているパートは前面にでて聴こえるでしょうし「製作者がその作品の主役と考えている」と取れます。あるいは上下左右に目まぐるしく移動するような音は、作品の主流とは独立して存在する異生物のようにふるまうかもしれません。

似たような音が近い位置にあるとぶつかりあって濁ったような音になったり、聴こえにくくなったりします。あるいは調和して響くかもしれません。

13. 音の広がり

音全体がどれくらいの広さをもっているかを考えます。

壮大なテーマをもった大曲であれば広い空間表現が適しているでしょうし、人間を拷問にかけるような曲はむしろ狭い音のほうがいいでしょう。

14. 詞と音の関係

音の要素ではありませんが、詞とその意味は音と影響しあって作品にとって重要なものになります。

詞そのものは大きく以下の 2 つの観点で捉えるとよいです。

思想性
・「何」を「どのような」切り口で扱っている?
・その考え方に独創性はある? それとも普遍性がある?
・社会の動きとどのように関連している?
など…
表現性
・直接的? 隠喩的?
・語彙は豊富? シンプル?
・思想を適切に表現できている?
など…

加えて、これらが音とどう影響しあっているかを考えることが、音楽作品中の言葉を取りあつかううえで重要です。

言葉の意味を、後述する感情的表現と物理的に照らしあわせると、いろいろと見えてくるとおもいます。

音楽を要素に分解するとわかることがある

音楽を全体として聴くだけでなく、以上の要素を意識して聴くことは、作品の細かい部分の魅力に気づくきっかけになるはずです。ぜひ試してみてください。

ここで捉えた音楽要素を具体的にどうレビューとして活用していくかは、下記の記事に書いています。参考にしてもらえれば嬉しいです。

Photo by Daniel Fazio 

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