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石丸伸二が直接対決を恐れる宿敵 第5回 ~経歴に見る岡田吉弘の優位~

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注)冒頭の画像は、2020年8月10日付 中国新聞(中国新聞デジタル)

並べてみると比較せずにはいられない二人

石丸伸二と岡田吉弘の二人は、河井夫妻から票の取りまとめを依頼され現金を授受した責任を取って、安芸高田市と三原市の両市長が同時期に辞職したことから、同じ日に誕生した青年市長である。
2024年東京都知事選で石丸に投票した選挙民の何割が、三原市長に就任した「双子の市長」の弟とも言える岡田の存在を知っていたのであろうか。安芸高田市議会における居眠りの一件以降は、石丸ばかりが注目されて、岡田は地元の人にしか顧みられていないようにも感じる。

広島県民以外は岡田の存在を知らない者がほとんどであろう。共通点が多い石丸と岡田を見比べてみると、二人の相違点から日本の政治課題が見えてくると言っても過言ではない。
前回までとは繰り返しになる点もあるが、まずは経歴から見ていこう。

出生から高校まで


二人の市長はそれぞれの市に生まれ育った。
石丸は、吉田町立(現・安芸高田市)吉田小→同・吉田中学校→広島県立祇園北高等学校へと進んだ。
岡田は、国立(当時)広島大学付属三原小・中学校→同・福山高等学校と、一貫して広島大学付属の学校に通った。
地域の子供達と同じ学校に通いながらのびのび育った石丸に対して、一貫教育を受けた岡田は、教育熱心な家庭に育ったのかもしれない。

大学・最終学歴

石丸は、1年の浪人を経て、京都大学経済学部に入学した。

──学部は経済学部に。

本当は理系に進んで、医者になりたかったんです。ただ、医者になるには6年間大学に通わないといけなくて、当時家にあまりお金がなかったのでダメだなと。また理系はおしなべて院まで進む人が多いと知って、お金がかかるからなしだなと思って文系にしました。

  【卒業生インタビュー 京大出たあと、 何したはるの?】Vol.8 安芸高田市長 石丸伸二さん 自分の使い道を見つけたい
京都大学新聞

また浪人する訳にもいかなかったと言えないのが、いかにも石丸らしい。

3学年年少の岡田は、石丸に2年遅れて京都大学工学部にストレートで入学した。第3回で触れたように、お遍路やフリーターなど1年間のモラトリアム期間を置いたのちに、京都大学大学院工学研究科にて修士号を取得した。

職歴・市長になるまで

石丸は、京都大学を卒業し、三菱UFJ銀行に就職、子会社MUFGユニオンバンクにてアナリストとしてニューヨーク駐在を経て、安芸高田市長選挙に立候補するために生まれ故郷に戻った。

岡田は、京都大学大学院を修了し、日東電工で両面接着テープの開発に従事するも退職し、全寮制の松下政経塾でリーダーシップを学び、生まれ故郷に戻ってプログラミング教育事業を立ち上げた。河井夫妻選挙違反事件を受けて市長に立候補したのは石丸と同じである。(第2回参照)

家族

石丸は、安芸高田市長在任時に、両親、兄、妹とともに同居していた。

岡田は、長年の交際を経て三原市に戻ってから結婚した。

市長就任後に第一子を授かった。同年に
イクボス宣言
をするとともに育児休暇を取得し、記者会見では育児に関する考えを述べた。

政治家としての経歴では岡田に軍配

プロフィールを振り返って、岡田が石丸に優っていると言える点は、

  1. 高校まで国立大学付属校の一貫教育

  2. 3学年年少の若さ

  3. 石丸が断念した理系学部で大学院修了

  4. 松下政経塾で政治を学ぶ

  5. 妻子持ち

これらが必ずしも推奨されるべきとまでは考えないが、青年政治家としてはプラスになる要素ばかりである。私に限らずほとんどの方が、経歴の比較では岡田に軍配を上げるはずである。
なお、二人とも市長就任以前に、議員も行政も経験していないことは、共通の弱点と言わざるを得ない。

閑話休題、読めない針路

このシリーズを書こうと思い立ったのは、石丸が安芸高田市長退任を発表する以前であった。私自身がnoteに慣れずに思うように筆が進まないうちに、情勢は刻々と変わっていった。
石丸の都知事選出馬は、落選したものの予想外の大躍進を遂げたと言えよう。
岡田も選挙戦のさなかであり、明日は(2024年7月28日)開票を待たずに再選されるのではないか。

これまでは次期広島県知事選を念頭に書き進めた。
石丸の動きに絡みそうな出来事としては、兵庫県知事斎藤元彦のパワハラ騒動があり、こちらは百条委員会まで開かれており、いつ辞職に追い込まれてもおかしくない気配である。石丸には河井事件に乗じて急遽市長に立候補した過去があり、兵庫県知事選に出馬も十分にありうる。石丸は都知事選直後のテレビでの失言から「石丸構文」などと揶揄されているが、選挙になれば社会現象のような盛り上がりが再び起きるかもしれない。
また、石丸がほのめかした衆議院広島1区への出馬は実現性は低いものの、自民党内から岸田文雄の続投に異論を唱える者が出る始末であり、もし石丸が岸田に挑んだら日本中の耳目を集めることになるであろう。
保守王国広島では、県民の石丸への嫌悪感が強いとも聞くが、これほどまでに石丸の知名度が上がった今となっては、石丸に好感する者の票だけでも勝ち負けになるのではないか。
随分と先になるが、石丸は広島市長選も視野に入れているかもしれない。

石丸は、私が考える政治家の資質を決定的に欠くポピュリストである。政治に関心が薄い層の空疎ながらも膨満な期待感に、正統的なスタンスで対抗しうる候補者を擁立し、石丸の当選を阻むのは並大抵ではない。
石丸に投影された改革者像は虚妄である。広島県内の選挙で両者が並び立ったならば、その立ち位置から必然的に比較される岡田だけが、この白昼夢に終止符を打つことができるはずである。


次回は、予定を変更して、番外編として前明石市長泉房穂と比較してみた。

第6回

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