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石丸伸二が直接対決を恐れる宿敵 第10回 (最終回) ~石丸をめぐる評価と今後の展望~
前回の記事
東京都知事選後の石丸は、テレビ出演したりネットに動画配信をしたものの、次に出る選挙については具体的な言及を避けていた。
石丸を取り巻く賛否両論
石丸の安芸高田市長在任中には、大正大特任教授の片山善博が、その政治手法をバッサリと切り捨てた。
石丸流改革、無用な対立の元 片山善博大正大特任教授 https://t.co/qzbxCkUrAn
— 産経ニュース (@Sankei_news) February 11, 2024
居眠りする議員は私の時にもいた。「起きてください」と注意すればいい。居眠りをやめさせるのにSNSにあげるのは大げさ。「劇場型」は、市民にまっとうな関心を議会に向けてもらいたい、という意味での手法ではない
これに対し、石丸は会見にて以下のとおり反論した。
有用な対立とは何ですか?
どこにあるんですか? 誰がやってるんですか?
どの自治体で見れるんですか? ないじゃないですか?
そんな識者の見解に価値があるとは思えません。
じゃあ、やってみろですよ!
1人の有権者でもいいから投票に行かせてみろ!
1人の候補でいいから立たしてみろ!
実用的でない識者の見解というのは、紙面を埋めるにはちょうどいいのかもしれないんですが、結果、読者が誤解をします。勘違いを、下手したらさせます。
それはむしろ社会にとって害悪です。 断じておきます!
ちなみに、片山は旧自治省出身で鳥取県知事と総務大臣を歴任した、日本有数の地方自治におけるエキスパートである。石丸信者による片山への反論を聞いてみたいものである。
もちろん、中には石丸に賛同する者もいる。東京都知事選後には、多くの著名人や評論家が石丸に言及した。
古舘伊知郎
かつて報道ステーションのキャスターを務めた古舘は、かねてより石丸を買っていた。
業界人で石丸への支持を表明する者は珍しい。石丸には大手メディアが取り上げづらい要素が満載されている。地方の小都市の市長を1期足らず務めたにすぎず、その発言はコンプライアンスを尊重していないものが散見され、いたずらに対立相手を罵倒するからである。
東京都知事であった石原慎太郎に食ってかかった姿とは対照的に、石丸の前では猫になってしまった。古舘ほど舌がよく回る者は日本中を探しても見当たらないであろう。
古舘は類まれなる言語感覚とは裏腹に、深謀遠慮に欠けており、直感的な判断に頼る傾向が見て取れる。数多くの政治家にインタビューしたにもかかわらず、石丸に惹かれる感覚は理解に苦しむ。
石丸はメディアの報道に対して恨み骨髄に徹しており、古舘との対談では、集中砲火を浴びていた前首相の岸田文雄までを、なぜか庇って見せた。
岸田首相の報道について「メディアのネガキャンがすごい。なぜもっと功績に光を当てないのか」
私が石丸に全面的に同意できるのはこの言葉くらいか。メディアが何かにつけて政権に批判的なのはやむを得ない部分もあるが、功績はきちんと伝えるべきである。岸田内閣は歴代内閣と比べても、多くの前進を果たしたと評価できる。政権批判が行き過ぎると、ポピュリストにとっては絶好のチャンスとなることは、頭に入れておくべきであろう。
ただし、石丸は首長として批判に曝され続けた私怨から言っている部分が強く、政権与党に協力的であったとは聞いたことがない。
古谷経衡
古谷は石丸の著書『覚悟の論理』と『シン・日本列島改造論』に目を通して、その中身の薄さから石丸をほぼ全否定した。
古谷は石丸を強い劣等感の持ち主と感じているようで、事ある毎にこき下ろした。
私と石丸伸二は同い年(41歳)で地方出身、(恐らく)青春時代暗くてモテなかったのだろう、という部分において、同情と恐怖を覚える。怖さとは、一歩間違っていたら、私も石丸や石丸の支持者のようになっていたかもしれないという点だ。…
— 古谷経衡(作家,評論家,社団法人令和政治社会問題研究所所長,株オフィス・トゥー・ワン所属) (@aniotahosyu) July 11, 2024
石丸は、電子掲示板2ちゃんねるの創設者である西村博之(ひろゆき)を尊敬しており、ひろゆきは古谷の天敵でもある。
古谷: 僕は、昔から馬鹿なやつがいて、それが今可視化してきただけだって言うのは、僕間違いだと思いますよ、それは、明らかに、インターネットの生放送とか動画によって、ユーザーを巻き込む形で、どんどん投稿者とか、生主とか言う人が、快感を得ているので、僕はどんどん増えていってると思います。だから一定程度、、、
ひろゆき: それ明らかではなくてあなたの感想ですよね。
このように公衆の面前でひろゆきに〝論破〟されてしまった古谷であるが、自らが餌食となったことでひろゆきと対談しても得るものはないことを示したとも言える。
西村博之 (ひろゆき)
ひろゆきはネットで注目を集める石丸に秋波を送った。
ひろゆきは論破王の称号を持つが、その実態は前段に見るような詭弁王である。石丸は幾度かひろゆきを引き合いに出して語ったが、脱法的に裁判所の支払い命令を無視するひろゆきを、公人が肯定的に語るのは好ましくない。ひろゆきの論法では対立相手を説得することは難しい。石丸はその場の逃れのためにひろゆきの弁論術を模倣している。
ちなみに、ひろゆきは都知事選後の石丸を指して、意識高い系の無職と揶揄した。遅まきながら石丸が持つルサンチマンに勘づいたようである。
堀江貴文 (ホリエモン)
ひろゆきと仲違いしてからは、互いに貶し合うようになったが、ホリエモンは都知事選に立候補を表明した石丸を手放しで褒めそやした。
ネットのムーブメントだけでひょっとするほど、日本はネット選挙にまだシフトしていない。特に知事選は圧倒的に現職が有利である。
予防線を張りながらの石丸小推しに変わったのは面白い。ホリエモンは石丸が主張する政治思想や政策ではなく、その話題性のみを買っているように見受けられる。
橋下徹
橋下はご存じのとおり、大阪府知事と大阪市長を務めて維新の会を設立した。いわば地方自治の風雲児である。
石丸を見て「僕に似ている」と評し、石丸に首長連合を結成するように勧めた。石丸は「例えば、泉さんや橋下さんが新党を立ち上げるっておっしゃる場合には、ぜひ一緒に頑張りたいと思う次第です」などと殊勝に答えた。
衆院選で議席を減らした維新に言及した際には、石丸に水を向けた。
大阪府知事と大阪市長を歴任した橋下には、石丸のやり方では都政を回せないことくらいはわかっているはずである。「俺の指図に従えば東京を掻き回せる」と暗に匂わせている気がする。石丸を担ぎたい下心が透けて見える。
内田樹
内田はひろゆきが、辺野古基地反対運動で座り込みをした市民団体を嘲笑したことを批判しており、冷笑的な態度には極めて厳しい評論家である。内田によると、民主政は成熟の途上にあるという。
日本のポピュリズムは法律や政治システムという実定的なかたちをとることなく、「空気」の中で醸成された。
日本の政治家たちが急速に幼児化し、知的に劣化しているのは、すべての生物の場合と同じく、その方がシステムの管理運営上有利だと政治家自身も有権者も判断しているからなのである。
民主政の未成熟な部分を表したのが石丸現象と言えなくもない。
毎日新聞
毎日新聞に至っては、これらの評者よりもさらに辛辣と言える。
東京都知事選で約165万票を獲得した石丸伸二氏とは何者か。告示後、これは2位に入るかもしれないと調べ始めたが、むなしくなったのでもうやめた。
公約はあいまいなのに、ネット交流サービス(SNS)や動画サイトで若年層や無党派層の支持を集めるポピュリスト(大衆迎合主義者)。言うなら「民主主義のハッカー」か。ハッカーとは、良いことであれ悪いことであれコンピューターを駆使して常識外れな目的を実現させる者のこと。
ほとんど犯罪者呼ばわりであるが、実際に石丸がやっていることは当たり屋も同然である。対立相手を厳しく非難することによって支持を得ようとする者を信用してはならない。
政治家を評価するに大切なたった一つのこと
石丸は、2024年総選挙の投票日前日に、国民民主党の応援演説を行った。そして因縁のフジテレビの開票特番に出演した。立憲民主党所属の参議院議員塩村文夏から「不健全な市長」と書かれたと噛み付いた。
以下が、塩村が投稿した文章である。
安芸高田市長に当選された藤本えつし新市長が永田町に陳情に来られていました。安芸高田は私の以前の選挙区です。なので、昔からの知り合い✨ということで、寄って頂きました。
— 塩村あやか💙💛🐾参議院議員(りっけん) (@shiomura) July 24, 2024
市議会にようやく健全な議論が展開できる市長が選出され、私の友人や知人たちもホッとしたと数々の連絡が入りました。… pic.twitter.com/yLjG87t5LZ
このように石丸は、気に入らない発言には、書いていないことを書いたとするストローマン論法を駆使することが多い。四方八方に喧嘩を売って自己PRに余念がないが、政治家は政治家から評価されなければ、長く活躍するのは不可能である。選挙民が評価するという反論もあろうが、同業で仕事仲間から認められない政治家は、どれほど選挙民からの人気があっても、現実には何も成せないのである。
石丸信者が推す、高市早苗、斎藤元彦、玉木雄一郎
前経済安全保障担当大臣高市早苗と前兵庫県知事斎藤元彦を、SNSで強く支援する一団がいる。言うまでもなく石丸応援団の皆さんである。既に読者はおわかりであろうが、彼らが推す者を支持することは避けるべきである。石丸の反対勢力に対する苛烈な態度を強さと勘違いさせられ、中共の紅衛兵よろしく石丸の思想を広め、石丸の失言や疑惑は擁護してみせる。その際の言い訳は「是々非々」であり、自分が支援する者の粗は不問に付すのである。先の総裁選で総理の座に肉迫した高市は、ネトウヨからの支持が厚い。高市が唱える経済政策は、公的資金をジャブジャブ注いで経済を活性化させよというものである。その方針でトリクルダウンが起きないのはアベノミクスで実証済みである。しかし、ネットのノイジーマイノリティは、竹で割ったような言い切りを好むし、社会階層間の分断をものともしないどころか、好んで対立の図式を作りたがる。
不信任決議を受けて兵庫県知事を自動失職し、出直しに賭ける斎藤は、石丸と瓜二つのバズりを見せて、本命視される対抗馬を猛追した。日を追うごとに斎藤の街頭演説には多くの人が集まるようになったが、この変化は「実は斉藤さんは悪くなかった」という真偽不明の言説が流されたからである。その拡散や動員に石丸信者が一役買ったのは言うまでもない。SNSでは石丸に賛同するアカウントに、斎藤への支持をも表明する投稿が目立った。
国民民主党は石丸が都知事選を戦った手法を、先の衆議院総選挙でそっくり模倣して議席を大きく伸ばした。石丸と違うのは、「103万円の壁」を打破することを訴えた点にあるが、党首の玉木雄一郎は石丸と動画で対談するなど、石丸人気にあやかろうとしたのは明白である。
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石丸信者らはネットでの拡散によって、下馬評を覆してダークホースを勝たせることに血道を上げているようにも見える。
なお、総選挙後に報じられた不倫報道を概ね事実と認めた玉木は、自らの処遇を党に丸投げして辞任もしない模様である。進退を明らかにしたがらない党首に何ができようか。
石丸現象は安芸高田市に何をもたらしたか
石丸が東京都知事で大健闘したものの、次点に終わった同じ日に、石丸市政の見直しを訴える藤本悦志が安芸高田市長に就任したのは皮肉である。
安芸高田市は、公式チャンネルのYouTube動画のコメント欄を閉鎖することにした。
石丸は歩くバカ発見器
石丸に惹かれる者は、政治について漠然たる不安を抱くものの、政治について真剣に考えたことはないのである。これまでに政治について数冊の本でも読んだならば、石丸を手放しで賞賛する愚は犯さないであろう。
大空幸星は、フジテレビの日曜報道で石丸と橋下を相手に、石丸の政治手法を批判し「対立した議員を名誉毀損して敗訴したなら謝るべき」と譲らなかった。この一幕を信者達は根に持っており、大空を一斉攻撃したのである。ちなみに、大空は先の総選挙おいて自民公認で総選挙に立候補し、小選挙区で敗れたものの比例復活を果たして、衆議院議員となった。
現実に即した振り返りを拒む信者
石丸の実績を俯瞰的に眺めることもせず、他の政治家との比較を避けているように見受けられる。否が応でも目に入る現実は否定し、「かっこいい大人になりましょう」などの空疎で具体性に欠けるフレーズを好んで暗誦する。
安芸高田市議会の議員らは、石丸による名誉毀損のみならず、信者達による嫌がらせに今も悩まされている。
ポピュリズムへの後悔抜きに民主主義は発展しない
ポピュリズムといえば、田中真紀子に音頭取りを任せて総理大臣の座に就いた小泉純一郎を思い出す。既存の主流派を抵抗勢力と呼び、「自民党をぶっ壊す」と獅子吼した。かねてより主張していた郵政民営化をめぐっては、法案に反対を投じた造反議員に刺客まで送った。結果は自民の圧勝となり、苦戦を強いられた造反議員議員らの多くは小泉の軍門に下った。一部のベテラン有力議員らは、国民新党を結成し自民党と袂を分かつが、国民からの支持は得られず、寂しい晩年を送ることになった。
歴代最多議席を獲得して「悪夢の民主党政権」が誕生したのは、首相の麻生太郎が漢字を読み間違えたことを、メディアが徹底的に嘲笑したからである。あの時の異様な高揚を一生忘れることがないであろう。政権運営の難しさを身をもって知った民主党に向けられる視線は冷ややかで、民主党は政権を下りるばかりか解体を余儀なくされた。
ざっくばらんな下町の名古屋弁を駆使したり、自転車に幟を立てて選挙活動を展開するなどで人気がある河村たかしは、表敬訪問した金メダリストからメダルを取り上げると齧り付いた。この件で名古屋市民からの信頼を失った河村市政はさらに迷走するが、先の総選挙で日本保守党から立候補し、当選を果たして衆議院議員へと出戻った。
アメリカはさらに深い分断に悩まされている。前回は再選を果たせなかったドナルド・トランプが、バイデンに代わって立候補した副大統領のカマラ・ハリスを破り、大統領に返り咲いた。
トランプは、その前の大統領選では自分の敗北を認めずに、国会議事堂の襲撃を扇動したとされる。また、大統領に再び就任したら、自らの指示に従わなかった者を2秒でクビにするとも語った。自分に都合が好いことしか語らずに、対立相手に苛烈な対応をする者を信頼してしまうのは、世界的に共通した傾向である。
これらのドタバタ劇は社会の損失が大きすぎるので、われわれは仕方ないで済まさずに、深く後悔することが必要である。
石丸が唱える「政治のエンタメ化」は百害あって一利なし
政治は文句なく面白い。総選挙に限って言えば、ワールドシリーズなどより遥かに面白い。選挙では候補者が一夜にしてただの人になるリスクを背負っている。わざわざ政治に興味がない者を焚き付けて、政治家が道化を演じる必要を感じない。SNSでの拡散に活路を見出して、一気に知名度を上げた石丸であったが、本来は過疎自治体の首長として、故郷安芸高田市の人々から信任を得ることを第一に考えるべきなのである。
岡田吉弘という偶然の一致が示す「持続可能性」の大切さ
河井夫妻選挙違反事件により、三原市と安芸高田市の両市長が辞職したことを受けて、石丸と同じ日に三原市長に就任した岡田吉弘との対比を、シリーズで語ってきた。
岡田は再選を果たし、石丸はネットで賛否両論の物議を醸している。この「双子の市長」は奇跡的なまでに背景が似通っているが、4年強の間に辿った道は全く異なる。
あなたはどちらに政治を預けたいと思われるであろうか。政治課題は一時の興奮で解決するものではないことを申し添えたい。
石丸は岡田と対決せよ、自民は岡田を重用せよ
石丸は、自分と同じ日に同じ形で、政治家としてのキャリアをスタートさせた岡田と対談すべきである。岡田よりも石丸に近い政治家が他にいるであろうか。私は、石丸に岡田と対談するように再三求めたが、無視され続けた。
そして石丸よ、岡田と広島県知事の座を争ってみよ。実現すれば、同じ日に就任した前安芸高田市長と三原市長の対決は、否が応でも盛り上がって政治のエンタメ化を自ら体現することになろう。広島県の市町村長にとっては、再選されて何期か務めることが第一の目標であり、次のステップは広島県知事であって、広島県を袖にして東京都知事になろうとするなら、故郷のことなど一寸も考えていないのである。もちろん、両者が対決しても石丸に勝ち目はないので、石丸幻想も雲散霧消する。
石丸新党結成のニュースとともに終焉へ
石丸は、2025年7月の東京都議選を睨んで、地域政党を立ち上げることを表明した。
東京都ならポピュリズムを浸透させやすいと考えてのことであろう。政治経験が浅く対立を好む石丸に、政治を志す者に対する指揮などできるであろうか。新党が瓦解した場合は、誰もが石丸の力量を疑うようになる。
今後も私はポピュリストを見つめ続ける。ポピュリストは社会を映す鏡である。人々の言葉にできない不満が、誤った形で出現させた偶像である。どれほど啓発してもポピュリストはいなくならない。なぜなら、ポピュリストは既存の政治に対する否定から生まれるからである。どんなに社会が停滞して人々が政治に幻滅しても、ポッと出の青年が諸問題を一気に解決してくれるなんてことはありえない。もし、そんな青年がいたら夢を売る詐欺師かもしれないと、眉に唾して見る必要がある。
このシリーズは筆が遅いせいで伸びてしまったが、最後までお読みいただいたことに感謝を申し上げる。
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