日本の教育は肝っ玉母ちゃんになれるのか?
娘の通ったアメリカの小学校での、衝撃的な経験をもとに書いてみたい。
日米両方の娘の小学校で、読み聞かせボランティアをした時に、痛烈に感じた教育の違い。
日本の小学校では、ボランティア各自が対象年齢と持ち時間に合わせて、好きな本を選び、事前に何度も練習してから本番に挑む、というスタイルだった。
昼休みに図書室に集まった子供たちは、目を輝かせて聞き入ってくれたし、どの子もとても楽しそうにしていた。たまに子供からのふざけたコメントがあるが、先生はそういった子供の発言を聞き入れず、「はい、ではボランティアの方に拍手〜!」というお言葉で、有無を言わせず和やかにしめられる。妙に拍手が大きい時もあったりして、そこにはボランティアに対する、先生方の配慮があることは明確だった。
母たちは終了後、至らなかった点などを反省し、次回はもっと上手く読もうと、必死に家で練習したりなんかするのであった。
このような日本のやり方に対して、アメリカでは驚くべき出来事に遭遇した。
アメリカにはYMCAの読み聞かせグループがあり、ボランティアに登録した保護者が毎月持ち回りで本を読むのだが、その月に読む本はあらかじめ決められていた。本は限られた冊数しかないので、家で練習出来ずにぶっつけ本番で読む事もある。
ある日、娘のクラスのアメリカ人の男の子が、読み聞かせをしていたお母さんに向かって、「おばちゃん、変な話し方だね!」と言った。
そのお母さんはイタリア人だった。確かにイタリア人特有のアクセントではあったが、「一生懸命読んでくれてるのに、なんて事を言うのかしら!」と、私は内心ドキドキしてしまった。
一瞬、固唾を飲んで見守る私の前で、そのお母さんは平然と「あ〜ら、イタリア訛りの英語が聞けて良かったでしょ?こういうのがわからないと、イタリアンレストランで美味しいピッツァを注文出来ないわよ。」と言ったのだ。そしてクラス中が蜂の巣をつついたような大騒ぎになって、その子はみんなにおちょくられていたが、イタリア人のお母さんをおちょくった子は、いなかった。
先生はというと、最初と最後にボランティアのお母さんたちにきちんと挨拶はさせるけれど、子供が意見を言うのを遮るようなことはせず、終始、その男の子とイタリア人のお母さんの会話を身守っていた。
このことが、日米両国の教育に対する違いを、如実にあらわしているような気がする。
日本では、教える側、子供の前に立つ側は完璧でなければいけないし、内容にも不備があってはいけない、そして子供はそれに対して反対意見など言ってはいけない、という暗黙の了解があるような気がする。
対してアメリカその他の諸外国では、教える側も人間だから、間違いもあるけれど、そりゃ仕方ないからそこも受け入れていこうと、その不完全な部分をも含めて見せる。なんなら、一緒に完全を目指してつくっていこうよ、といった感じなのだ。もちろん、子供はそれに対して意見を言うことを禁止されることもない。ただし、本格的な人種差別などであれば厳重な罰則を受ける。
読み聞かせは、本の内容はもちろん大切だが、それにも増して子供に伝えるべきことは、それに取り組む大人の姿勢、在り方そのものなのではないだろうか。「上手く本を読むこと」に終始する以上に、「読み聞かせが、ちょっとくらい下手でもめげず、文句言われてもへこたれずに言い返せて、とにかく子供に伝えたい!という熱い心で挑む在り方」を見せてくれた、イタリア人母の与えてくれたものは大きい。
もちろんこのイタリア人母は、子供だけでなく、大人の私にも多大な影響を与えてくれた。このことがあってから、私の英語コンプレックスなんてふっとんでしまったのは、言うまでもない。ビバ、イタリアの肝っ玉母ちゃん!である。
この、本を読む技術と、オンライン授業の問題には類似点があると思う。私はオンライン授業を求めて署名運動をしてはいるが、オンラインはあくまでもツールであって目的ではない。その教育が目指すゴールをどこに設定して、それに向かってオンラインをどう上手く使いこなしていくのかが、一番大切なことだと思う。
しかし残念ながら日本では、オンライン授業を取り巻く環境、認知、先生の能力など、全てが整って完璧になっていないと始められない、と捉えられているように思えて仕方がない。
日本がそうして完璧を求めて固まっている間に、海外ではトライアンドエラーでオンライン教育がどんどん進んでいく。もちろん何ごとも完璧に越したことはないのだが、それを待って黙っていたら、イタリア人のお母さんはいつまで経っても英語を流暢に話せるようにはならないのだ。
まずはやってみないと始まらない。どうする、ニッポン?
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