#056 この小さな命に責任をもって、最後まで一緒にいようと思います。
雨降りの下校中、駐車場のベンツの下で泣いているインテリを見つけて、連れ帰ってしまった。
母はインテリを飼うことの大変さを説いたあと「捨ててらっしゃい」と切り捨てたが、動物好きの父が「かわいいじゃないか、飼ってあげよう」と言うから救われた。
以来、家族の一員である。
しかし、実際に飼ってみると、母の忠告が身に染みた。
インテリは歯車が好きだというので、ハムスター用の回し車を買い与えてみたが、これがちっとも遊ばない。
回し車には興味があるらしく、それと私を交互に見つめて、何かを訴えている。
試しに手でシャーッと回してやったら、嬉しいらしく、転げ回って喜んだ。
それからすっかり私は、歯車を回す係だ。
遊びの時間はケージから出してあげるのだが、頭に乗るのが好きらしい。
それだけならまだいいが、わざわざそこで糞便をするからたまらない。
知能が高いらしく、家族のヒエラルキーをよく見ている。
父が一流企業の幹部だからか、父にはよく懐いている。
帰宅した父が脱いだばかりの革靴に直行し、舐めまわすのが大好きだ。
母の下着も好きらしく、そのときは少し前歯が飛び出している。
かなりのグルメで餌代も大変なのだが、カブだけは好きなようで助かった。
特に、まだ土がついたままの採れたてを差し出すと「ミコウカイ!ミコウカイ!」と鳴いて喜ぶ。
ネットで調べたら、ケージに敷く新聞紙は日経じゃないとダメだとか、四つん這いになっていたらお尻の穴に指を入れてあげないとダメだとか、思っていたよりずっと、お金も手間もかかるらしい。
それでも、この小さな命に責任をもって、最後まで一緒にいようと思います。