#035 じぶん虐待防止条例
セルフネグレクト?
いやいや、これは自分を労わった結果である。掃除しなくていいよとか、お風呂入らなくていいよとか、同じ部屋着で一週間過ごしていいよとか、食事はUber Eatsで頼めばいいよとか、そうやって自分を大事に大事にしてきた結果が、この有様なのだ。
この間、部屋で転んだ。空のペットボトルが床を覆いつくしていたから、痛く無いどころか、ちょっと面白かった。
「ボールプールみたいだ」
すっ転んだまま大の字になり、天井を見上げる。はぁ、どうして私はハプスブルク家の令嬢ではないのだろう。どうして自分の世話すらできないのだろう。わたしはなんでいまだに生きているのだろう。部屋の乱れは心の乱れ。とすればわたしの心はもう、この部屋もろとも爆破処理するしかなかろうよ。
黄道十二宮、夢想、モナコ・モンテカルロ。寝室の壁にはミュシャのポスターが貼ってある。ゴミ部屋に背を向ける形で横になると、ちょうどそれだけが目に入る。完璧な構図、淡く繊細な色彩、遠くを見ている女の子。きょうはどれだけ寝ても眠気がとれない日だったので、昼まで絵画を鑑賞した。
「じぶん虐待防止条例」があったらいいのに。
そしたらわたしを通報して。
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