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腰椎椎間板ヘルニア術後の段階的リハビリテーション

本記事では、腰椎椎間板ヘルニア術後の段階的リハビリテーションをまとめました。記事の構成上、術後のリハビリテーションとして紹介していますが、慢性腰痛に対する段階的なリハビリテーションとしても有効になります。ローカルマッスルの選択的な収縮練習から、グローバルマッスルを含めた協調的なトレーニングまで紹介しています。それぞれの現場で必要に応じて活用してもらえると幸いです。


これまでに公開してきた他疾患に対するリハビリテーションnoteもございます。ご興味のある方はぜひ下記をご覧ください。

足関節捻挫後の段階的リハビリテーション

膝関節外傷後の段階的リハビリテーション

ハムストリングス肉離れ後のリハビリテーション

肩関節術後の段階的リハビリテーション

Groin painの評価・リコンディショニング


ヘルニア術後のリハビリ Phase1(急性期)

<Introduction>

今回は腰椎椎間板ヘルニアの術後を想定したエクササイズをまとめていきたいと思います。

腰椎椎間板ヘルニアの手術後のリハビリは、現場にいるとそれほど多く経験できる疾患ではありませんので、急性期や亜急性期の管理が難しい部分についても、注意点などお伝えしていきます。

加えて、リハビリの中期から後期にかけて行う、体幹や股関節機能を高めていくためのエクササイズについて紹介していきます。このあたりのトレーニング方法やその処方については、術後でなくても広く応用できるものがあると思います。事実、腰の痛い選手に徒手的介入を行うことはレアケースとなってきていて、多くの場合、運動療法が疼痛に対しても著効を示しますので、ぜひご活用ください。

術後のリハビリでは、患部の機能を高めていくことも大切ですが、ヘルニアになってしまった原因に対するアプローチも重要です。特にヘルニアを引き起こす機械的ストレスの原因は、腰よりも下肢や上肢のアライメント不良に存在することが多く、これらの問題が姿勢や動作不良につながることで腰部のヘルニアにつながります。足関節や膝関節に存在するアライメントや動作不良の問題に関しては、セミナー等でも解説していますので詳細はこちらも御覧ください。

この記事の中では、体幹の強化、股関節との協調運動を中心に、科学的根拠も踏まえながらエクササイズを紹介していきます。


<Phase 1>

腰椎椎間板ヘルニア術後リハビリテーションPhase1の説明です。

Phase 1では、創部の状態を落ち着かせることが最優先です。
術創部の筋スパズムや疼痛に対して、アイシング、超音波、低周波治療などの物理療法も適用になります。腰椎に屈曲ストレスを与えるようなリスクは絶対に排除しつつ、同一姿勢を長時間継続していることで短縮位にある筋などに対しては、可能な範囲でストレッチを行います。骨盤帯・下肢周辺のストレッチと腰部に負担をかけない範囲での坐骨神経の滑走改善を行い、股関節の屈曲可動域改善も行いましょう。

他にこの時期では、活動量を確保するためにWalkingを行うことが奨励されます。インナーユニット(横隔膜、腹横筋、多裂筋、骨盤底筋群の腹腔の外壁を構成するユニット)の収縮は腰部の安定性を向上させるために重要ですので、この時期から積極的に促通していきましょう。

<Education>

Phase1で最初にしていただきたいことは、患者教育、つまりやってはいけないことを伝えることです。

最近は入院期間も短くなってきているので、退院後の生活様式がどのようなものか、という点は事前に確認しておきましょう。寮生活だったり、和式生活の方は床に座る機会が多くなります。
その場合、床に座る動作も腰椎の屈曲が最小になるような方法を指導します。

しゃがみ動作では腰椎が屈曲してしまうので、片膝立ちを経由して床へ座るようにするなどの工夫が必要です。床面での座り姿勢でも、腰椎の屈曲姿勢をとらないセッティングを一緒に検討してあげると良いと思います。

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立ち上がり動作も同様に、片膝立ちを経由して行うと腰部への負荷を減らすことができます。いすや机など、つかまる物があればつかまって行うとより安全にADL動作を行うことができます。

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他にも、下のものを拾うときやソファなどに座るときにも腰椎が屈曲位となりやすいので生活様式に合わせて注意してもらうように指導しましょう。

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姿勢以外では、飲酒や喫煙も創部の回復を妨げますので、少なくとも亜急性期をすぎるまでは行わないように指導します(喫煙などはいっそのことやめてもらうよう誘導できると良いですね^_^

<Stretch (Gluteus)>

ストレッチについて紹介していきます。
術後1週間までは無理して行う必要はないと考えていますが、疼痛の状況などに応じて可能な範囲で開始していきます。股関節の屈曲可動域に制限を作ると、リハビリ段階が進むにつれて股関節屈曲動作を伴う運動に過剰な骨盤の後傾と腰椎の後弯方向への運動を伴うことになります。したがって、急性期においても、殿筋のtightnessを予防するような殿部のストレッチを行いところです。しかし、一般的な殿部のストレッチは腰椎屈曲動作が伴うため術後早期にはリスクが高いと考えています。

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この時期には、仰向けで腰椎を固定して行える方法をよく用いています。
下図のように股関節を外旋して対側の膝に乗せ、対側の大腿を持ち上げて股関節を屈曲させるようにしてストレッチしていきます。

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無理に伸ばそうとせず、ゆっくり時間をかけてストレッチしていきます。

上記のストレッチの他に、下図のように脊柱をニュートラルに保持した姿勢で殿部のストレッチを行います。股関節を内転方向へ伸張させるため、中殿筋のストレッチにもなります。

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このようにいくつかの方法で疼痛の有無と腰椎の屈曲に注意しながら行っていきます。


<Stretch (Latissimus Dorsi)>

広背筋のストレッチです。
腰椎の回旋と側屈を伴わずにストレッチを行うのはとても難しいので、愛護的な方法をご紹介します。

四つ這いから手を前方に出し、少しずつお尻を後ろに引いていきます。

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広背筋の上部をある程度のストレッチすることができます。また、胸椎を伸展させることもヘルニアの再発を予防する上で重要です。疼痛のない範囲で広背筋のストレッチ及び、胸椎の伸展運動を行っていきます。


<Stretch (Hamstrings)>

ハムストリングスのストレッチを腰椎の屈曲なく行うことは難しい場合が多いです。Phase1の段階で下肢痛が強く出ている場合、筋力が落ちている場合、手術の影響が残っている場合は無理して行う必要はありません。ここでは疼痛がある程度落ち着いてきた段階で、神経モビライゼーションを兼ねて実施できる方法をお伝えします。

低い台へ足を乗せ、足趾・足関節の背屈と脱力を繰り返します。鋭い神経痛様の症状が出る場合には無理に行う必要はありません。神経(紐状のもの)が(筋肉の間で)上下にスライドするモビライゼーションを行うイメージで足趾の運動を行います(足趾をそらす、足首をそらす運動で坐骨神経は遠位方向へ引っ張られます)。

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同様の姿勢から骨盤を少しずつ前傾させていきます。
腰椎が屈曲しないように注意しながら、股関節を屈曲して上体を前へ倒していきます。ハムストリングスを含めた下肢後面全体のストレッチとなります。

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<Stretch (Rectus Femoris)>

大腿直筋のストレッチはいくつかの種類がありますので、 対象となる選手の柔軟性や体格に応じて方法を変えて行うと良いでしょう。今回は側臥位での方法を紹介します。

ストレッチしたい側の下肢が上になる側臥位となり、足首を持って股関節伸展方向へ引いていきます。下側の股関節を屈曲位で固定しておくと骨盤の前傾を抑えることができます。下肢の筋のボリュームが大きくて足首をつかめないといった問題がある場合は無理に行う必要はないでしょう。

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<Stretch (Iliopsoas)>

腸腰筋のストレッチです。

片膝立ちになり、片手を台や壁などにつき上半身を安定させます。
その姿勢から、骨盤を前に出して、ストレッチしたい側の股関節を伸展させていきます。
前側の股関節が屈曲位となるので、腰椎前彎の代償を防ぐことができます。

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さらに伸張させる方法として、後側の下肢をベッドなどの上に乗せ、前側の下肢は床につけた状態で実施します。この方法では腰椎前彎が生じやすくなるため、台の高さを調整しながら行います。

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< Scar mobilization>

術創部周辺の軟部組織の滑走性を改善するためのセルフケアです。
最近では内視鏡での手術が増えており創部自体は小さくなっていますが、創部周辺の滑走性が悪くなりやすいことは変わりません。創部周辺の滑走不全が起こると、骨盤の運動や多裂筋の収縮でつれるような痛みや腰椎の可動域制限の一因となることがあります。皮下組織の滑走改善の方法として、手で皮膚を上下に動かしながら骨盤の前後傾運動を行います(動画を参考にしてください)。

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<肋椎関節Mobilization>

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