症例紹介#9【側湾症に伴う腰背部痛】
注意
本文は脊柱側湾症患者の多くが悩む腰背部痛の除去・軽減を目的としたものであり、脊柱側湾症の治療・矯正を謳うものではない。
腰背部痛の特徴
不調発生箇所について
脊柱の湾曲により、脊柱起立筋のバランスを欠くために起こる腰背部痛には特徴があり、湾曲の凸部の起立筋に多く見られる。
脊柱側湾症患者の脊柱は緩やかにS字を描いていることから、上背面で1箇所、腰部で1箇所に発生し、その発生箇所は脊柱を挟み左右の対角線上に起こる。
トリガーポイントについて
トリガーポイントは、脊柱凸部側の筋肉に顕著で凹部はあまり反応はない。
筋腹よりも莢脊ラインと膀胱経2行線上に見られることが多い。
※莢脊ライン・膀胱経2行線上とは
(胸椎から腰椎の脊椎棘突起のすぐ外側を莢脊ライン、莢脊ラインからさらに外側に起立筋の筋腹を認め、これを膀胱経1行線、1行線から更に外側で起立筋の筋腹が下り坂となった谷間を膀胱経2行線という。)
挿鍼方法
上記で述べたように、脊柱起立筋のトリガーポイントは筋腹ではなくその両サイドに見られることから、鍼の挿入する場所も当該場所を狙って行うことになる。
莢脊ラインへの挿鍼にあたっては、棘突起とターゲットとなる筋の間の谷間に押手を差し込み、棘突起から外側に向けて鍼管を寝かせるように立てる。
必然的に当該挿鍼は横刺になる。
膀胱経2行線は、起立筋外側から棘突起方向へ向けて筋腹に押手を引っ掛けるようにして立て、棘突起方向へ挿鍼する。
当該挿鍼は横刺ではなく、皮膚面から30°〜45°の角度をつけて斜刺しても良い。
按揉方法
鍼を用いずに推拿で施術する場合は、莢脊ラインよりも膀胱2行線ラインの方が良い反応を得られることが多い。
手掌を用いて、起立筋筋腹を手掌で引っ掛けるようにして棘突起方向へと押し込むと良い。
指圧する場合も同様に、筋腹をすくい上げるようにして棘突起方向へ押し込む。
※側湾症は脊柱の屈曲・伸展を苦手とすることが多いため、皮膚面に対して垂直に圧を加える方法は、痛みを与える恐れがあることから暫増・暫減を徹底する必要がある。
養生法
東洋医学的考察
痛みの発生源となる場所は経穴で言えば、
上背部では「肝兪」
下背部では「腎兪」
が多いように思う。
東洋医学では
肝は疎泄(気や血を正常に循環させること)を司る
腎は骨を司る
と言うように、側湾することによって肝の疎泄が疎外され、腎虚によって骨の成長不全によって側湾となっていると推察することができる。
よって肝虚・腎虚を補うようにこれらの場所に灸を行うと良い。