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ルパン三世 謎の女・峰不二子

「謎の女・峰不二子」というキャラ設定は、男女の距離が今よりずっと遠かった時代、はっきりとした壁があった時代、その壁や距離のために男性から見た女性が不可解であった時代のイメージを象徴しているなと思う。


不二子が謎の女なのは、女性の地位が今よりもずっと低く社会の一員として組み込まれていなかった時代の名残りであって、実際には女性に謎などはない。男性から見たら謎なだけであって、同じ女からしたら謎でもなんでもない。

それは「違い」であって謎ではない。確かに受胎や出産のシステムが科学的に解明されたのはここ100年くらいのことだから、女性という性が神秘的なベールに包まれていたのはあるかもしれない。

男性のように社会的な立場がなかった分、社会という枠組みから外れやすく、女性は男性よりも自然や霊的な存在と近く、またそのように見られていた。巫女や魔女。今でも見えない世界とのコンタクトは女性の方が多いかもしれない。


「女心と秋の空」というように、女性原理は男から見たら訳がわからないかもしれない。でもそれは女だって同じで、女からしたら男心がわからない。男性原理が意味不明。


不二子が「謎の女」扱いされればされるほど、私は古い時代のジェンダーを感じ複雑な気持ちになる。なぜならそれは男性のフィルターを通したものでしかないから。


不二子が謎の女なら、ルパンだって十二分に謎な男のはず。両性とも異性に対してはずっと不可解なものはあるはず。

でもルパンは決して謎の男扱いはされない。パンチ先生のルパンは不二子同様本心を明かさず、依然としてミステリアスだけども、他作品のルパンはヒーローでありミステリアスさは皆無。


不二子だけが「謎の女」設定で向こう側に取り残され、こちら側はルパンや次元五右衛門銭形と男たちの友情・仲良しごっこが定番。

かくて蚊帳の外の不二子だけが「謎の女」設定のために理不尽で都合のよい難題を押し付ける魔性の女にされ、不二子以上に悪党だったルパンがみんなのヒーローに成り代わる。


これ、実は女性を密かに貶めているんですよね。だから「謎の女」と持ち上げなら、実際の不二子はずっとヒステリックな年増でルパンたちを裏切る、イメージの悪いキャラでしかなかった。

ルパンがヒーローや義賊になる代わりに、不二子という女に対してリスペクトが払われることはほとんどなかった。


それがずっと当たり前だったから、パート4やパート5で、不二子がある意味正当な立場をルパンたちに主張し始めると、ファンの間では激震が走り、中には拒否反応を示す者も続出した。

「峰不二子という女」以降に作られた作品では、不二子が自分の正当性を主張し、復権を声高に叫んだために、仲間たちに不協和音が流れ、これまでの予定調和が崩れることになったのかなと思います。


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いろいろ調べて行くと、不二子がもっとも大事にされているのはやはり原作者の不二子なんですね。それは作者が不二子というキャラを生み出し、不二子が大好きだからだと思うんです。

パンチ先生の作品の不二子は決して不当な扱いを受けていない。ルパンにヒドいことされることが多いけれども、それは被害者であって悪いのはルパン。


また原作の不二子、ボンドガールがモデルの不二子の悪女ぶりは、悪さばかりしている男たちを懲らしめる制裁、懲罰的な役割もあって。ルパンも男の勝負には負けられなくても、女の不二子なら仕方ないか、というオチ。

なので悪女というのは関係性の中での不二子の役回りで、パンチ先生は本質的に不二子を悪女には描いていないはず。先生の理想の女性として、深い愛を感じます。

先生の不二子は子供や自分より弱い立場の人に情を見せる。でもそれさえも裏切るのがルパン。先生は男の汚さを見逃さない。


悲しい哉、原作者以外のルパンはやはりすべて二次作品だと思い知らされる。パンチ先生の作品はルパンたち全員のキャラが満遍なくカッコイイ。不二子だけじゃなく銭形も、主人公のルパンでさえも、すべての主要キャラがバランスを崩すことなくそれぞれの美学に生き、理想的なカッコよさを見せる。

どのキャラも先生の一部として存在理由があり、先生の作品世界を多面的に映し出す。他のキャラのために軽んじられたり、無下にされることがないからかもしれない。

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