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ルパン三世 PART5 大河内脚本の科学的構造Ⅰ
PART5のEP1の終わり、ルパン一味がスペインの地図見ているので、てっきりシリーズ中に出て来るかと思ったけどスルー。あれは次のPART6で出て来ると見た。
大河内脚本は何一つ無駄にしない
リサイクル&リサイクルで燃費がよくて非常にエコ(笑)
新しい脚本の形なのかと思う。
「俺が今何考えているか教えてやろうか?」「今夜抱く女のことさ」
アミが不二子のことを聞く切っ掛けになるこの台詞は、ルパンからするとドローンを飛ばしている不二子に聞こえるように嫌味を言っているようにも取れる。
不二子に助けを求めたけれど
弱さを認めたくない男心
後でルパンが不二子に電話した時、不二子が素っ気ない態度を取ったのも、ルパンのこの余計な一言のせいもあるかもしれない。
恋人の4年ぶりの誘いに聞かされる言葉としては、かなりキツい。これが、不二子のことでないのならば。
男の強がりと女のプライド
素直になれない二人
「女にも不自由していないしな」
甘えた声で不二子に電話したのに袖にされ
アミとの会話で自分に言い聞かせるように吐くルパン
大河内脚本は一つの台詞の中に二重三重の意味を持たせる、仕掛けをするので何度観ても発見があり引き込まれる。脚本に無駄がないどころかあるもの全て使い倒して使い捨てしない。
どの台詞も物語を組み立てる柱として登場人物のドラマを支え、一つの柱が他の部屋の柱にもなっている。
なぜこの時ルパンはスマホからではなく、公衆電話からなのか・・・と。
不二子はスマホ
ルパンは古い公衆電話で夕暮れ
不二子は最新のスマホで燦々と照らす太陽の下
ルパンは過去にまだ想いがあって、夕陽の中で暗い影を落としている
不二子はもう明るい日差しの下、未来へ前を向いている
ルパンの横顔に対して、不二子は前を向き(過去に)背を向けている
二人の現在の心境を映像だけで語っている名シーン
電話線で繋がりながら、二人の中にある決定的な溝と明暗
不二子を誘いながら、傷つけずにはいられなかったルパンの秘めた怒り
EP1で不二子と再会したのに2では登場せず
EP3でやっと不二子が再登場し、同じ現場に遭遇したのに二人はすれ違う
不二子がこの件に関わっているのを確認した後に
ルパンは「俺はまだ何も盗んじゃいない」と吐く
この言葉は「ルパンVS複製人間」の、あの謎めいた台詞
「俺は夢盗まれたからな」に対比している
両方ともルパン自身が失われた何かを取り返すために再始動する
その象徴としての不二子
ルパン三世に流れる愛とプライド
いつもは平気で愛情表現するのに、本気になると口にはしない
ルパンにとって「盗む」は対象への最大の愛情表現だから
それがお宝だったり女の心だったり、自身のプライドだったりする
大抵女の心を盗んだ時はお宝を取り逃がしている
プライドを掛けた敵との対決の前では、もはやお宝などどうでもいい
「結婚式で私を盗み出したくせに?」
ルパンと再会した時の不二子の最初の言葉は、二人の過去の愛情確認でもあった。そしてきっとPART6で語られるようになるこのエピソードは、ルパンの不二子への愛を最大限に表現するものになるかもしれない。
「ルパンが最初に盗んだのは不二子」
これは原作者が終生抱いていたルパンの裏設定で、大河内脚本の次作の伏線と一致する。ルパンの身勝手で強引な愛情表現。PART6の時系列では5の過去も含まれる。不二子と破局する前の蜜月のルパン。
大河内さんは過去作をすごく研究している。
普通はEP1で不二子と再会して2でスルーするなら、3で少しは接触させると思うのだ。させたくなると思う。でもそこを抑えに抑えてEP4まで引っ張って、一気にルパンの危機に二人の心と体が重なり合う。抑えに抑えたからこそ、エクスタシーのように盛り上がる。
冷たく冷えた体がたちまち熱くなるように、感情を爆発させるような急激な展開はとてもエロティック。ハードボイルドしているなと思う。
不二子との甘い過去を夢の中で思い出すルパン。その夢はPART6でのエピソードにもなる。PART5で時空を超えて過去現在未来のルパンを描き、新シリーズの5と6の間でも時間軸を逆にしてエピソードをシャッフルさせている。イマジネーションを刺激する高度な離れ業は、コードギアスなどSF長編アニメで培った賜物か。
このシーンは「くたばれ!ノストラダムス」のオマージュでもある。でもそれを、冷たく尖った氷のような二人の心を、体を重ね合わせ温め合うことで氷解させる、二人の心の転機として利用したのが素晴らしい。