第98回箱根駅伝予選会
今年も予選会の季節になった。去年から立川自衛隊駐屯地での開催になり、2.6km/周の周回コースになった。走りやすい一方で、より基礎的な走力が試されるような設定になった。毎年、10位と11位の間には天国と地獄のラインが引かれているが、今年は果たして。
最初の1kmは3'01"と、留学生が先頭を引っ張っているにも関わらず例年ほどペースが上がらない。原因は、高い気温と風である。去年よりもコンディションが良いと思われたが始まってみると、意外とそうでもなかったようだ。その証拠に各大学ののぼり旗もかなり強く揺れていた。
5km通過の首位はなんと立教大学!上野監督体制になってから徐々に力を付けている。100回大会の2024年大会に照準を合わせているが、強化が順調に進んでいる様子が伺える。その他にも駿河台大学、慶応義塾大学など、これまで上位に来なかった大学が上位を占める。この厳しいコンディションの中、これが後半でどう響くかが気になるところ。
さすがに5→10kmの5kmでは留学生がペースを上げて、先頭のこの5kmは14'20"台になる。こうなると日本人先頭集団との差も広がってくる。それまで留学生とともに走っていた手嶋選手(明治)もいつの間にか、後ろの集団に移行していた。後ろでは藤本選手(日体)を筆頭に有力ランナーが良いペースで走っている。明治がトップに躍り出ていた。力が他の大学より抜きんでている。本来ならば予選会にいるべきチームではないから、当然だろうか。
15km、ここでは当初トップ10に入っていた大学が弾き出される。どうやら明治のトップは揺るがない。ここで山梨学院が2位に躍り出る。下馬評では通過さえ危ういといわれていたから、やはり走ってみないとわからない。日体大もいいし、中央も上がってきている。駿河台はまだトップ10にいる。これはもしかすると……という期待が高まる。一方で、城西や拓殖は厳しい展開に追いやられている。専修が不気味な位置にいる。
トップはチャールズ・カマウ選手(武蔵野学院)、途中から独走状態であった。その後、続々と留学生ランナーがゴールした後、日本人トップ争いが熾烈になっている。残り1km以上を残して栗原選手(中央学院)がスパート。ここで稼がないと中央学院は厳しいだけにエースがエースの働きをしている。しかし、残り数百メートルのところで足取りが怪しくなる。スパートがちょっと早かったか…と思ったが、ここから粘る。後ろから明治の選手が追ってくるが、なんとか逃げ切り日本人1位を確保。惜しくも日本人2位となったのは加藤選手(明治)。箱根の2区を走った有力ランナーである。吉居選手(中央)も今シーズンの不調を払しょくするかのように上位でゴールして、エースの役割を果たした。前述の藤本選手も直前の怪我を乗り越え、見事に役割を果たした。
そして注目の結果は以下のようになった。
明治のトップ、中央の2位は下馬評通りとして、4位山梨学院、5位神奈川がこんなに上位に来るとは…。そして、中央学院は見事に復活の本選出場となった。そして、最大のニュースは駿河台大学の初出場であろう。
駿河台の監督は、あの徳本一善さん、箱根の大スターである。法政2年次に1区で区間賞。茶髪にサングラスは当時は珍しかった。3, 4年次は2区に出走し、3年は区間2位(1:08'59")、4年は途中棄権と、酸いも甘いも味わったランナーだ。そんな方が監督に就任して早10年。念願の予選突破となった。事前のニュースでも大きく取り上げられただけに期待に応えた形となった。
10位国士舘と11位拓殖の差は55秒。一人あたり6秒弱の差だった。ジョセフ・ラジニ選手の貯金を活かせないレースとなってしまった。立教は16位。昨年よりだいぶジャンプアップした。終わってみれば前半の5kmで飛ばし過ぎたのかもしれないが、これも経験であろう。2年後の大会に出場する礎を築けた大会になった。
これで、来年1月2日に行われる箱根駅伝に出場する全20チームが出揃った。学連選抜もこれから発表されて期待が高まる。予選会からシードを獲得する大学が現れるか、はたまたシード校は今年もシードを守れるのか。箱根駅伝まで残り71日。すでに本戦への戦いは始まっている。