働き方を変える理由

人口ボーナスという考え方がある。詳しくはWikipediaに譲るが、要するに働き手の世代(15~64歳)が多く、支えられる世代(子ども、お年寄り)が少ない状態であることだそうだ。多くの人数で一人を支えることになるため国に余裕が生まれ、その余裕でインフラの整備、医療や年金制度の拡充等を行えるというわけだ。当然、この時代に頑張れば国としての力はどんどん上がるわけで、これを世界一上手くやったのが高度成長期の日本だった。

高度成長期は、働けば働くほど国が豊かになる実感があり、それを支えていたのは豊富な労働量だった。しかし、今は違う。人口オーナス(onus、重荷の意)期に入り、文字通り1人を支えるための人数がどんどん減っていく段階である。この人口ボーナス期とオーナス気が経済に大きな与える影響ことを提唱したのはデービット・ブルーム氏(ハーバード大学)で、1990年代にはすでに発表されていた。それを日本で広めているのは小室氏である。

残業をすれば社会が、人生が豊かになるという時代はとっくに終わっているということだ。今までなんとなく、長く働けばいいという考え方には賛同できないと思っていたが、まさか、長時間労働が経済に悪影響を与える段階に入っていたとは思いもしなかった。所詮、戯言なのかと思っていたことを本気で取り組まなければ、この国は本当に立ち行かなくなってしまうかもしれない。ただし、ここで気を付けなければならないのは過去を否定することだ。今の日本があるのは間違いなく高度成長期にしっかりと様々なインフラを整備すべく働いてくれた人たちのおかげ。その恩恵で僕らは生きている。過去と対立するのではなく、変わってしまった構造を素直に受け止めて考えを改める、ということだ。何事もアップデートをしていかねばならない。

人材の多様性が叫ばれる今日だが、それは今後の経済発展のためにも必要不可欠なのだという。フルタイム以外で働ける人を増やしていかないと、労働力が確保できない。今の働き方はフルタイム、残業するほうが有利なようになっているため、なかなか多様な働き方がしにくい。労働の仕方が一様になると、考えが凝り固まり、突然降りかかる課題に対処できなくなるのだ。予測できない未来に立ち向かう方法は、今まで考えもしなかったことを実現させる(かっこよく言えば、イノベーションを起こす、となる)ことなのだから、そのためには多彩な人がいる必要があるというわけだ。

以前、これからの会社の姿を考えるにあたって、色々な人がいることを許容できる会社になってほしいと思って、それを書いたことがあったが、なってほしいではなかった。ならなければならないのである。自分がぼんやりと考えていた理想論が、世の中の目指すべきところと重なっていることに気づいたのである。

その理想論を現実的なものにするために、特効薬のようなものはない。有名な人が各地で講演して歩いてもまだまだ広まっているとは言い難い。今日、この話を聞いて周りに広めてみようとしたけれど、興味を持つのは僅かな人たちだと自覚もしている。それで諦めるかというと、そういうわけでもない。この前提のもとで話し合いを進める人を増やす。ボトムレベルではそうなる。そしてトップが「そうする!」を決めた時に速やかに実行に移れるようにする。この両輪が揃った時に初めて変わったと実感できるだろう。だから、その時までこの火を絶やさないように情報や仲間を集めていくべきだろうなと思っている。

#思い込みが変わったこと

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