![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/165985384/rectangle_large_type_2_f6e3a26b84f926b8e8a7bee8a3570734.jpeg?width=1200)
質量保存の法則 ~マジックの演技において~
マジックの現象は強烈なのですが、見ている側の心理として
「腑に落ち切らない」
感じの時はあります。
分かりやすい状況として、質量の保存をしてない
と表現することがあります。
例えば、赤いシルクが赤いアピアリングケーンになるなら
腑に落ちますが、違う色になると気持ち悪いとか。
赤いシルクと白いシルクを混ぜて、赤白のストライプになるのは
いいのですが、シルクのサイズが変わらないとか。
まあ、少々マニアな悩みなのかもしれませんが
ただ何となくわかっていただけるかと。
現象面で言えば、消失して終わるとなんとなく
落ち着かないわけです。
なので、どこかから出現して、質量の保存をさせる
なんてことをするわけです。
なかなかトリックを消えて終わりで落とせるのって
難しいですよね。
フォーサイトの割バニッシュなどは、結果的にどこかから
箸を出した方が落ち着きますし、本当に怪しい所を
詮索されずに済む感じになります。
そうやって暗にレギュラーとスイッチしてエンドクリーンに
してしまうという事もできますので。
完全消失させるのも難しいのですが、それ以上に
観客の意識が落ち着かないという方が
問題のような気がします。
ステージの演目で、それで終わり
とかならいいのでしょうが、そうではないと
意識が先に進まないので、その場の空気が
どうにもまとまりきらない、というのを
どこかで体感した事あるマジシャンも多いでしょう。
小林も、6マネーリピート、で最後にお札が全部なくなって
おしまい、としていたのですが、その際の
場の空気の揺れは、とんでもないものでした(笑)。
それをギュッと統括できるならいいのですが
そこまで含めて手順の中に入れておきたいですし
(そうすれば、システムとしてベターな状態になりますので)
なので、現在は、財布にお札が戻る
という手順にしてあります。
小さなところなのかもしれませんが
イメージの上でも、質量の保存をした方が
観客はマジックを見やすくなると思います。
たとえ、本当に質量が守られなくても
物が消えつつ、煙になる、でもいいんです。
消失現象より、変化現象の方が納得しやすいんでしょうね。
ちなみに、シルクの変化なのですが45センチ2枚を混ぜると
大体60センチ角のシルクと同じ面積です。
これ、庄司さんと話していて、計算したらそうだったので
ちょっと面白かったです。
じゃあ、これを常に守らないといけないのか?
となると、そうでもない部分もあったりするようで
マジシャン的には、赤シルクが赤のケーンにならないと
気持ち悪いのですが、一般の人からしたらそうでもない
所もあるようで。
ある程度質量保存をさせないといけないのですが
緻密に細部までやらないといけないか、となると
そうでもないようで。
この辺の塩梅が、難しい所ですね。
どのくらいまで緻密でなくてもいいのか、楽ができるのか
その辺が検証していくべき部分なんでしょうね。
これ、マジックの世界では
ディスクレパンシーというものがありますが
実は、矛盾があった方が、いいマジックになる
みたいに言われることがありまして。
完全に理論武装をしている状態の手順よりも
ある意味で、どこかが少し破綻しているというか
隙がある方が、面白いトリックにもなるようです。
質量保存をさせつつも、どこかディスクレパンシーが
あるような手順にして行くこと
この辺がマジシャンとしてのセンスの部分でしょうか。
今ある手順で、お客さんの反応が思ったものと
違った際に、こういった視点でトリックを見て
塩梅を考えてみて行ってみて下さい。