読みました。
前作「横道世之介」は大学1年生の1年間。
今作は25歳になった世之介の1年間が描かれます。
ほんとにおもしろかった。
最高でした。今年読んだ小説で1番か2番。
主人公の世之介の人間性が魅力的。
世之介の心の中の葛藤が上手に書かれてます。
真剣なシーンで的外れな事がどうしても気になってしまう「心の中の脱線」が瑞々しく表現されてて好き。
例えば、床屋の理容師と話していて、褒めようとしたのに、相手の事を何て呼べば良いか悩んで、考えてるうちにタイミングを逃してしまったりとか。
人間らしくて、あるあるとも言える心の中の動き。
誰しも1つは共感できるんじゃないでしょうか。
前作、19歳の頃はセレブな彼女祥子のお兄さんに誘われてクルーザーパーティに参加していた世之介。
今作は対照的にヤンママの彼女桜子の実家の自動車整備工場で働いてます。
どんな場所でも愛されて、周囲に馴染んでいく不思議。世之介いいやつだなー。
こんな人間でありたいと思わされました。
そして、桜子の実家、家族がとても明るくてサバサバしてて魅力的。
吉田修一、こんな感じのヤンキーファミリーとか工場労働を魅力的に書くのがうますぎます。
作業着で汗をかいて、煙草休憩で一服して、仕事が終われば酒飲んで。
工場で働きたくなる。
し、昔2〜3か月工場で働いてた頃の良い思い出に浸れました。
「ひなた」とか「東京湾景」でもそんな感じだった気がする。
僕が一番好きなシーン。
寿司を目指している浜ちゃんが、スーパーで買い物をしている世之介と桜子を見て言います。
んー。納得。
僕は、有名な“メキシコの漁師“の寓話を思い出しました。
大好きな話です。
ゴールって一体どこにあるんでしょう。
結構すぐ近くに、既にあるけど気付いていないだけかもしれない。
スーパーの買い物。馬鹿にはできない、幸せのひとつだと思う。
今作の時代設定は1993年。
1991年生まれの僕は当時2歳。
全く記憶はないけど、どこか懐かしい感じがして不思議。
雅子さま、吉原炎上、レンボーブリッジ。
時代を象徴するようなフレーズがたくさんあって、
当時はこんな感じだったのかーと。まるでその時代を過ごしたかのような錯覚を味わえました。
1993年に旅をしたような感覚とも言えます。
僕が生まれた頃の両親に思いを馳せました。
自分が生きていない時代を味わえる、読書の魅力を堪能しました。
1993年に生きた人も当時に浸れるはず。
総じて、僕は吉田修一の小説大好きです。
まだ読んでないのをはやく読みたい。
超おすすめです!
以上