サステナブルフードバリューチェーン 2025-2035 概論  第3章 多国籍食品企業、フードテックベンチャーの動向

多国籍食品企業によるサステナビリティ原料調達戦略が進む

◆ 多国籍食品メーカーが主導する食品原料(穀物含む)、食品原料成分等の調達基準で、Regenerative Agriculture準拠(不耕起栽培、カバークロップ、精密農業による省潅水、省化学肥料/農薬の農法産品、等)の調達比率を高める施策が進められている。 多国籍食品メーカーは、カーボンニュートラル・サステナビリティ戦略の一環の施策で、農業生産者にRegenerative Agriculture農法導入に対する経済的インセンティブを与え、パートナー農業生産との連携を推進している。

多国籍企業によるサステナビリティ調達のエコシステム構築が進む

◆ 多国籍企業である農業インプット企業(種子供給企業)、穀物調達商社(穀物メジャー)、小売企業もRegenerative Agriculture導入の経済インセンティブ供与プロジェクト(米国中西部)に参画した事例があり、
フードサプライチェーン企業のみならず、周辺/関連企業に、サステナビリティ原料調達戦略の影響が及ぶことが予想される。

サステナブル食品開発戦略

◆ 代替たんぱく製品戦略
: 代替たんぱくは、フードテックベンチャーの中で投資が最も活発なビジネス機会テーマで、多くのベンチャーが欧米、アジア太平洋地域(中国、日本、東南アジア含む)で創出されている。

◆ ベンチャーキャピタルが積極投資テーマ: 畜産(特に牛肉)過程でのGHG排出量の多さが課題となっており、代替たんぱくがサステナビリティ食品と見なされている事、および、Plant-Based Food (自然由来食品)のヘルシー食品であることが、優良投資先と見なす要因である。

◆ 幅広いサプライチェーン企業の代替たんぱく事業への参入活発化
国内外の大手企業の食品成分原料メーカー、最終食品メーカー、ファーストフード・チェーン企業は、代替たんぱくのフードテックベンチャーへの事業投資、ならびに、事業提携を進めている。今後、国内外の大手企業の代替たんぱく食品への参入戦略とそのタイミングにより、代替たんぱくの市場普及速度、ならびに、サプライチェーン構造に変動があると想定される。

サプライチェーン企業のDX戦略

◆ Block-chain技術によるトレーサビリティ:多国籍食品メーカーを中心に、食の安全/安心の担保、コンタミ等にほる商品リコール問題発生時に迅速な対応を図るために、食品原料の調達から最終食品製造、物流過程でのBlock-chainベースのトレーサビリティシステム開発のDX戦略が食品メーカーより打ち出されている。

◆ 消費者購買動向/AI分析 食品メーカーによる消費者購買行動のAI分析のDX戦略が打ち出されているが、手段として消費者ダイレクトの仕組みが試みられている。

サステナブルフードバリューチェンの論点


◆ フードバリューチェン業界にBlock-chain技術が導入された場合のインパクトは? サプライチェーン企業間の取引契約への影響は? 
食品トレーサビリティを狙いとするBlock-chain技術は、サプライチェーン各段階での生産・貯蔵・物流のデータ取得と、取引関係者間での情報共有(相互信頼)を前提にする技術であるため、フードサプライチェーンの各段階のステークホルダーおよび周辺/関連企業に影響が及ぶ仕組みとなる。 

◆ フードバリューチェーン業界でのBlock-chainベースのトレーサビリティシステムは、ICTにとって巨大ビジネス機会となるか? 具現化の課題は?
Amazon Web Service (AWS), Microsoftを始めとして、Public Cloudサービス事業者、および、システムインテグレータが、Block-chainベースのトレーサビリティ技術のAPIサービスを展開しており、IoT/AIベンダーの間でもホットトピックスに位置付けられている。

◆ 食品業界の消費者ダイレクト流通はどこまで進むのか?
食品メーカーの消費者ダイレクト、AI消費者分析についても、Publicクラウドサービス事業者、システムインテグレータ企業にとって、有望ビジネス機会セグメントとしての成長が期待される。

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