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地理的アービトラージのすゝめ
都道府県別の経済的豊かさ、東京がワースト
2021年に国交相から公表された、「企業等の東京一極集中に関する懇談会」のとりまとめの中に、都道府県別の経済的豊かさ(p.77)の序列で、東京都が最下位だったことに衝撃を受けた都民は少なくないだろう。
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001384143.pdf
とはいえ懇談会の構造上、地方に分散して欲しいインセンティブが働くため、経済的豊かさで東京が最下位なのは、結論ありきの既定路線という穿った見方もできる。
ただ、金融の呪いにも似た現象から、庶民が東京23区内に居住し、普通に働くだけで、結婚や子育てといったライフイベントをつつがなくこなしつつ、その地で終の住処まで買うことが事実上不可能となりつつあるのは、中古マンションですら東京23区の平均価格が24年7〜9月に1億円を超え、名実ともに億ションとなったことからも伺える。
それにより、23区内で不動産を買えるのは富裕層、海外投資家、DINKs世帯のパワーカップルに限定され、庶民は子育てに適した住環境とコストの兼ね合いから、通勤1時間コースの郊外に追いやられ、都の出生率は1を割り込んだ。
その意味で、賃金は高水準でもそれ以上に物価が高く、可処分所得は大差ないどころか、長い通勤時間まで考慮すると、ぶっちぎりで住みづらく、都道府県別の経済的豊かさでワーストという結果は妥当で、ドロップアウトを機に地方移住した元都民としても、結果を見て、まぁそうでしょうなぁとしか思わなかった。
無理に働く必要がない人は、働き口に困る田舎にも住める
私は工業高卒で電鉄会社に就き、20代半ばで大病を患う形でドロップアウトし、その後は地方で隠居生活をしている。
そして、某北海道ローカル移動番組の構図と同じで、本当は札幌に行きたいのに、なぜかサイコロの目(中央世帯基礎支出の安さ)に翻弄されながら、四国や九州をいったりきたりしている。
なぜそんな芸当ができるのかと言えば、人件費や物価水準の高い地域での社畜時代に貯えた資産で、物価水準の低い地域に移住したことで、リタイアならぬドロップアウト生活を謳歌するのに必要なコストが、理論上は金融資産所得で賄えているからに他ならない。
資産所得のキャッシュフローで、生活費の全てが賄えれば理想だが、資産形成中に倒れたことから、分配金再投資で複利運用するファンドの比重が高いため、まだその段階になく、NISA投資枠の上限もあって、アセットアロケーションをインカム重視に切り替える過渡期であり、あくまでも理論上は賄えている状態に過ぎない。
無論、資産の取り崩しが発生するため、ヤシオリ作戦さながらの「頼む計算通り行ってくれ」と内心ビビり散らかしながら、必要に応じて取り崩しているのが現状だが、バランスシート上の純資産価額は増加傾向にあるため、数字の上では左団扇で暮らしているに等しい。
とはいえ、パンピーが上京すれば滅茶苦茶稼げるかと言えば、そんなことはなく、私の18〜20代半ばまでの平均年収を概算したら370万円だった。正規雇用の中央値以上、平均値以下で、非大卒若年男性という括りで見たら健闘しているとも捉えられる。
しかし、OECDの2021年度の労働時間ランキングで、日本の年間労働時間は1,607時間とされており、古巣の電鉄会社の所定労働時間が2,088時間となっていたことからも、平均的なサラリーマンより1.3倍もの長時間労働に加えて、拘束時間の長さまで鑑みたら、どう考えても平均年収370万円は対価として割安である。
私は人並みに稼げる能力はなかったものの、山手線の駅まで徒歩15分圏内の立地に暮らしながら、家賃3万円、食費1.5万円、水道高熱通信費1万円、雑費0.5万円の、固定費月6万円生活と生活コストの安さがバグっていたことで、年収の割に旧一般NISAを埋められる月10万円の入金力が確保できていた。
それにより、社畜時代に資産形成を加速させ、無理して働く必要がなくなった今、住む分には長閑で良いが、働き口に困るような田舎で、更に固定費を安くして暮らしている。これを地理的アービトラージという。
市場原理で、東京一極集中と地方の過疎化が解決できる希望
地理的アービトラージは、地域や国ごとの”物価の差”に着目した裁定取引で収支をやり繰りする手法であり、ティム・フェリス氏が「週4時間だけ働く」をコンセプトに発したGeographic Arbitrageが元となっている。
一昔前であれば、物価の高い日本で働いて納めた年金で、老後は物価の安い東南アジアなどに移住し、悠々自適に暮らすスタイルが有名だった。
しかし、この国が失われた30年で、対外的に東南アジア並みか、むしろそれより”安い国”に成り下がったこと。ICT技術の発達に加えて、疫病が流行したことで、場所を選ばずに働けるオプションが増えたことも相まって、稼ぎさえどうにかすれば、地方移住するだけでこれが叶えられる程度にお手軽となった。
現に私は胡散臭い株屋として、平日の9時〜15時はパソコンの画面の前に張り付いては、相場の動向をウォッチして、期待値の高そうな銘柄を見つけて時折利鞘を得たり、保有銘柄の配当・優待を受け取って生計を立てているが、考え方によっては、電源とパソコンとネット回線さえあれば、場所を選ばない稼ぎ方とも捉えられる。
最近ならクラウドソーシングの案件をこなすのも、単価は別にしても、場所を選ばない稼ぎ方として、一昔前よりも敷居が確実に下がっている。
そうしてハイクラスなICT人材のような、場所を選ばない働き方を選べる人が増え、そのうちの何割かが地理的アービトラージを実行する構造が定着すれば、市場原理によって価格による調整メカニズムが働き、東京一極集中と地方の過疎化の双方が、解決に向かうような気がしてならない。
高卒ブルーカラーが出自の私みたく、労働集約型産業にありがちな、決められたことを決められた通りに行うだけの、単純作業を繰り返すだけではスキルが溜まらないため、場所を選ばない働き方を、労働者として選べる立場にないのが悲しいところではある。
しかし、裏を返すと地方移住や早期リタイアに興味がある将来世代は、仕事選びの軸を、場所を選ばずに働けるかに重点を置くことで、東京一極集中と地方の過疎化の解決に貢献しながら、左団扇で暮らせる可能性があり、これは別にハイスペ人材でなくても実現可能な意味で、海外移住よりもハードルが低く、多くの人に希望のある人生戦略だと思うが、いかがだろうか。
ちなみに、ポジショントークで煽る意図はないが、一般論として、裁定取引で得られる利鞘は、市場参加者が多くなればなるほど、適正価格に収斂して得られなくなるため、地理的アービトラージが一般化する頃には、今ほどの旨みは無くなる運命にある。
早い話、興味があるなら先行者利益という名の旨みがあるうちに実行してしまった方が、後悔しない人生を送れるだろう。
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![NekoK!RiNg(ネコキリング)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/101152024/profile_cc30739a2c579f71d8f10ce12edd6d2d.jpg?width=600&crop=1:1,smart)