見出し画像

値下げするお店ほど定価で買えない。

本題の前に簿記の豆知識。

 私のドケチ倹約話をする前に、真面目な簿記の話をすると、「割引」と「値下げ」と「値引き」は意味合いが異なる。「割引」は早期に決済することで、利息に相当する部分を減額することを指し、我々が大好きな割引シールの趣旨とは似て非なるものとなっている。

 一般消費者の肌感覚として、クレジットカードの2回払いまでに加えて、ボーナス払いには金利が付かないため、ツケ払いで利子を取られるイメージが湧かないが、商取引では決済を遅らせれば遅らせるほど利息相当額を代金に織り込まれる形で決済されるのがデフォルトである。

 身近なところでは、給与が遅れて支払われた場合、年率5%または6%の延滞利息を支払わなければならないことが、民法404条及び514条に記されている。

 そのため、資金繰りに余裕のある方で会社が給与を延滞している場合は、時効になるギリギリの3年手前で請求した方が利子の分だけ得をするが、そもそも3年間も未払いをするような会社は貸し倒れリスクが高いため、リスクに見合うかと言われると見合っていない。

 私であれば多少割り引いてでも、支払われる余地があるうちに早急に精算させるだろうから、決して推奨はしない。あくまでも商売の世界では利息が発生することを身近な例で伝えたかっただけである。

 話を戻すと、我々が割引シールと認知しているものは、売れ残りに対して代金を下げる行為であり、これは「値下げ」であるため、表題も値下げと記している。

 因みに「値引き」は商品に欠陥があった際にその分を代金から差し引く意味合いで、卸売だと100個仕入れて5個欠陥品だったから代金の5%を値引きするようにイメージしやすいが、個人消費者としては単品購入が基本、欠陥品は基本的に返品するため、最も縁のない話かも知れない。

通常価格は在庫処分費用を負担している。

 さて、なぜ小売店は売れ残りを値下げして販売するのだろうか。売れ残るのが分かり切っているなら、そもそも作らなければ良いのではないかと素人ながら考えてしまう。

 しかし、小売業の世界では欠品は御法度とされており、商品がなかったことによる機会損失が生じるくらいなら、多めに作っておいて売れ残ったら値下げするなり処分するなりすれば良いのである。

 金銭面だけ考えればこの方法が確かに合理的だが、環境を気にするようになっている昨今、食品ロスの方がマイナスイメージに繋がるため、多少不便でも売り切ることをヨシとするお店も出てきている。

 売り切ることによるメリットは、商品単価を安く設定できる点に尽きる。小売店は売り物の原材料費から、商品ひとつ辺りの適正な利益(粗利)を算出し、そこから販売費及び一般管理費を上乗せして店頭販売価格として我々が購買している。

 この販売費及び一般管理費には、売れ残りの値下げや処分する費用も織り込まれており、通常価格で発売されている商品に上乗せされていることになる。

 要するに閉店間際になると値下げし始める店舗で、平時の価格で購入するのは、間接的に売れ残り品を売り切るか、処分するコストを支払わされていることに繋がり、そう考えるとあまり良い気分ではなく、そういったお店では結果として値下げ品ばかりを狙うようになる。

食品ロスが年間40kg/人も、自給率4割。

 これは決してインフレで懐事情が厳しくなったから、値下げ品を買うようになったのではなく、社会に出てから一貫して実行し続けている。

 見窄らしいと言う人もいるが、そうやって見栄やプライドから、お店の売れ残り品処分コストを喜んで負担している人が多数派だからこそ、いつまでもたくさん作って余らせる、大量生産大量消費社会の歪みが是正されないのではないだろうか。

 日本の食料自給率はカロリーベースで4割に満たない。にも関わらず平均して国民ひとり当たりが毎年40kg以上の食品ロスを行っている計算となる程度に食べられるものを廃棄処分している側面がある。

 これは何も個人が毎日茶碗一杯分のロスをしている訳ではなく、先ほどの小売業の過剰在庫の分も合計すると一人当たり40kg以上になってしまう訳で、逆説的には定価で買って、企業側に処分費用のマージンを与える人が居れば居るほど、企業に余ったら処分する隙を与えてしまっている側面がある。

 経済活動の歪みとはいえ、自分たちで食べる分の食料が作れていない国で、これだけ廃棄している状況がおかしいのは子供でも分かることで、私はこれに加担したくないがための小さな抵抗で、値下げするようなお店では、値下げありきでないと買わないポリシーを貫いている。結果としてお財布にも優しい。

 ひとりの取り組みではただの乞食にしか見えないが、集団心理としてみんなが値下げしないと買わない状況に陥れば、企業側が単価を引き下げるために、無駄に生産しなくなるかも知れない。

 経済規模が縮小していくことが、経済メディアで嘆かれるようになって久しいが、世界から見れば小さい島国でしかないアジアの国が、かつて米国に次ぐ経済大国だったこと自体が異常で、人口が減っているのだから、規模は縮小して当然ではある。

 個人的には表向きの経済指標が第3位でも、大して世界に輸出できるものもなく、暮らしぶりが落ちこぼれ感満載の国よりも、イタリアのような経済指標では落ちこぼれ感があるものの、工業製品などで割合良いものを作って、世界中に根強いファンが居て、暮らしぶりはそこまで悪くない(傍目ではそう見える)方が、優等生振らないだけ、肩の力を抜いて生きられそうで良いなと羨む今日この頃である。


いいなと思ったら応援しよう!

NekoK!RiNg(ネコキリング)
お買い物の際、↑を経由して頂ければ、身銭を切らずに投げ銭できますのでご活用ください。 パトロンを希望する方は↓からお願いします。