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成り手がいない訳ではない。

物流2024年問題。

 先日、運転免許を持つ若者が減少して成り手が不足していることや、24年度にトラックドライバーの年間残業時間の上限が960時間に改善されるなどの要因が重なり、2024年に現在のような物流の形態が維持できなくなるのではないかとの懸念から2024年問題と報じられた。

 この問題を、免許を取らない若者に押し付けるのはあまりに滑稽である。ニュース記事でも免許の取得費用の問題が挙げられている様に、現代の若者の半数が大学に進学しているが、半数以上は貸与型奨学金という名の借金をして大学に通い、平均288万円の借金を背負い、返済義務者のうち9%は延滞している。

 別の視点で、金融広報中央委員会の統計データでも、20代単身者の保有資産額(中央値)は8万円となっていることからも、現代の若者の半数以上は預金残高が10万円に満たず、その月の生活が精一杯で、将来のことを考える余裕などないのが多数派となっている。

 運転免許を取るには教習所や自動車学校に通うこととなるが、取得費用は30万円前後と決して安くはない。まして都市部で生活するとなれば、公共交通機関の利便性が高く、乗用車のランニングコストや駐車場代などを考えれば、わざわざ数十万円の大金を支払ってまで運転免許を取得する必要性が感じられなくて当然ではないだろうか。

 また、時間の問題もある。高校3年生の夏休みにもなれば大学受験に向けて勉強漬け。誕生日を過ぎなければ仮免許が取得できないから、卒業間際の3月に合宿免許を取る以外の選択を取れる人は多くない。私は早生まれのため、高校生のうちに自動車免許を取ることが出来ず、新社会人と並行して教習所に通う羽目になり、スケジュール管理に苦労した記憶がある。

 高校生で取らなければ、大学生がまとまった時間が捻出できる最後の機会だが、借金して入学した人は費用面で躊躇するだろう。今は就活も前倒しとなっており、3年生から活動するため、早々に内定を貰えれば卒業前に取得する余裕もあるかも知れないが、相当優秀でない限り、即座に内定が貰えるほど甘くなく、長期化すれば運転免許を取得する機会がないまま、社会に出ることとなる。

 良い成績を取って、良い大学を出て、良い企業に入社するという前時代的な価値観を、まともな大人たちが押し付けることで、若者の免許離れが加速する構図が出来上がり、まともな大人たちが成り手不足で頭を抱えているのだから、皮肉が効いている。

低賃金で都合の良い人材は居ない。

 とはいえ、成り手不足は物流業界に限った話ではなく、私の本職である鉄道乗務員も成り手不足が叫ばれている。何も運輸物流業界だけの話ではなく、介護業界など多岐にわたる。

 雇用主は成り手が居ないなら、本来は賃金を上げるなどして募集をかけるべきだが、何より斜陽産業で市場規模がシュリンクしている傾向にあるため、多大なコストを掛けてまで人材を補充しようとは思っていない。

 しかし、低賃金でこき使えるような、雇用主にとって都合の良い奴隷など居るはずもなく、結果として正規雇用で雇っている社員をこき使う方向にシフトして、世間一般に激務な印象が定着して、余計に成り手が居なくなる負のスパイラルに陥っているのが現状である。

 労働生産性に見合わない高給を貰い、居座り続ける老害社員を排除したいが為に、希望退職者を募るが、集まるのは居なくなられたら困るような主力の中堅社員ばかり。そうして安くてこき使われる若手と、高給に見合わない働きの老害の二極化が発生し、社内が分断されていくのである。

 これはバブル期に新規採用を抑制していた日系企業あるあるで、構成されている社員の人口ピラミッドが、氷河期世代部分だけ綺麗に抉れている歪な構図となっていて、パイプ役となる中堅社員が絶望的に足りておらず、自分達が採らなかったくせに今になって悲鳴を上げる自業自得な状況となっている。

FIREで人的資本を安売りしない。

 私の職場でも、疫病による業績不振から希望退職者を募る旨の掲示が出ていたため、どのみち早期リタイアする気なら、ボーナスが上乗せされるタイミングに便乗するしかないと、冷やかし半分で問い合わせたものの、年齢制限で20年早いと冷笑されたため、不平等さに憤りを感じた。

 要するに、人件費に見合わない老害はボーナスを上乗せして辞めてください。なのに対して、安くこき使える若手には、どうせ辞めないだろうとたかを括ってボーナスなど与えず、辞めるなら勝手にどうぞ。という将来を担う若手に対して舐め腐った対応を取っているのである。そんな企業に私の人的資本を安売りするのは、今年度いっぱいで終了して差し上げますわ。

 世間一般の若者なら苦虫を噛み潰すしかないのだが、残念ながら私は既に生活費用よりも、税引後の金融資産所得が上回っている状態で、企業と雇用契約を結ぶ形で賃金を得なくても、独立して生計を立てることが可能なF◯ck you moneyを有している。

 そのため、気に食わないイベントが発生した時に、その場でF◯ck youと吐き捨てて居なくなる瞬間を虎視眈々と狙っているが、いつでも辞められると思うと、ちょっとしたことが気にならなくなるのは誤算である。

 生活費用より金融資産所得が上回り、経済的に独立するFIREが達成できるのは、高年収の人に許されたオプションの印象が強いかも知れないが、私のような高卒の鉄道員でも、生活費用の贅肉を削ぎ落とし、無駄をなくして余剰資金を運用することで、たとえ平均的な年収でも20代のうちに実現可能できる可能性があることは伝えたおきたい。


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