最近の金融経済動向(2024年6月)
骨太の方針、PB黒字化?
21日に閣議決定した骨太の方針に、25年度のプライマリーバランス(以下PB)黒字化目標が掲げられていた。与党内ですら財政規律派と、積極財政派とで対立が続いているにも関わらず、従来目標を踏襲した訳で、個人的な感想の域を出ないが、積極財政派が財政規律派を丸め込めるとは思えない。
財政規律派を丸め込めるとは思えない仮説が正しい前提で推察する場合、今回のPB黒字化の意図は、パンピーの想像以上に惨いものとなる可能性すら感じてしまう。
というのも、極力シンプルに、家計簿的な考え方をすると、プライマリーバランスは収支であり、「収支=収入−支出」となる。収支はプラスにしたい。支出は減らすと積極財政派がうるさいので最低でも据え置き。となると、収入を上げる以外に上記の式が成立する手立てはない。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/r6chuuchouki1.pdf
内閣府が公表する「中長期の経済財政に関する試算」によると、女性と高齢者が更に働き、GDP成長率が+2%程度と楽観的な、成長実現シナリオでも25年度は1.1兆円のマイナスとなっている。
つまり、政府は内閣府が試算した成長実現シナリオ以上の経済成長またはインフレ、もしくはその両方を狙っていると考えるのが妥当と言えるだろう。そうでなければ、財政規律派を丸め込むことなく、PB黒字化が通せるとは到底思えないからだ。
パンピーの温度感からすれば、なんか小難しいこと並べて大変だね〜程度かも知れないが、PB黒字化が成り立つレベルのインフレが起きて、真っ先に不利益を被るのは他の誰でもなく庶民である。
なぜインフレがPBの黒字化に貢献するのか。それは賃上げによって税収が増えるからだ。これを政府や日銀が「物価と賃上げの好循環」と表現しているが、物価と賃金が上がることで、天引きされる税金も増えるため、手元に残るお金は増えるどころか、むしろ減る可能性が高い。
いわゆるブラケットクリープ現象と呼ばれているもので、日本の所得税は超過累進課税と言って稼ぎの多い人ほど、税率(%)が5→10→20→23→33→40→45と増加していく。
細かい計算はリンク先の記事に記しているため割愛するが、イメージとして、年収≠課税所得であることだけ抑えて頂きたい。
インフレにより名目値で賃金が上昇すると、この超過累進課税が機能してしまい、実質賃金はインフレに追いつかずにマイナスだとしても、税負担だけが重くなってしまい、結果として、可処分所得は却ってインフレからの賃上げ前よりも減少してしまうことを意味し、国民民主党の玉木さんは基礎控除もインフレに合わせて上げていくべきだと主張している。
確かに、PBが悪化の一途を辿り、国が財政危機に陥れば、通貨危機にも発展して日本円に極度のインフレが生じることが予想されるため、国民の生活にも大きく影響する可能性が高い。
だからこそ、国の借金を減らしていく取り組みは必要だが、それにより、普通に働いて生活している庶民の暮らしが蔑ろにされることを厭わないとすれば、少なくとも、主たる納税者である現役世代のための政治は行われていないことを意味し、シルバーデモクラシーの縮図そのものだと思うが、いかがだろうか。
実質賃金25ヶ月連続マイナス、過去最長
リアタイで記事にしているため、こちらに関して多くは触れないが、度重なる円安とインフレにより、多くの現役世代の可処分所得は、減少の一途を辿っている。
NISAが拡充されたり、日経平均株価が1989年以来の市場最高値を更新したり、円安の後押しもあって国内外で投資熱が高まっていたり、一部の日本企業が最高益を叩き出しているニュースを目にする。
しかし、我々現役世代の足元の生活は、リーマンショックの時よりも酷い状況になっていることを、もっと憤って良いと思うし、年金生活者を中心とするバラマキはあっても、現役世代は自助努力宜しくで放置される一方の、今の政治の在り方で良いのだろうか。
出生率、過去最低を更新
そうしてお金の若者離れが進んだ結果が、非婚化であり少子化ではないだろうか。新聞の見出しにも「時間や住まいの余裕乏しく」とあるが、中央値的な若者は、奨学金という名の借金を背負って社会に出ている。
そのため、最低でも自分が食える分+α(借金返済分)を稼がなければならず、自分ひとり生きていくので精一杯。必死になって残業しても、稼いだ分だけ、今度はブラケットクリープ現象で税負担ばかり増えて、実入りは減るのだから、時間に余裕がないのは当然だ。
そのうえ、東京一極集中の弊害もあって、住居に十分なスペースはなく、国全体で見れば、戦時中以上に人口が減少しているにも関わらず、不動産価格指数(特にマンション)は上昇し続けている。
これも円安の影響で、海外投資家がこれだけの先進国で、各種インフラが安価かつ高品質で、治安も良いとなれば、マンションならぬ億ションは「安い」と思い、指数が釣り上がるのだろう。
それにより、庶民は35年ローンを組んでも、都内の物件は手の届かない相場となり、一部のパワーカップルを除けば、子育てに踏み切れないのが実情だろう。
子育て支援に踏み切ったところで、いわゆる経済的には勝ち組な男女を支援しているに過ぎず、経済的に結婚を躊躇する年収にして600万円未満の中流層に対して、有効な対策が取れていない限り、東京は若者を吸い込むだけで、次の世代につながらない、ブラックホールとして機能し続けるのだろう。
若者が選挙で投票してこの社会を変えるには人口動態的に既に手遅れだろうし、議員内閣制の腐った構造的にも難しいかも知れない。
しかし、地方自治体の首長であれば大統領制なのだから、芦屋市長の高島さんのような若い人が地方から変えていくことを期待したいし、私のように20代で身体を壊し、既に自分の手で社会を変えていこうとするエネルギーが枯渇した人種は、せめて若い人の足を引っ張るような老害とならないよう、「細工は流々仕上げを御覧じろ」の精神で見守っていきたい。