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使える制度は使えるうちに利用し尽くす。
NISA拡充に思うこと。
先日、2024年以降の新NISAの大枠が固まり、つみたては年間120万円。生涯非課税枠は1,800万円となりそうな状況となっている。この時点でパンピーと株クラとの間で結構な温度差がSNS界隈で散見された。
しかし、本記事でフォーカスを当てるのは、そもそも月に10万円も投資に充てるだけの種銭が確保できないことではなく、これまでのNISA制度で利用してきた枠とは別で運用可能である点から、結果としてつみたてNISAよりも、一般NISAで運用するのが非課税の恩恵が大きかったのではないかと言うことである。
前提として、2022年時点の一般NISAは年間の非課税枠が120万円。非課税期間が5年間で、暦年で非課税運用が可能な上限は600万円である。一方でつみたてNISAの場合は年間の非課税枠が40万円。非課税期間が20年間で、暦年で非課税運用が可能な上限は800万円となっている。
運用の上限額だけ見れば、つみたてNISAの方が有利なように思えるが、40年先のことは誰にも分からない。現に一般NISAは2014年に100万円でスタートして、2016年に120万円に増額。そしてNISA制度そのものが恒久化で、これまでの非課税枠と、新しい非課税枠を通算しない方針であることから、フル活用していた人はこれまで1,160万円の非課税枠を使えたことになる。
仮に非課税運用額に囚われてつみたてNISAを選択していた場合、2018年から6年間に40万円の非課税枠で、2024年からリセットされるのだから、非課税枠は累計で240万円と一般NISAとの差が激しい。
もちろん、非課税で運用できる期間が前者は5年。ロールオーバーで持ち越しても10年。一方で後者は40年と、複利運用を考えたら後者の方が非課税の恩恵が大きいのは確かで一概には言えない。
仮に外国株式のインデックスファンドで期待できる年率6%で運用すると仮定した場合、120万円をロールオーバーありきで10年間運用するなら、5セットで期待できる利息はおよそ483万円。40万円を20年間運用するなら、6セットで期待できる利息はおよそ543万円と元本は4割で済んでいるにも関わらず、利益を含めた運用総額は後者のつみたてNISAの方が60万円近く大きいため、非課税額の累計額よりも、運用利回りと年数が重要なのが数字で見ても明らかである。
とは言え、今の240万円と、20年後の543万円のどちらが価値が高いかは、その時の世界情勢や価値観、個人の生活環境によって左右されるため、額面だけでは判断できない。
極端な話、20代で240万円あれば世界一周航空券で数ヶ月単位の旅行など、結構なことができるだろうが、40代だと543万円あっても社会的な立場によっては身動きが取れず、貴重な経験や体験には使えない可能性があるし、体力も20代と比べれば劣るため、病気を患ってアグレッシブに動けないかも知れない。
それらを踏まえると、損益通算できないデメリットはあるものの、5年で課税対象の口座に移管するか、ロールオーバーをするか選択できて、それなりの非課税枠があった一般NISAを、新NISAでリセットされるまで使い潰していた方が、総合的にメリットが大きかったのではないかと思う今日この頃である。
ふるさと納税や相続税対策も同様。
人は現状が永遠に続くと考えがちだが、いつまでも変わらないことの方が珍しく、投資の世界では将来的な期待値を織り込んで、長期目線でのリターンを獲得する姿勢が重要だが、付け焼き刃的な政策に関しては、長期目線で享受できるであろう利益を最大化するよりも、使えるうちに使い潰して散々美味しい思いをして、規制が出来たらスパッと諦める潔さの方が重要で、今回のNISA然り、ふるさと納税などの税制をみてもそのように感じてしまう。
特に相続税対策のスキームに関しては、一昔前は税理士やCFPなどの、知る人ぞ知る的な側面で一部の人が細々と恩恵を受けているケースが多かったように感じるが、最近ではインターネットの情報商材やSNSを通じて、その手の情報が爆発的に広まるようになり、利用され過ぎて穴が塞がれるような事案は、ワンルームマンションの一件を見ていても明らかである。
つまり、この手の現行制度上は黒ではないもののチート級にお得なスキームに関しては、みんなが使い始めると対策されるのが関の山なので、将来的なことなど一切考えず、勿体ぶらずに使えるうちに骨の髄まで吸い尽くす作戦が、最も恩恵を受けられると言うのが自論である。
来年どうなっているか、定かではないのだから、今その場で使うだけ使い、仮に長期目線で後々制約が生じたとしても、その時はその時で考えれば良い。
これは、長期投資の考え方とは逆行するため、慣れるまでが大変だが、今回の新NISAのようにこれまでの制度がリセットされてしまい、綿密な計画が倒れるよりは遥かにマシだろう。