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本来、この世界は広い。
鉄道会社は小さな組織の集合体。
首都圏にお住まいの方であれば、鉄道会社に勤めていると聞けば、大企業の働き方を想像するに違いない。しかし、現場は意外にも閉塞的な環境で、外部との交流は皆無。人材の流動性も高くなく、想像以上に狭い世界に居る感覚が強い。
それもそのはずで管区制と言って、軍隊のように組織全体の規模は大きくても、実態は小さな現場組織の集合体に過ぎず、指揮命令系統も小さな集合体毎に独立しているに等しいため、現業職員はその小さな集合体の中で形成された、村社会を彷彿とさせる組織の中でしか他の社員と交流しないのが基本である。
乗務職場は全体としては数十人規模の人員で構成されているが、よく顔を合わせるのは、公休のパターンが同一若しくは類似している人達だけであり、規模にもよるが全く同じ人達は大手事業者でも十人前後となっている。
交代勤務であるが故に、同じ職場に在籍しているにも関わらず、勤務シフトで交代側に位置する人とは、一緒に仕事をしたことが皆無な場合も珍しくないため、所属人員から想像する規模以上に、狭いコミュニティであるのは間違いなく、個人的には鳥籠のような印象を受ける。
駅職場も同様で、ターミナル駅ですら数十人規模でしか所属しておらず、基本的にはその人員の中で交代勤務をやりくりしている。小規模な駅だと所属がたったの数人しか居ないことも珍しくない。
小さな世界に囚われるヒト。
そして、小規模な駅ほど作業そのものは楽であるにも関わらず、クセの強い人達の掃き溜めとなっている場合が多く、若手ほど人間関係に悩まされる割合が高く、異動願いを出したり、早々に単独作業の乗務職場まで登る傾向があるように感じる。
とはいえ、私は最初に小規模な駅に配属され、社内政治の煩わしさが付き物である状態がデフォルトだと思っていたため、ターミナル駅に異動して初めて、それが皆無な職場が実在することに、カルチャーショックを受けた程度に社内政治力は強かったらしく、あまり小さい駅に行きたがらない同世代の気持ちが理解できなかったりする。
どうせ同じ賃金なら楽な作業で、クセの強い社員を相手にする方が、持ちネタのバリエーションが増えて一石二鳥だと思う程度に、怠け者精神が骨の髄まで染み付いている。
以前は問題社員を大きな駅に配置すると苦情が増えるから、人事部がひと気のないような小さな駅に異動させて、結果として掃き溜め化している程度に思っていた。しかし最近になって、小さな世界に閉じ込めたから、却ってクセが強くなり、余計手に負えなくなっているのではないかと逆説で考えてみた。
私は朝日新聞そのものは報道に対する記者の意見が偏っているため、あまり好きではない。いや、世の中から朝日新聞以外が全て廃刊となり、それしか残っていないとしても決して読もうとは思わないが、さかなクンが記した「広い海へ出てみよう」は、全ての学校や会社組織の各所に貼り付けて欲しいと思う位に良い記事だと思っている。
詳細は本記事に譲るが要約すると、魚の世界では狭い水槽の中に閉じ込めると、一匹を虐め始め、標的が居なくなると、また新しい標的を作り出すという、海では見られない行動をするらしく、人間社会でも同じことが起きているのではないかと言った趣旨の内容である。
つまり、小さな世界に閉じ込められると、その閉塞感から無意識的にストレスを感じて、同じ境遇の誰かを標的にして、蔑むことでストレスと解消しており、大きな世界に居れば、そもそもストレスを感じないため、誰かを標的にする必要がそもそもないのだと推察できる。
そう考えると、現在所属するコミュニティで、嫌味を言ってきたり、馬鹿にしてくる人達に対して、広い世界を知らず、小さな世界に囚われている哀れな人だと思いながら、適当に受け流すことができるようになるかも知れない。
新しい世界は冒険した先で見つかる。
よく、世間は広いようで狭いと言うが、自分で可能性を広げようとしていないから、結果として狭いと感じてしまうとも捉えられないだろうか。
私は周囲の人から、ことある毎に博識だとか、視野が広いと言われる。しかし、鉄道畑以外での経験は一切なく、突然今からレジ打ちをやれと言われようものなら、途轍もないポンコツ味噌っ滓振りを、遺憾無く発揮するに違いない。
学歴も今でこそ社会人学生として短期大学士を取得したため、非大卒ではなくなったものの、社会に出た当初は高卒で、それも工業学科出身と、決して偏差値の高い学校でない。
そんな私が、(嫌味の可能性もあるが)難関私大出身者に物知りだと言われる程度の知識量を有しているのは、投資の世界に片足だけ突っ込んでいる影響である。
投資と聞くと、デイトレーダーのような短期売買をイメージされがちだが、兼業でやるにはスキャルピングは不向きであるため、中長期投資を選択せざるをえない。
長期投資で実利を得ようとすると、ファンダメンタルズ分析が重要になるため、経済、金融、会計、時事、国政など、抑えておくべき要点は多岐に渡る。当然、最初の頃は何が要因で株価が変動しているのかを推測出来ないどころか、フラットに解説してくれる日経新聞の内容すら、殆ど理解出来ていなかった。
それでも、分からない言葉は自分の頭でも理解できるよう噛み砕き、時間を掛けながら愚直に新しい情報を取り入れることによって、世間一般にはニッチな雑学が自然に抑えられていることが多く、それを引き出すことで一目置かれる。着眼点も自ずと鋭くなり、単なる賃金労働者とは見ている世界が違ってくる。
そうして、大局を見る目が養われることで、他人との争いごとに不毛さを感じるようになり、文字通り金持ち喧嘩せずになるだけでなく、マズローの欲求5段階説の上にある自己超越の状態まで昇ると、やがて寄付や社会貢献などの見返りを求めない行動にシフトし、周りから尊敬されるお金持ちとなるのだろう。
その第一歩として、我々が生きているこの世界は本来、とても広いものであり、まだまだ知らない世界がたくさんあると思いを馳せながら週末に冒険してみて、普段とは違う世界に足を踏み入れてみると、新しい発見があるかも知れない。
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